前回は、仕事中に起こるさまざまな労働災害と、そこから身を守るための保護具に関する基礎知識を解説しました。今回から3回にわたって、防毒マスクの種類と構造、使い方や注意すべき災害事例などについて、知っておきたい事項を紹介していきます。今回は、防毒マスクの基本構造と種類について解説します。
第2回「防毒マスクとは」を解説していきます。
1. 防毒マスクとは
防毒マスクとは、ガス中毒を防止するための呼吸器用保護具です。有毒ガスが発生する場所で作業を行う場合に、人体を保護します(図1)。防毒マスクは、基本的に面体、面体を固定するバンド、吸収缶という3つの主要部品から構成されています。使用時には、顔の部分に面体と呼ばれる部分を押し当てて使います。面体を顔にしっかりと密着させるため、締めひもと呼ばれるヒモやバンドが、面体の本体に取り付けられています。こうして密着性を高めることにより、面体と顔の間にできた隙間からガスが漏れ込むのを防ぎます。面体には、吸い込んだ空気中の有毒ガスを吸収するための吸収缶と呼ばれる丸い形状の部品が付いています。大型の吸収缶になると重量があるため、直接面体には接続せず、分離して腰などに着けて使用します。
防毒マスクは、人体が肺で呼吸するときの吸引力を使用します。つまり、空気を吸ったり吐いたりするときの力をうまく利用した保護具です。防毒マスクを着用した人が空気を吸い込むと、マスクに取り付けられた吸収缶の中を通過します。吸収缶には、有毒ガスを吸収するための薬剤が入っています。この薬剤によって、吸い込んだ空気中の有毒ガス成分が取り除かれ、浄化された空気となります。このことにより、人が吸気する空気は、常に清浄なものとなり、安全が保たれます。このような防毒マスクは、吸収缶で有毒ガスをろ過する方式で人体を保護し、「ろ過式呼吸用保護具」とも呼ばれます(図2)。
防毒マスクは、吸い込んだ空気をそのままろ過する方式のため、酸素が少ない作業環境では使用することができません。ろ過された清浄な空気は、酸素が少ないままなので、これを直接吸ってしまうと非常に危険です。人が正常に作業を行うためには、酸素濃度18% 以上が必要です。ろ過式の防毒マスクを使用する場合は、必ず酸素濃度が18% 以上の環境で使用しましょう。
・給気式マスク
給気式(送気式、自給式)のマスクは、酸素が18%未満、あるいは酸素がないところで作業をする場合に使用されます(図3)。送気式マスクは、外部からホ-スを面体につなぎ、電動で面体に清浄な空気を供給する方式のマスクです。自給式マスクは、背中に空気ボンベなどを背負う方式のマスクです。空気ボンベから直接マスクに空気を送り込めることから、「自給式空気呼吸器」と呼ばれます。
防毒マスクの規格については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第42条に規定されています。ここには、防毒マスクの適用範囲(使える条件)、マスクの種類、材料、強度試験、構造、性能試験、表示事項などが詳しく書かれています。
2. 面体の種類
マスクの面体の形状により、2つの種類に分類できます(図4)。1つは、鼻と口の部分のみを覆う形式のマスクです。顔の半分程度のみを覆うため「半面形」と呼ばれ、小型なのが特徴です。もう1つは、「全面形」と呼ばれるマスクで、口、鼻に加え、目の部分を含めた顔全体を覆う形です。毒性ガスの種類によっては、目を保護するために全面形マスクを使う必要があります。ただし、目を覆ってしまうため、使用する際に視野がどうしても狭くなってしまうという欠点があります。
3. 吸収缶の種類
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 労働災害と保護具
- 第2回 防毒マスクとは
- 第3回 防毒マスクの吸収缶
- 第4回 防毒マスクの選定基準と注意点
- 第5回 防じんマスクとは
- 第6回 防じんマスクの注意点