前回は、ガスや粉体の使用と危険な場所について説明しました。今回は、爆発防止の考えと実施について解説します。
火災や爆発災害が発生してしまうのは、対策が十分ではないからです。火災や爆発災害の発生する確率が高く、災害の規模が大きいほど、リスクは高くなります。火災や爆発の発生を防止するため、着火源をなくすこと、十分な通風や換気を行うことが必要です。十分な通風や換気が行えないときは、防爆構造の電気機器の使用を検討しましょう。
第3回「爆発防止の考えと実施」を解説していきます。
第3回もくじ
1. 火災や爆発の予防と防爆
2019 年 10 月 31 日に発生した首里城の火災の様子を見ると、火災が広がってしまうと、すぐには消火できないことが分かります。また、かつて起こった原子力発電所の事故では、突然、水素爆発が発生しました。これまでに発生した多くの火災や爆発災害から防止対策の検討が行われているため、あらかじめ対策が講じられていれば、こうした事故は防止可能であるように思われます。しかし、首里城の火災では、消火に必要な設備があったにもかかわらず、早期に消火できていませんでした。火災や爆発災害の防止に必要な対策を講じていたはずなのに、その対策が十分ではなかったといえます。
火災や爆発災害の事例を検討すると、注意しながら作業していたにもかかわらず、発生を防止できなかった事例があります。周囲で物が動くと、静電気や電気火花が自然に発生してしまい、それが原因となる例です。
例えば、静電気が原因となる例には、結晶粉体やグラニュー糖を容器に移す作業、ゴム揮発油やシンナーを使った作業、ガソリンを一斗缶に缶詰する作業、掃除機のごみをビニール袋に入れる作業などがあげられます。その他、トラックなどの振動で電気設備の配線の接続部が緩み、それが原因で加熱し電気火花が発生するという例があります。このように物が動くだけで、火災や爆発災害の着火源が現れます。すぐに消える小さな火であればヒヤリ・ハットで済みますが、中には大災害に及ぶものもあります。このため、リスクアセスメントを実施し、爆発リスクの低減を行うことが求められています。
リスクの低減は、1:予防(爆発要因の排除)、2:防護(防爆電気機器の使用)、3:使用者への情報提供の順に行います。ガス蒸気の火災や爆発災害を防止するには、1:電気機器と可燃物の共存を避ける、2:可燃物の爆発特性を消滅させる、3:電気機器が着火作用(能力)を有しないようにする、というように段階を踏んで検討しましょう(図 1)。
2. 電気機器と可燃性物質
蛍光灯のスイッチをオン、オフするときや、ノートパソコンの電源プラグをコンセントから抜くときに、小さな電気火花が発生しています。その電気火花は、電位差がある二つの導体が離れるとき、電流が流れ続けようとするために起こります。一般的な電気機器は使用時に小さな電気火花を発生させる可能性があります。そしてこの電気火花は、火災や爆発災害の着火源になることがあります。
金属と水の化学反応などにより発生した水素ガスが充満した空間で、一般的な電気機器を使用すると、火災や爆発災害を発生させる可能性が高くなります。火災や爆発災害が発生する可能性をなくせば、作業者は安心して安全に作業できます。火災や爆発災害の発生する可能性があるときは、なるべく一般的な電気機器ではなく、防爆電気設備を使用することが望ましいです。着火源は、タバコに火を付けるときのライターなどの他、電源プラグとコンセント間の電気火花の他、人体などから発生する静電気など、室内には沢山あります。
また、水素などの可燃性ガスが、着火源のある空間に入ってこないようにすることも必要です。内圧室では、内部の気圧を外部よりも高くすることで、外から水素などの可燃性ガスが入って来ない構造になっています。内圧室は爆発の予防策とはいえないものの、爆発災害の防止には有効な方法といわれております。内圧室は、大規模なプラントにはあるようですが、中小の工場や事業場が所有する例は少ないようです。
3. ガスの換気と防爆構造の電気機器
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 火災や爆発と防爆電気設備
- 第2回 ガスや粉体の使用と危険な場所
- 第3回 爆発防止の考えと実施
- 第4回 防爆電気機器とガスの危険性
- 第5回 防爆電気機器
- 第6回 粉じんの危険性と粉じん防爆構造