前回は、膜によるコロイドのろ過を説明しました。今回は、ケークレスろ過について解説します。これまで、主にろ材表面にケーク層が形成されるろ過操作について解説してきました。固体の回収を目的とする場合はケークが必要になりますが、液体の清澄化を目的とする場合は必ずしもケークを形成させる必要はありません。むしろ、ケークはろ過性能低下の主要因であり、ケークの成長に伴ってろ過速度の低下やろ過圧力の上昇が生じます。これまでにさまざまなタイプのケークレスろ過技術が考案され、開発・実用化されています。クロスフローろ過をはじめとする主なケークレスろ過方式の実例をいくつか紹介します。
第5回「ケークレスろ過」を解説していきます。
1. ケークレスろ過の原理と特長
ケークレスろ過の原理と特長を、ケークろ過との比較から説明します。
図1は、ケークろ過とケークレスろ過の概略を模式的に示しています(第1回参照)。ケークろ過とは、ろ液の流出方向(ろ材面に対して垂直方向)に懸濁液を供給するろ過方式です。ろ過の進行とともにケーク層が成長します。ケークレスろ過とは、供給液をフィルタ表面上で流体力学的な操作で高速流動させるろ過方式です。その動的な特徴からダイナミックろ過とも呼ばれます。ケーク層を撹乱して除去することにより高いろ過性能を維持でき、連続使用が可能です。典型的なものは、ろ過面に対して平行に供給液を流す方式であり、供給液流れと、ろ液流れがクロスしていることからクロスフローろ過と呼ばれます。もしくは、その動的な特徴からダイナミックろ過とも呼ばれます。その他、フィルタを高速で回転させたりフィルタに高周波の振動を与えたりしても、ケークは撹乱・掃流され、高いろ過性能が維持できます。ケークレスろ過技術は、特に高濃度で難ろ過性の試料液の処理に有効です。
ケークレスろ過の効果がよく分かるように、ケークろ過の結果と比較しましょう。図2は、あるケークレスろ過におけるろ過速度の逆数(1/q)対、単位ろ過面積当たりのろ液量vのデータを示しています。ケークろ過は、ろ液の流出する方向が試料液の供給方向と一致します。そのため、ろ過の進行とともにケークが成長し、ろ過速度qは急激に減少して、1/q対vのプロットは直線的に増加します。一方、ケークレスろ過は、ろ過初期こそろ過速度の減少が見られるものの、流体力学的作用によってケークが剥離し、ろ過速度の低下がすぐに抑制されて、プロットはある値(定常ろ過速度)に漸近する挙動を示します。一般にケークレスろ過では、ろ過によってケーク表面に運ばれる固体量と流体力学的作用によって掃流される固体量とが次第に釣り合うようになり、ろ過速度はある定常値に達する傾向を示します。なお、図2は定圧ろ過の結果であり、定速下でのケークレスろ過ではろ過圧力の急激な上昇が抑えられて、定常ろ過圧力に達します。
2. クロスフローろ過
クロスフローろ過は、装置構造が比較的シンプルなため、それほど大きな動力を必要とせず、維持管理も容易です。そのため、最も広く適用されている代表的なケークレスろ過方式です(図3)。ろ材は、フラットなタイプもチューブ状のタイプも使用でき、多数のチューブ状の膜を束にした中空糸膜モジュールや、1本の円柱に多数の流路を設けたセラミックス製モノリス膜など、大流量かつコンパクトなフィルタ設計が容易です。
後述する回転型ろ過や振動型ろ過と比較すると、ケークの剥離効果はそれほど大きくなく、試料液の性状によっては期待通りの効果が得られない場合もあります。そのため、クロスフローろ過にさまざまな支援技術を組み合わせて、ケーク除去をより一層促進させる工夫が取り入れられています。次章では、こうしたクロスフローろ過のさらなる高性能化の事例をいくつか紹介します。
3. クロスフローろ過に対する支援技術
4. 回転や振動を利用したケークレスろ過
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ろ過とは
- 第2回 ケークろ過と閉そくろ過
- 第3回 ケークろ過の解析と評価
- 第4回 膜によるコロイドのろ過
- 第5回 ケークレスろ過
- 第6回 さまざまなろ過操作