前回は、鍛造に用いられる金型の材料、型コーティング、潤滑剤について紹介しました。今回は鍛造の力学的な近似解析や、変形シミュレーションに必要な力学の基本的事項を紹介します。鍛造に関する力学の知見は、鍛造に必要な荷重を予想することや、欠陥(欠肉・まくれ込み)や成形性(表面割れ・内部クラック)の原因解明、対策立案に役に立ちます。
第5回「鍛造に関する力学」を解説していきます。
1. 鍛造荷重
鍛造に必要な荷重は、主に、材料の大きさ、材料強さ、材料流動の拘束、型と材料との間の摩擦抵抗の4 項目によって決まります。
2. 体積一定
塑性加工の一種である鍛造では、加工の前後における材料体積は変化しないという、体積一定の原理があります。均一な圧縮による円柱の変形前後の例を図1 に示します。
高さがH 0 、直径がD 0 の円柱を圧縮して、高さがH 1 になったとします。元の断面積をA 0 、圧縮後の断面積をA 1 とすると、A 0 =3.14×(D 0 / 2) 2 となり、体積一定の原理によりA 1 = A 0 ×(H 0 /H 1 ) が成り立ちます。
体積一定の原理は、3 方向の垂直ひずみの合計が0 という説明も可能です。例えば、変形前の直方体の各辺の長さがX
0
、Y
0
、Z
0
であったものが、鍛造後にX
1
、Y
1
、Z
1
に変化したとします。この時、真ひずみ(対数ひずみ)をε
x
、ε
y
、ε
z
とすると、ε
x
= ln (X
1
/X
0
) 、ε
y
=ln (Y
1
/Y
0
) 、ε
z
=ln (Z
1
/ Z
0
)となります。3 方向のひずみの合計は、
ε
x
+ε
y
+ ε
z
=ln (X
1
/X
0
)+ln(Y
1
/Y
0
)+ln(Z
1
/Z
0
) =ln [(X
1
・Y
1
・Z
1
)/(X
0
・Y
0
・Z
0
)]となります。体積一定なので、変形後の体積X
1
・Y
1
・Z
1
と変形前の体積X
0
・Y
0
・Z
0
は等しい値となります。よって、ε
x
+ε
y
+ ε
z
=ln(1)=0となり、この両辺を微分すれば微少量に対しても、体積一定の原理は成立します。時間で微分すれば、ひずみ速度でも同様に合計が0 となり体積一定の原理を説明することができます。
3. 変形抵抗と真ひずみ
4. 加工硬化のモデル式
5. 平均垂直応力・各応力成分・相当応力と降伏条件
6. 材料流動の基本と摩擦の影響
7. 材料流動
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 鍛造加工とは?鍛造加工の種類は?
- 第2回 鍛造加工の工程と欠陥
- 第3回 鍛造材料の種類と性質
- 第4回 鍛造の金型材料・型コーティング・潤滑剤
- 第5回 鍛造に関する力学
- 第6回 鍛造機械の種類と特徴