製造物責任とは|技術者倫理の基礎知識4

技術者倫理の基礎知識
著者:東京農工大学大学院 工学府産業技術専攻 教授 北原 義典

前回は、科学技術の信頼性に関わる存在の研究者・開発者が身に付けるべき研究倫理について解説しました。今回は、製造物責任について説明します。消費者が製品を本来とは異なった使い方をして事故が起きた場合、製造者に責任はあるのでしょうか? 一緒に考えていきましょう。

第4回「製造物責任とは」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 作る側の責任と使う側の責任

技術者・研究者には、一般人の安全を守る社会的責任があります。自分たちの開発した製品が、消費者の安全を脅かすことのないように、製品の提供側は、徹底したリスク低減策を講じなければなりません。このリスク低減策は製造者の責任になりますが、使用者にも正しい使い方をするというリスク低減の責任があります(図1)。

製造者と使用者のリスク低減対策
図1:製造者と使用者のリスク低減対策

製造者の責任による対策では、まず、本質的な安全設計によるリスク低減を行い、根本的に危険を回避するよう努めます。本質的安全設計とは、危険源を除去する、危険源がリスクになる確率を最小にする、使用者が危険源にさらされる機会を制限するなど、危険を根本から回避する設計を行うことです。

危険源はハザードとも呼ばれます。本質的な安全設計を施しても、なおリスクが残っている場合、ハザードへの防護機構や安全装置の追加によって、リスクの低減を図ります。具体的には回転・振動部分、鋭利な部分などにカバーを付けて使用者が直接触れられないようにする、電流が過剰になった場合にはヒューズで遮断するなどの機構です。

このような対策をしても、まだリスクが残る場合には、使用上の注意や危険性などの情報を使用者に提供し、安全を確保しなければなりません。危険な使用方法を製品本体の表示や取扱説明書で伝えるなどして、使用者側の注意を喚起するのです。家庭用漂白剤のボトルに、目立つように記載されている「まぜるな危険」の警告文は、この注意喚起に当たります。また、機器が危険な状態に移行しつつある場合に、警告マークや警告音などでリアルタイムに伝える方法もあります。もちろん使う側は、こうした表示や警告に注意を払い、内容に従わなければなりません。このように、作る側と使う側双方が、徹底してリスクを低減する努力を払わなければ、安全は築けないのです。

2. ハザードとリスク

リスクとは、損害あるいは損失が発生する可能性のことです。さらに、リスクの原因となるものを、ハザードと呼びます。ハザードは、損害や損失を発生させるもの、行為、事象のことで、危険源ともいえます。

扇風機の羽根を例に、考えてみましょう(図2)。扇風機の羽根は、回転によって使用者に危害を及ぼすことがある部品なので、ハザードといえます。このハザードがむき出しになっていれば、使用者がけがを負うリスクは高くなります。粗い格子のカバーを取り付ければ、リスクはやや低下します。もっと細かい網目のカバーを付ければ、リスクは大幅に低下します。最近、普及している羽根なしの送風機であれば、リスクは極めて小さくなります。もちろん、こうした製品でも絶対にけがをしないという保証はないので、リスクがゼロとは言い切れません。

扇風機のハザードとリスク
図2:扇風機のハザードとリスク

東京都が、震度6 強の地震が起こった場合、倒壊のリスクがある建物を2018 年3 月に公表し、大きな波紋を呼びました。これもあくまでも倒壊の可能性(リスク)があるということで、必ず倒壊するわけではありません。この場合のハザードは、揺れや地盤沈下、土壌の液状化、津波などです。

3. 消費者を守る製造物責任法

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全8回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 技術者倫理とは?
  • 第2回 説明責任とは
  • 第3回 研究倫理とは
  • 第4回 製造物責任とは
  • 第5回 内部告発とは
  • 第6回 新技術と倫理
  • 第7回 知的財産の保護と営業秘密
  • 第8回 環境保全と倫理

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