前回は、土木計画がマクロ経済にもたらす3つの効果(ストック効果・フロー効果・財政効果)を解説しました。巨大なインフラを作る土木計画は、調達する財源やプロジェクトの規模からしても、そのインフラのインパクトからしても、極めて広域的、長期的、総合的なものであり、必然的に政治のプロセスと密接でかつ不可分に関わってきます。今回は、そうした土木計画の政治の側面を取り上げます。
第5回「インフラを巡るマクロ経済学的政策論~PI(パブリックインボルブメント)と合意の形成~」を解説していきます。
1. 政治によって推進されるインフラ政策
巨大なインフラを作る土木計画は、調達する財源やプロジェクトの規模、さらにそのインフラのインパクトからしても、極めて広域的、長期的、総合的なものです。そのため、必然的にその実施主体は、個人や民間企業ではなく、知事や市長、総理大臣、および彼らを中心とする政治的組織となります。つまり、地方レベルにおいては地方自治体が、全国レベルにおいては中央政府(内閣)といった行政組織が、その推進主体になるということです。もちろん、大きな電力会社やバス会社、鉄道会社などが、鉄道やダムなどの基礎インフラを作るというケースもあるものの、インフラと呼ばれるものの8 ~ 9割程度が、行政組織によって公共事業として進められています。
従って、その予算は議会(市議会、県議会、国会など)で審議・決定されるとともに、インフラの整備プロジェクトや維持管理の責任は、市長・知事・大臣(国交&総理)などが負うことになります。つまり、公共的な土木プロジェクトは基本的に、国家権力の一翼を担う行政権という国家権力により進められていきます。
2. 公衆の適切な関与の重要性
このように、インフラ政策は国防や防犯、教育といったさまざまな項目と同様に、政治項目の一つとして推進されるものです。なおかつ、さまざまな行政の中でも、とりわけ地域性を加味することが重要な行政であって、国民がその行政判断に何らかの形で関与することが重要になります。なぜなら、道路の整備にせよ、まち作りにせよ、全てのインフラは当該地域の環境の構造そのものを編さんするものであって、全国一律の税制やシステムを作るものとは別であるためです。そうした、地域環境の編さんについての行政を行う場合、当該の地域環境についての文化的、社会的、歴史的な知識、すなわちローカルナレッジが極めて重要な意味を持ちます。
そうしたローカルナレッジを最も豊富に持っているのは、地域の住民に他なりません。従って、インフラ政策は常に当該インフラの地域におけるローカルナレッジを、過不足なく反映しながら進めていくことが求められ、地域住民に何らかの関与を要請することが必要となっています。ここに、土木計画がいかにして公衆と関わるべきなのかという、政治的な問題を考えなければならない根源的な理由があります。
3. 公衆関与におけるメリットとデメリット
4. 公衆関与の最大デメリット・多数者の専制
5. パブリックインボルブメント(PI)とは
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 土木計画学とはインフラ政策学である
- 第2回 土木計画学(=インフラ政策学)における最適化の思想
- 第3回 ルールベースの決定と予測ベースの費用便益分析
- 第4回 インフラを巡るマクロ経済学的政策論~フロー効果・ストック効果・財政効果~
- 第5回 インフラを巡るマクロ経済学的政策論~PI(パブリックインボルブメント)と合意の形成~
- 第6回 インフラを巡る社会学的政策論~社会有機体説とまちづくり・くにづくり論~