前回は、下方機能展開の方法とFTA 実施のポイントを解説しました。今回は、FTA とFMEA の展開のコツを解説します。そして、温泉(FTA/FMEA)の効能を引き出すために必要な、4 つの関門を突破するツールについて解説します。
第4回「4つの関門を突破するツール」を解説していきます。
1. 基本設計: FTA で構造を考える
これまでの解説をもとに、基本(構想)設計手順をまとめると図1 のようになります。
はじめに、製品の任務・機能を明確化します(図1の手順1)。マイナーチェンジであれば、任務・機能を再確認します。新規設計と同様に上方機能展開(手順2)を行い、新しい機能や原理を考えることは、画期的な品質改善につながる可能性があるからです。上方機能展開が終了したところで、任務から引き出された要求仕様(機能)や開発原資を考慮して、開発する製品を絞り込みます。
次に、下方機能展開をして機能ブロック図を描きます(手順3)。マイナーチェンジの場合は、既存の部品・ユニットはあくまでも候補の1 つとして扱います。そして機能ブロック図を見ながら、FTA を作成し、検討します(手順4)。このとき、機能ブロック図が直列のみであれば、作成されたFTAはOR ゲートばかりで構造的に弱いことが分かります。
そして、最後に弱点の対策を行います(手順5)。弱点の要素を並列構造にすることや、要素の信頼性を高めることを検討します。さらに安全を高めるために、並列化された部品、または機能の独立性や多様性を検討します。多様性とは、具体的には単に同じ部品を並列に配置するのでなく、一方の部品の設計者やメーカーを変更することです。つまり並列の部品が同じ欠陥を持つことで、同じ原因で同時に発生することを防ぎます。
このようにFTA は、上方機能展開により引き出された原理や機能の弱点を顕在化させます。FTA を作成するときには、下方機能展開の機能ブロック図や部品構成図を使います。しかし、これらの図に描かれていない故障の原因も考える必要があります。ユーザー(外部)環境ストレス(ヒューマンエラーも含む)や、製品および部品の内部環境ストレス(材料の組み合わせや加工・組み立てによるストレス)です。FTA で抽出された懸念点の検証は、実験や分析で確認します。これで、製品の対策候補が妥当なのかを判断し、見直すこともできます。
2. 詳細設計:FMEA を用いて管理する
詳細設計の手順は、図2 のとおりです。
再度、下方機能展開をすることで、基本設計で決まっていなかった機能ブロック図の各機能を満たす部品やユニットの候補を決め、部品構成図を作成します(図2の手順1)。次に、FMEA を展開し、部品・ユニットを抽出し、故障モードや故障による影響、その原因を整理します(手順2)。その際、図3 のFMEA フォーマットを使って展開し、改善・管理していきます。
一般的なフォーマットの項目は、機能、部品、故障モード、原因、上位への影響、致命度評価、等級、対策などです。致命度評価は、発生率(F1)と影響度(F2)および検知度(F3)の掛け算による優先数を等級として、格付けしたものです。優先数は、英語ではRPN(Risk PriorityNumber) といい、日本語では危険優先数と呼ばれます。(次回、優先数の詳細を解説します)
最近はExcelでFMEAを作成することが多いでしょうから、そのフォーマットに従って、左から右へと項目ごとに、想像を膨らませながら、記入していきます。ただし、注意すべきは、機能、部品を記入した後、理想では原因を想像することから始めることです。そこから故障モード、上位への影響を考えていけば、文字通りのボトムアップの展開になります。しかし、多くの市販テキストやセミナーでは、故障モードの後、逆行してトップダウンで原因を考える方法を教えています。フォーマットも、故障モードの次が原因です。そのため、厳密にボトムアップとはいえず戸惑う人もいるでしょう。そこで、図3はボトムアップとなるように配列しました。原因から故障モードを考えていけば、ボトムアップの展開になります。ここでは故障モードから始めて、上位の影響を考えていきます。致命度評価で高いものだけ、原因を考えるということもできます。
原因は、故障メカニズムとして見ていくと、1次原因、2 次原因...と深い階層まで展開されます。FMEA のフォーマットは、影響や原因の階層をどこまで考えるかにより、項目(階層)が決められています。全てをカバーするフォーマットは使われていません。
そこで、階層を図4のようにシステムレベルとユニットレベルの2 つに区切って、 2 段階でFMEA を行うことを推奨している人もいます。さらに、開発ステップごとにFMEA を行う方法もあるですが、実際にはそこまではできないでしょう。そこで、どの階層の原因をフォーマットに書き込むか迷った場合は、対策が思い浮かぶ原因を選びましょう。
次に、部品の故障モードが、上位の製品の故障モードへどのように影響を与えるかを考えます。さらに、製品の故障モードから発展させて、災害や人への危害に波及するかを考えると、安全解析のFMEA となります。ここで、部品故障モードの上位への影響度により、部品管理の優先順位を考えます。部品の選択と評価がカギとなる手順4 ~手順6 の詳細は、次回説明します。
図4はFMEA とFTA の階層との関係を示しています。FMEA は、FTAのように深い階層まで展開されていないことが理解できます。一般的に、FMEA の後にFTA を行うことが勧められています。全てのFTA 展開は、時間との兼ね合いで不可能です。そこで、対策を間違わないように、致命度評価で優先順位の高い故障モードについてFTA を展開すればよいでしょう。
3. 4 つの関門を突破するためのツール
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 もったいない!FMEA/FTAの実態
- 第2回 機能階層化のコツ
- 第3回 下方機能展開とFTA
- 第4回 4つの関門を突破するツール
- 第5回 FMEAでは部品選択と評価がポイント!
- 第6回 工程のFMEA・設備のFMEA