前回は、食品添加物の定義や歴史、現在の使用状況などを解説しました。2 回目となる今回は、食品添加物のメリット、デメリットを説明していきます。食品添加物は、現代の豊かで健康的な食生活を支える立役者です。しかし消費者の意識は厳しく、食品添加物が正しく理解されているとはいえません。食品添加物は、定められた基準に従って使用する限り、十分に安全性が確認されています。食品添加物を正しく理解し、上手に付き合うために、まずは技術者が知識を身に付けましょう。
第2回「食品添加物のメリット・デメリット」を解説していきます。
第2回もくじ
1. 食品添加物のメリット
食品添加物のメリットは、大きく5 つあります。食中毒の防止、栄養バランスの補助、加工食品の品質の安定化、食生活の多様性の創出、経済性の向上です。それぞれの詳細を解説します。
メリット1:食中毒の防止
食品添加物の最大のメリットは、食中毒の防止です。保存料、殺菌料、日持向上剤、酸化防止剤などの食品添加物は、食品の腐敗や変敗(へんぱい:食品の変色や風味の低下によって、食用に適さなくなること)、食中毒の防止に役立っています。
日本は、温暖多湿な気候であり、食品の腐敗や食中毒が発生しやすい地域です。図1 を見てみましょう。1960 年代の食中毒患者数は30,000~40,000 人で、2016 年の患者数は20,000 人程度にまで減少しています。当然、衛生管理技術の向上(冷蔵庫の普及)、食品加工技術の向上も生鮮食品による食中毒の減少に貢献しています。しかし加工食品に広く使用される保存料や酸化防止剤などの発達も、食中毒減少の大きな要因です。
メリット2:栄養バランスの補助
現代人は、食物の豊かな時代であるにもかかわらず、不規則で偏った食生活のために、摂取栄養素が不足したり、アンバランスな栄養状態に陥っていることが少なくありません。それを補っているのが、ビタミン、ミネラルなどの栄養強化剤です。
一例として、カルシウムの摂取量を考えてみましょう。成人の場合、1日のカルシウム摂取量は600mg が目標とされています。食品衛生学の研究者、伊藤誉志男らが行った調査研究(図2)によると、生鮮食品から摂取されるカルシウムの1 日摂取量は約250mg でした。一方、加工食品から摂取されるカルシウムは、約370mg であったと報告されています。両者の合計で、1 日約620mg のカルシウムを摂取している計算となります。なお、加工食品から摂取されるカルシウムのうち、130mg は栄養強化剤として使用されている食品添加物であると推定されています。食品添加物や加工食品がなければ、私たちが必要なカルシウムの1 日摂取量600mg には、到底到達しないのが実情です。
メリット3:加工食品の品質の安定化
食品の原材料には、品質のばらつきがあります。食品添加物には、原材料の品質のばらつきを、一定に補正する役割もあります。よく飲み慣れているジュースの味や色がいつもと違ったら、不安を感じるのではないでしょうか。しかし、ジュースの原材料は、農作物です。当然、品種・収穫時期・産地・気候などにより、色や味、香りなど、品質にばらつきが生じます。調味料、着色料、酵素などの食品添加物は、このような品質のばらつきを補正して、加工食品を常に一定の品質に仕上げているのです。
メリット4:食生活の多様性の創出
着色料、香料、調味料、酸味料、乳化剤、甘味料などの食品添加物は、加工食品の色、香り、味、食感を変化させ、和・洋・中・エスニック風など、食生活の多様化に役立っています。
メリット5:経済性の向上
保存料、酸化防止剤などの食品添加物は、食品の保存性を向上させることで、食品の保存や流通にかかるコストを抑えています。同時に、期限切れによる廃棄食糧を減らすことで、貴重な食糧資源の有効利用に貢献しています。
2. 食品添加物のデメリット
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 食品添加物とは?
- 第2回 食品添加物のメリット・デメリット
- 第3回 食品添加物の種類
- 第4回 食品衛生法と食品添加物
- 第5回 食品添加物の安全性
- 第6回 食品添加物の表示ルール
- 第7回 食品添加物指定の条件と流れ