前回、FMEA を使った製品の詳細設計手順について解説しました。今回は、FMEA の致命度評価の方法や、詳細設計の後半部分に関わる、部品やユニットの選択・評価の方法を解説します。
第5回「FMEAでは部品選択と評価がポイント!」を解説していきます。
1. FMEA の影響解析の定量化:安全と信頼性は別評価
FMEA では、懸念点を格付け(等級)し、対策の優先度を決めます。格付けを行うためには、優先的重要度を定量化(数値化)する必要があります。一般的にこの定量化は、3 つの尺度、故障の発生頻度と、他への影響度、検知度で行われます。それぞれ10 段階の係数に区分されます。そして、3 つの尺度の掛け算をした数値が、RPN(Risk PriorityNumber:危険優先数)です。数値が大きいほど、対策すべき優先度が高いと考えます。
しかし、信頼性評価と安全評価では、RNP の重要度が変わります。簡略化するために、発生頻度と影響度の2 つの尺度で説明しましょう。
図1 を見てください。故障の影響度が5で、発生頻度が1の場合、RNPは5となります。左側の信頼性工学や品質管理の観点では、等級は2の「重大」にしかなりません。しかし、右側の安全評価のリスクマトリックスからは、等級1 の「致命的」な扱いとなります。このように信頼性分野で使うのか、安全分野で使うのかを区別することが、賢いRPN の使い方です。
多くの製品開発では、言うまでもなく、信頼性評価を使い、RNP(等級)の大きいものから対策案を考えていきます。FMEA では、部品からのボトムアップで製品への影響の大きさ(影響度)を考えるので、対策案を考えるときには部品管理がポイントとなります。しかし、RNP の影響度の係数が高いからといって、発生頻度や検知度の係数を下げるだけでは、信頼性の高い製品になりません。影響度を低減する設計対策が重要です。特に安全に関わる故障モードは影響度の低減を優先すべきです。安全分野ではこの考え方を肝に銘じなければ、事故はなくなりません。このように、FMEA では部品管理や安全対策の優先度が分かります。しかし、FMEAが展開できても、抽出された部品や設計の検証ができなければ、机上の空論で終わってしまいます。そこで、FMEA を有効に活用するためにも、部品選択や分析・評価が重要になります。
2. FMEA では部品選択が大事
開発の技術者は、高信頼性・安全・生産性など、てんこ盛りの設計要求書をもらった経験はないですか? また、スピード優先のために、開発日程も非常に短いのが現状でしょう。有名な航空技術者の堀越二郎氏が、零戦(零式艦上戦闘機)を開発したときのことを私は思い起こします。海軍のてんこ盛りの要求に対して、彼は設計優先順位を考えたはずです。
当時の海軍の要求は、高度の高い上空を遠くまで飛んでいき、空中戦または爆撃をして戻ってくることでした。スピード確保に対して、機銃や積載爆弾の重量などの制約条件を考えると、優先すべき項目は、徹底的な軽量化と空気抵抗の低減になります。そのため、機体の内装は肉抜きで軽量化し、機体の外装は枕頭鋲(ちんとうびょう:頭部が平な鋲・リベット)で徹底的に空気抵抗を低減しました。エンジンだけは自社品で良いものが無かったため、競合他社のものを使うしかありませんでした。そのような状況のなか、彼は限られた部品や材料で、世界一の戦闘機を造り上げたのです。
現代では、まず設計要求書から、図2 のように設計の優先順位を考えて、重み付けの配点をします。次に、図3 のように各部品を比較して、設計項目ごとに点数を付けます。そして、全ての項目の点数を合計し、一番配点の高い材料・部品を選びます。これにより、てんこ盛りの要求を網羅した材料・部品が抽出されます。
3. 部品評価:FTA/FMEA の真価を発揮するために
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 もったいない!FMEA/FTAの実態
- 第2回 機能階層化のコツ
- 第3回 下方機能展開とFTA
- 第4回 4つの関門を突破するツール
- 第5回 FMEAでは部品選択と評価がポイント!
- 第6回 工程のFMEA・設備のFMEA