前回は、EMC試験の規格を解説しました。今回は最終回です。放射エミッション試験の方法と簡易測定を取り上げます。放射エミッション試験は、電気・電子機器から空間中に放射される電磁ノイズを測定する試験です。この試験は電波暗室で行うため、実施が容易ではありません。EMC対策としては、近傍界測定と呼ばれる簡易測定が用いられることがあります。
第7回「放射エミッション試験と簡易測定」を解説していきます。
第7回もくじ
1. 放射エミッションの試験方法
放射エミッションは、電気・電子機器の筐体やケーブルから空間に放射される電磁ノイズで、特徴は比較的高周波(多くの規格では30MHz以上)ということです。放射エミッション試験では、電気・電子機器から放射される電磁ノイズを、周波数ごとに、アンテナを変えて測定します。
・供試装置の構成
放射エミッション試験では、電気・電子機器の構成や動作により、結果が大きく変わる可能性があります。そのため、規格により供試装置(試験対象となる装置)の構成や、配置、動作などが細かく指定されています。さまざまな機器を接続して使用するデスクトップPCを例に、放射エミッションの測定方法を紹介します(図1)。
試験方法は、情報通信機器の自主規制であるVCCI協会(情報処理装置等電波妨害自主規制協議会)のCISPR22に準拠した技術基準にのっとります。VCCIの技術基準では、供試装置の構成が指定されています。PCの構成に必要な部分をのみを紹介します。
「代表的な使用例に従って供試装置を構成し、組み合わせ、配置して動作させること」:PCは、ディスプレイやキーボード、マウスなどの周辺装置と組み合わせて使用します。試験時も同様の組み合わせにする必要があります。
「供試装置のインターフェースポートの各々のタイプごとに最低1つのインターフェースケーブル・疑似負荷・装置を接続しておくこと。装置の実際の代表的な使用法に従って、各ケーブルは終端すること」:PCには一般的に、USBポートやLANポート、ディスプレイポート、HDMIポート、マイク・イヤホンポートなど、複数のポートがあります。これらのポートには、実際の代表的な使用法に従い、ケーブルを接続、または終端し、試験を実施する必要があります。例えば、USBポートには外付けHDDドライブやUSBメモリ、LANポートにはルーターやハブなどを接続して通信します。同じポートが複数ある場合は、全てのポートにケーブルと終端を接続し、最大ノイズを測定します。ただし、ケーブルを順次追加し、ノイズの大きさの増分が2dB以上とならない本数で試験することも可能です。
このように、複数の電気・電子機器を組み合わせて動作させる製品は、組み合わせた状態でノイズ測定を行います。逆に、試験対象が、マウスやキーボードのようにPCに接続して使う製品の場合は、PCが周辺装置となり、組み合わせた状態で試験を行います。周辺装置から放射される電磁ノイズも一緒に測定することになるため、周辺装置の選定には注意が必要です。
なお、放射エミッション測定では、供試装置のケーブルなどがアンテナとなり電磁ノイズが放射されるため、供試装置の配置方法やケーブルの接続方法が詳細に決められています。VCCIの技術基準では、装置を床置き、または卓上で使用するかによって区別します。例えばPCのような卓上型装置の場合、供試装置や周辺装置を構成する各電気・電子機器は、0.1mの間隔を持たせて、テーブルの背面に沿って配置します。また、それらの装置間がケーブルで接続されている場合は、テーブルの背面に垂れ下げます。垂れ下げたケーブルの高さは床面から0.4mとし、ケーブルが床面に0.4mより近付く場合は、ケーブルの余長を中心付近で0.4m以内に束ねます。
・放射エミッション試験
放射エミッション試験は、電波暗室で実施します。EMCの測定で用いる電波暗室は、床面が金属大地面、天井と横壁面は吸収体が設けられた5面電波暗室です(図2)。1GHzまでの放射エミッションの測定では、供試装置からアンテナに直接伝搬する直接波と、床面で反射する反射波の合成波を測定します。
供試装置を写真奥のテーブルに配置し、そこから放射される電磁ノイズを、手前のアンテナで測定します。その際、奥のテーブル上に載せたターンテーブルを回転させ、アンテナの高さを1~4mに変化させて、電磁ノイズの最大値を測定します。また、供試装置からアンテナまでの距離によって、3m法電波暗室、10m法電波暗室などと呼ばれます。
2. 放射エミッションの簡易測定
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 EMCとは?
- 第2回 エミッションとは?
- 第3回 イミュニティとは?
- 第4回 エミッション対策
- 第5回 EMC試験の要求
- 第6回 EMC規格の種類
- 第7回 放射エミッション試験と簡易測定