前回は、幾何公差の概念を説明しました。今回は、幾何公差を使って位置精度を指示する方法とメリットを解説します。2016 年、JIS(日本工業規格)の製図に関する規格、JIS B 0420-1 製品の幾何特性仕様(GPS)が公開されました。この規格では、従来の寸法公差に替わって、幾何公差を使って位置精度を指示すべきであると定め、幾何公差は大きな注目を集めました。位置に対するサイズ公差と幾何公差の違いを理解し、幾何公差で指示することの優位性を学びましょう。
第2回「位置に対する寸法公差と幾何公差の違い」を解説していきます。
1. 寸法の定義
2016 年のJIS B 0420-1 製品の幾何特性仕様(GPS)では、従来用いられていた寸法を、長さと角度に分類しました。また、長さを、位置とサイズに分類し、それぞれ幾何公差とサイズ公差と定義しました(図1)。
従来、日本では、図面で穴などの位置精度を指示する場合、従来の寸法公差(基準寸法に対するプラスマイナス表記など)を使うことが一般的でした。しかし、海外では幾何公差を使うため、従来の寸法公差による図面では解釈の違いが生じ、トラブルに発展することも少なくありませんでした。JIS で寸法の定義を明確にした背景には、日本の製造工程が頼ってきた従来の寸法公差による図面を、幾何公差によるグローバル図面に変えることで、世界での生産を可能にするという目的がありました。
2. 穴位置に対する従来の寸法公差の考え方
穴位置のばらつきを、従来の寸法公差と幾何公差で指示した場合を比較してみましょう。図2 の上は、面A と面B を基準にした2 つの穴の位置を、従来の寸法公差を用いて表した図です。このとき、設計者は、2 つの穴の中心点の位置ばらつきを、図2 の下のように、それぞれの基準面から一辺0.2mm の四角い領域と考えています。
多くの日本の設計者は、図2 の下の図をイメージして製図を行っていると思われます。しかし、図面に特に指示がない場合、サイズは2 点間の直線距離で測定することが世界的なルールです。そのため、従来の寸法公差を使って穴の位置を指示する場合、基準面から対象となる穴の中心線までの2点間の距離を測定します。しかし、基準となる面に反りやうねり、相対角度のずれがあると、どこを基準点とし、どの座標を利用して測定すべきか判断に困ります。基準の取り方によっては、数μm ~数百μm の誤差が生じる可能性があり、測定のあいまいさが残ります(図3)。
3. 穴位置に対する幾何公差の考え方
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 幾何公差とは?
- 第2回 位置に対する寸法公差と幾何公差の違い
- 第3回 幾何特性の種類と記号
- 第4回 データム記号と幾何公差の表記法
- 第5回 形状偏差の指示例と公差域の定義
- 第6回 姿勢偏差の指示例と公差域の定義
- 第7回 位置偏差の指示例と公差域の定義
- 第8回 振れ偏差の指示例と公差域の定義