プラスチックの最近の技術動向|エンジニアリングプラスチックの基礎知識2

エンジニアリングプラスチックの基礎知識識
著者:安田ポリマーリサーチ研究所 所長 安田 武夫

前回は、エンプラの定義、汎用エンプラやスーパーエンプラの特徴を解説しました。今回は、最近のエンプラ技術動向について解説します。プラスチック関連技術は、材料開発、成形加工などに分けられます(表1)。本稿では、材料開発技術を中心に取り上げます。

最近の注目すべきプラスチック関連技術
表1:最近の注目すべきプラスチック関連技術

第2回「プラスチックの最近の技術動向」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 新規ポリマーの開発

近年、コストパフォーマンスに優れた新規ポリマーの開発は少なくなりました。しかし、その開発努力は継続されています。以下に、エンプラ系の新規ポリマーを紹介します。

ポリスチレン系ポリマー:シンジオタクチックポリスチレン
出光興産が開発したシンジオタクチックポリスチレンは、メタロセン触媒を使用して合成され、シンジオタクチック構造の立体規則性を持ちます。一般のPS(ポリスチレン)が非晶性であるのに対して、シンジオタクチックポリスチレンは結晶性を持ちます。また、従来のPS(ポリスチレン)の特徴である、低比重、耐加水分解性、良成形性、良電気特性に加えて、結晶性樹脂の特徴である、耐熱性、耐薬品性などを併せ持ちます。

PA(ポリアミド)系ポリマー:高耐熱PA(ポリアミド)、バイオPA(ポリアミド)など
PA(ポリアミド)は原料を変えることにより種々のポリマーが得られます。最近開発された代表的なPA(ポリアミド)には融点が300℃前後の高耐熱PA(ポリアミド)があり、PA6T(ポリアミド6T)、PA46(ポリアミド46)、PA9T(ポリアミド9T)などが挙げられます。環境にやさしい、植物原料使用のバイオPA(ポリアミド)としては、高耐熱性のPA10T(ポリアミド10T)や、柔軟性に優れたPA1010(ポリアミド1010)、PA1012(ポリアミド1012)が開発されています。さらに、PA(ポリアミド)系熱可塑性エラストマーも開発されています。

ポリエステル系ポリマー:LCP(液晶ポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PAR(ポリアリレート)など
ポリエステルも原料を変えることにより、さまざまな種類のポリマーが得られます。最近開発された代表的なポリエステルは、汎用エンプラのPET(ポリエチレンテレフタレート)に比べて耐熱性、耐加水分解性、ガスバリア性、強度(特に薄肉部)に優れたPEN(ポリエチレンナフタレート)、バイオポリエステルのPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、ユニークな性質を持つLCP(液晶ポリマー)、および従来のPAR(ポリアリレート)の耐熱性をさらに高めた新規PAR(ポリアリレート)などがあります。

その他、PI(ポリイミド)系ポリマー、PSU(ポリスルフォン)系ポリマーなどのスーパーエンプラでも新規ポリマーの開発は進んでいます。

2. 既存の材料の組み合わせによる材料開発

画期的な新規ポリマーの開発が停滞している一方で、既存材料の組み合わせによる材料開発は盛んに行われています。ポリマーアロイ、複合材、ブレンドの3 つは、「ABC の技術」と呼ばれ、重要な材料開発の手段とされています。

・ポリマーアロイ(Polymer Alloy) :ポリマー同士の組み合わせによる材料開発
・複合材(Composite) :ポリマーと強化材(ガラス繊維GF、炭素繊維CF など)、無機フィラーとの組み合わせによる材料開発
・ブレンド(Blend) :ブレンド技術を駆使した材料開発

ポリマーアロイ
単一のポリマーでは材料としての要求を満たさない場合、性質の異なる複数のポリマーを組み合わせて、目的の材料を得る方法です。目的に合致するポリマーアロイを開発するには、組み合わせ、添加剤、混練方法など多くのノウハウが必要です。以下に、代表的なエンプラ系のポリマーアロイの特徴と用途を示します(表2)。

代表的なエンプラ系ポリマーアロイの特徴と用途
表2:代表的なエンプラ系ポリマーアロイの特徴と用途

強化系複合材料(Composite)
ポリマーと強化材、無機フィラー(複合化素材)の組み合わせによる材料開発の手法です。エンプラの主な用途先である自動車分野において軽量化は永遠のテーマとされ、プラスチックで金属を代替する検討が盛んに行なわれています。一般的にプラスチックは金属と比べて、機械的強度(特に剛性)が小さい、線膨張係数が大きく、寸法安定性が悪いという問題がありました。しかし複合化技術により、強度・剛性、寸法安定性などが改善され、短期耐熱性の尺度である荷重たわみ温度も向上しました。また、複合化素材の材質次第では、その他の物性改良も可能になります。以下に、エンプラの複合化により付与される機能と複合化素材の例を示します(表3)。最近話題の強化系複合材料については、表1 の複合材料の項目を参照してください。

プラスチックの複合化により付与される機能と複合化素材(充填剤)
表3:プラスチックの複合化により付与される機能と複合化素材(充填剤)

エンプラの新規グレード
エンプラの各種分野における用途開発を行う場合、材料メーカーは、ユーザーから提出されたさまざまな要求に合致するグレード(銘柄)を開発します。以下に、各種の材料共通、およびそれぞれのエンプラ固有の新規グレードを示します(表4)。

エンプラの代表的な新規開発グレード
表4:エンプラの代表的な新規開発グレード

各種材料共通の新規グレードには、導電性グレード、高熱伝導性グレード、炭素繊維強化グレード、長繊維強化グレードなどがあります。エンプラ固有の新規グレードは、各エンプラが重視する市場で、新しい課題に対応する意図が強く出ています。

3. 成形加工技術、その他の技術

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全8回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 エンプラの種類と特徴
  • 第2回 プラスチックの最近の技術動向
  • 第3回 PC(ポリカーボネート)とm-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)
  • 第4回 PA(ポリアミド)の種類と用途
  • 第5回 POM(ポリアセタール)とPBT(ポリブチレンテレフタレート)
  • 第6回 FR(フッ素樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)、PAR(ポリアリレート)
  • 第7回 PSU(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
  • 第8回 PEI(ポリエーテルイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、TPI(熱可塑性ポリイミド)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)

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