前回は、燃料電池の発電原理とその特長を紹介しました。燃料電池には使われる材料の違いによってさまざまな種類があります。本連載では、第 2 回と第 3 回で各種燃料電池の発電原理や特長、そして歴史的背景を解説していきます。
今回は、比較的低温で稼働する燃料電池の基礎知識について解説します。
第2回「燃料電池の種類1-低温形-」を解説していきます。
1. 主な燃料電池の種類
燃料電池にはさまざまな種類があり、使われる電解質によって名前が付けられています。その中の代表的な 5 種類の燃料電池について解説します(図 1)。
これらは作動する温度によって低温形と高温形の 2 つに分けられます。それぞれの種類の英語表記から、下のような略称がよく使われます。
アルカリ形燃料電池 AFC: Alkaline Fuel Cell
りん酸形燃料電池 PAFC: Phosphoric Acid Fuel Cell
固体高分子形燃料電池 PEFC: Polymer Electrolyte Fuel Cell
溶融炭酸塩形燃料電池 MCFC: Molten Carbonate Fuel Cell
固体酸化物形燃料電池 SOFC: Solid Oxide Fuel Cell
それでは各種類の燃料電池の詳細を説明していきます。
2. アルカリ形燃料電池(AFC)
アルカリ形燃料電池(以下 AFC)は、名前のとおり、水酸化カリウム(KOH)などを含んだアルカリ水溶液が電解質に使われます。負極に導入された水素が電極触媒表面で電解質中の OH – と反応し、水が生成します。この時に発生する電子が、外部回路を通って電気エネルギーとなります。正極では、導入された酸素と電解液中の水、そして外部回路を通ってきた電子が電極触媒表面で反応し、OH – が生成します。生成した OH – は負極へ向かって電解質中を移動していきます(図 2)。
作動する温度は条件によりさまざまです。AFC は比較的低温(60 ~80℃程度)で作動するため、電極触媒には低温でも活性が高い貴金属系材料が多用されます。電解質はアルカリ性で、酸性電解質に比べて電極に高い耐腐食性が必要でないため、ニッケル(Ni)のような安価な材料を電極触媒に使うこともでき(電池出力はやや低下しますが)、製造コストを下げることが可能です。
英国の技術者であるフランシス・トーマス・ベーコンが 1939 年に開発した AFC は、より改良されて宇宙船用の電源として使われるようになりました。1960 年代に始まったアポロ計画でも採用されましたが、アポロ 13 号では AFC の故障(正確には酸素タンクの故障)が原因で、宇宙飛行計画が大幅に変更されました。映画「Apollo 13」(1995 年)ではこの時の様子が描かれ、燃料電池の話も登場します。その後、NASAによるスペースシャトル計画(1981~2011年)にもAFCが使われました。
3. りん酸形燃料電池(PAFC)
4. 固体高分子形燃料電池(PEFC)
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 燃料電池とは何か?
- 第2回 燃料電池の種類1-低温形-
- 第3回 燃料電池の種類2-高温形・その他-
- 第4回 固体高分子型燃料電池を構成する材料
- 第5回 固体高分子型燃料電池の現状
- 第6回 燃料電池の課題と将来