防じんマスクとは|防毒・防じんマスクの基礎知識5

防毒・防じんマスクの基礎知識

著者:半田化学プラント安全研究所 代表 半田 安(はんだ やすし)

前回までは、防毒マスクについて説明しました。今回からは、もう1つの呼吸器用保護具である防じんマスクについて、2回にわたり解説します。まず今回は、防じんマスクの種類と性能を、そして最終回となる次回では、使用上の注意点や注意すべき労働災害事例などを紹介します。

第5回「防じんマスクとは」を解説していきます。

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1. 防じんマスクとは

防じんマスクとは、空気中に浮遊している細かな粒子状の物質(粉じん)を、口や鼻から吸い込まないようにするための呼吸器用の保護具です(図1)。気管支や肺に障害を起こすのを防ぐため、粉じんが発生する作業現場で最も多く使われています。

防じんマスク
図1:防じんマスク

防じんマスクには、目の細かいろ過材(フィルタ)が使用されており、塵(ちり)と呼ばれる細かな粒子状の物質が通過しないような構造になっています。粉じんを取り除く方法として、2つの方式があります。一般的な方式は、細い糸で布を織りあげ、出来上がったメッシュ状の隙間で粉じんをろ過する方法です。もう1 つは、布を織る糸に静電気加工をする方法です。糸に静電気を発生させる物質を塗り、静電気の力で粉じんを布に吸着させて取り除きます。

作業をする現場の環境によっては、空気中に多くのちりが浮遊しています。そうした粒子状物質の中でも、固体の物は「粉じん」と呼ばれます。何かを削ったりする作業であれば、削りかすである細かな粉じんが発生します。例えば、金属製の部品を研磨機で加工するような作業です(図2)。

金属を削る作業で粉じんが発生
図2:金属を削る作業で粉じんが発生

金属の溶接作業などでも、粒子状の粉じんが発生します(図3)。例えば、溶接棒という金属の棒を使って高温で接合する電気溶接作業では、金属が溶けるときの温度が数1,000度にもなります。このとき、溶けた金属が細かなちりとなって空中に舞います。細かな金属粉はしばらくすると固まり、微細な金属粒子として空気中に漂います。この、溶接作業などで発生する細かな金属粒子の粉じんは「ヒューム」と呼ばれ、肺などに入ると健康障害を起こします。

溶接作業でも粉じんが発生
図3:溶接作業でも粉じんが発生

粉じんには固体だけではなく、液状のものもあります。液体状の粒子を「ミスト」と呼んでいます。霧のようなものです。これら「粉じん」「ヒューム」「ミスト」など、粒子状物質の吸入により生じる健康障害を予防するために使用されるのが、防じんマスクです。

法令に、防じんマスクに関する使用についての規定があります。「労働安全衛生規則」という法令では、ガス、蒸気または粉じんを発散する有害な場所における業務では、「当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具など適切な保護具を備えなければならない(593条)」と定めています。労働者も、「事業者から当該業務に必要な保護具の使用を命じられたときは、当該保護具を使用しなければならない(597条)」と決められています。また、法令では、防じんマスクの着用が必要な紛じんなどの種類および作業内容についても規定しています。

法で定められた作業に使用する防じんマスクは、国家検定品でなければならないとされています(参照:JIS T 8151 防じんマスク)。国家検定品であれば、国家検定のマークが付けられています(図4)。

国家検定マーク(引用:厚生労働省、職場の安全サイト、労働衛生保護具)
図4:国家検定マーク(引用:厚生労働省、職場の安全サイト、労働衛生保護具)

2. 防じんマスクの種類

防じんマスクには、大きく分けて「取替え式」と「使い捨て式」の2種類があります。取替え式は繰り返し使用ができ、使い捨て式は、使用ごとに破棄します。

・取替え式
粉じんを取り除いてくれる部品を交換し、繰り返し使えるタイプのマスクを取替え式と呼んでいます。粉じんをろ過する部分のみを消耗品として取替え、繰り返し使うことを前提としたマスクです(図5)。繰り返し使える利点がある一方で、使用前の点検や清掃がその都度必要となります。

取替え式防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)
図5:取替え式防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)

国家検定規格では、取替え式は「フィットテスト」が容易にできることが定められています。フィットテストとは、マスクの装着状態をチェックする作業です。マスクの面体と顔面の接触状態が悪ければ、粉じんを吸い込むことになります。マスクの面体などが、主要部品そのものの変形や傷みで漏れが生じるような状態になれば、再使用できません。顔面との密着性に不安を感じたら、必ずマスクを交換しましょう。

取替え式防じんマスクには、面体部分の違いにより「半面型」「全面型」の2種類があります。多く使用されているのは、直結式の「半面型」と呼ばれるマスクです(図6)。半面型防じんマスクには、防毒マスクの機能を併せ持ったマスクも用意されています。マスク表面に、防毒マスクと防じんマスクの両方の表記があります。形は似ていても、単なる防じん性能のみのマスクもあるので、メーカーなどのカタログや表示記号をよく確認します。

防毒マスク機能を併せ持った半面型防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)
図6:防毒マスク機能を併せ持った半面型防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)

もう1つは、「全面型」と呼ばれる防じんマスクです(図7)。粉じんやミストなどから目も保護したい場合に使用します。全面型は、顔全体を覆うため、顔への粉じんの付着を防ぐことができます。顔との密着面は増えるので、装着時にしっかりとフィットテストする必要があります。

全面型防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)
図7:全面型防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)

・使い捨て式
取替え式に対し、使い捨て式と呼ばれるマスクがあります(図8)。使い捨て式とは、1回限りの使用を前提としたマスクで、粉じんを取り除く能力がなくなれば廃棄することになります。粉じんがマスクに堆積して、呼吸が苦しくなるような状態になれば寿命と考えてください。外側に付着している粉じんを取り除いても、マスクの内部には多くの粉じんが入り込んでいるため、再使用はできません。新品と交換します。使い捨て方式のため構造は簡単で、価格も安いのが特徴です。

防じんマスクを繰り返し何度も使用するのであれば、取替え式の方が経済的な場合もあります。使用頻度とコスト面で考慮して、どちらを選ぶのかを決めましょう。

使い捨て式防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)
図8:使い捨て式防じんマスク(引用:株式会社重松製作所ウェブサイト)

3. 防じんマスクの性能と表示

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 労働災害と保護具
  • 第2回 防毒マスクとは
  • 第3回 防毒マスクの吸収缶
  • 第4回 防毒マスクの選定基準と注意点
  • 第5回 防じんマスクとは
  • 第6回 防じんマスクの注意点

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