発電機の誘導起電力|発電機の基礎知識2
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2024.11.08
基礎知識
発電機の誘導起電力|発電機の基礎知識2

前回は、発電機の種類と原理を紹介しました。今回は、発電機の誘導起電力について解説します。発電機の誘導起電力は、コイルの巻き方によって異なります。ここでは、集中巻、分布巻、短節巻を取り上げ、それぞれの巻き方と、誘導起電力の求め方を説明します。
第2回「発電機の誘導起電力」を解説していきます。
1. 集中巻の場合
毎極毎相のコイル辺を1 つのスロットに収めた場合、コイル辺を形成する各導体の誘導起電力間に位相差は生じません。このようなコイルの巻き方を、集中巻といいます(図1)。

図2 は、界磁極が角速度ωm で左方向に移動している場合の、ギャップ磁束密度の分布を示したものです。

磁極ピッチだけ隔てたコイル辺a とa’ で示される1 ターンの電機子コイルの鎖交数ϕa は、ギャップ磁束密度分布の最大値をBm とすると、以下の式で表すことができます。
ここで、p は極対数(p=P/2)、l は鉄心積み厚、r は回転子半径、tp=πr/p は磁極ピッチを表します。
a相巻線の誘導起電力ea は一相の直列巻数をw1 とすると、次のように表すことができます。
ここで、ω=pωm なので、ea=ωw1Φsinωt となります。ただし、ωは角周波数(ω=2πf)、w1 は電機子巻線の巻数、Φm は磁束を意味し、誘導起電力は磁束より90°位相が遅れます。誘導起電力を実効値で表すと、以下の式で表されます。
同期発電機では、誘導起電力の波形は完全な正弦波であることが望ましく、それには、ギャップの磁束密度分布を正弦波形にする必要があります。しかし、界磁極の形状だけで正弦波分布にすることは困難です。そこで、実際の発電機では、分布巻、および短節巻が用いられます。これは、電機子巻線を電機子周辺上に、均一に、効率よく施すだけでなく、起電力波形を正弦波に修正する目的も兼ねています。
2. 分布巻の場合
毎極毎相のスロット数が2 個以上の場合、同じ相でも異なるスロットに巻かれているコイルの誘導起電力は、同じ位相になりません。このようなコイルの巻き方を、分布巻といいます(図3)。

図3 では、毎極毎相のコイルが3 個のスロットに分布されています。この場合、a 相の3 つのコイル(a1、a1’)、(a2、a2’)、(a3、a3’)に誘導される起電力の基本波成分ea1、ea2、ea3 は、電気角で表したスロットの間隔αだけ、お互いに位相差を生じます(図4 の左)。よって、これらのコイルを直列に接続したa 相の合成起電力の基本波成分ea は、集中巻のときの起電力より少し小さくなります。

なお、図4 の左図における合成起電力ea は、同右図が示すea1、ea2、ea3 をベクトル的に合成したea を縦軸へ投影したものです。よって、各コイルの起電力の大きさをe とすると、同じ電機子巻線を分布巻とした場合と集中巻とした場合の起電力の比は、kd=ea/qe で表すことができます。このkd を、分布係数といい、q は毎極毎相のスロット数といいます。
分布係数kd は、図5 から、相数をm とすると、スロット間隔の電気角がα=π/mqとなることから、以下の式が得られます。

磁束密度分布の第ν次高調波は、電機子コイルに第ν次高調波起電力を誘導します。ただし、互いに隣り合うスロットのコイルに誘導される高調波起電力の間には、電気角でναの位相差を生ずるので、第ν次高調波起電力に対する分布係数kdνは、以下のように表すことができます。
図6 に分布係数の値を示します。毎極毎相スロット数q が増加するにつれ、基本波はやや減少し、第3次、第5次などの高調波成分では、さらに急激に減少することが分かります。

3. 短節巻の場合
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 発電機とは
- 第2回 発電機の誘導起電力
- 第3回 同期発電機の仕組み
- 第4回 同期発電機の特性
- 第5回 無負荷特性曲線と短絡曲線
- 第6回 同期発電機の並行運転
- 第7回 誘導発電機とは