手と指先の安全対策|工場安全対策の基礎知識3

工場安全対策の基礎知識

著者:事故分析・コミュニケーション研究所 代表 兼 化学工学会SCE・Net 幹事 竹内 亮

前回は、腱鞘炎や手根管症候群など、エルゴノミクスに関連する疾病を解説しました。今回は、発生頻度の高い手と指先のけがの防止策を説明します。米国労働省労働統計局の統計によると、米国内で手にけがを負って手当てを受ける作業者は、毎年10万人を超えています。手は、工場での作業中に最もけがをしやすい部分です。正しい安全対策を身に付け、手や指先のけがを防ぎましょう。

第3回「手と指先の安全対策」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 手袋の安全使用に関する注意点

米国労働省労働統計局(Bureau of Labor Statistics)の統計では、手にけがをした人のうち、70%が手袋を未着用でした。残りの30%の手袋をしていた人たちも、ほとんどの人が作業に適していない手袋や、傷んだ手袋(図1)など、不適切なものを着用していました。自らの手を守るために、まずは正しい手袋の知識を身に付ける必要があります。

親指の腹に穴の開いた手袋
図1:親指の腹に穴の開いた手袋

1:作業ごとに適した手袋を付け替える
何でもいいから手袋をすればよいというわけではありません。作業に適さない手袋の着用で、けがをするケースは後を絶ちません。特に溶剤や酸・アルカリなど、危険な化学物質を扱う場合には、薬剤の性質に合った専用の手袋を使用する必要があります。

手袋の種別は、その都度、自分で責任を持って確認しなくてはいけません。とある手を薬傷した作業者は「薬剤容器の脇に、使用済みの手袋が置いてあった。その薬剤専用の手袋だと思い、着用して作業した」と言いました。しかし実際には、その薬剤に適していないと判断した人が、特に意図もなく置いた手袋だったのです。勘違いと確認の不備から、この手袋で作業した人は、手を薬傷してしまいました。

刃物やガラスの破片など、切創(せっそう:切り傷)の危険性がある作業には、適した専用手袋があります。しかし切創を防ぐ効果はあっても、突き刺しには防護効果が弱いものもあるので、注意が必要です。その他、製造作業用の手袋は、高温や低温から手を守るもの、振動から手を守るもの、感電を防止するものなど、多種多様です(図2)。作業に適した手袋を使い分けて、常に安全に作業できる人が、真のプロフェッショナルです。

用途が異なる、さまざまな手袋の例
図2:用途が異なる、さまざまな手袋の例

2:手袋着用が危険を招くこともある
手袋を付けずに作業した方が、良い場合もあります。ドリルのように軸が回転する場合、手袋を付けていると、巻き込まれやすくなり、かえってリスクが高まります。電動ドリルの先に軸の長いワイヤブラシを取り付け、機械の深い穴を掃除していた人の例です。回転軸の振動を抑えようとうっかり軸を握ってしまい、手袋が回転軸に巻き込まれ、けがをしてしまいました。労働安全衛生規則第111条には「事業者は、ボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の労働者の手が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に手袋を使用させてはならない。」と記されています。正しい知識を身に付け、臨機応変に対応しましょう。

2. ピンチポイントの事前把握

身体の一部、特に指が何かに挟まれるリスクのある場所を、ピンチポイント(Pinch Point)と呼びます(図3)。機械・設備の設計時には、ピンチポイントを作らないように気を付けましょう。どうしてもピンチポイントができてしまう場合には、指などを入れられないよう、カバーを取り付けましょう。この対策は、1994年に施行された製造物責任法(PL法)でも義務付けられています。

蝶番のある扉のピンチポイント(指を挟む危険性がある場所)
図3:蝶番のある扉のピンチポイント(指を挟む危険性がある場所)

私たちの身の回りには、ピンチポイントが至るところにあります。蝶番のあるドアには、柱とドア本体の隙間、もしくは2 枚ドアのつなぎ目部分にピンチポイントができます。子供が指を挟まれれば、大変な事故になります。日常生活の中でも、ピンチポイントの考え方は役立ちます。

工場内では、作業現場のどこにピンチポイントがあるかを把握して、同僚と情報共有しましょう。特に、初めての現場で仕事をする場合は、作業開始前のKYT(危険予知訓練、Kiken Yochi Training)で、ピンチポイントの確認を忘れずに行いましょう。 (KYTの詳細:訓練による残留リスクの低減、機械安全の基礎知識5)

3. 弾丸の通り道とは?

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全5回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 工場の事故の原因
  • 第2回 反復的負荷障害とエルゴノミクス
  • 第3回 手と指先の安全対策
  • 第4回 工場における工事の安全対策
  • 第5回 ロックアウト・タグアウトとは

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