前回は、日本、アメリカ、ヨーロッパの代表的なEMC試験に対する要求を紹介しました。今回は、EMCの規格の種類を説明します。EMCの試験には、エミッション、イミュニティともに、多くの種類があります。試験の対象となる電気・電子機器も多種多様で、どの試験をどのレベルで適用するか決めるには、EMCの規格を参照します。EMCの規格には、試験の対象となる製品や試験方法が定められています。
第6回「EMC規格の種類」を解説していきます。
第6回もくじ
1. 制定者別のEMC規格の種類
EMCの関連規格には、国際規格、地域規格、国家規格、団体規格などがあります。表1に、代表的なEMCの規格を示します。
・国際規格
EMCの国際規格の多くは、国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)の専門委員会TC77と、国際無線障害特別委員会(CISPR:仏語でComité International Spécial des Perturbations Radioélectriques、英語ではInternational Special Committee on Radio Interference)が制定しています。規格の名称には、制定した各機関の略称(IEC、またはCISPR)が付けられます(例:IEC61000-4-2、CISPR11)。
・地域規格・国家規格
地域規格・国家規格は、欧州(EU)などの地域や、日本などの国が、国際規格を参照して制定した規格です。EN規格、JIS、IEC-J規格などがあります(例:EN 55011、JIS C 61000-4-2、J55011)。
EN規格は、欧州が国際規格を参照して制定された地域規格です。CEマーキング取得時に、EC指令を満たしているかを確認するための整合規格として利用されます。
日本の国家規格には、JIS(日本工業規格)の一部や、IEC-J規格があります。IEC-J規格は、国際規格(IEC規格)に準拠しつつ、日本独自の考え方を追加したものです。電気用品安全法の技術基準となります。電気用品安全法は、日本独自の技術基準と、国際規格に準拠した(IEC-J規格に基づいた)技術基準に大別できます。日本独自の技術基準は、電気用品安全法の別表第1~11に記載されています。別表第10雑音の強さは、日本独自の技術基準です。一方、IEC-J規格に基づいた技術基準は、別表第12国際規格等に準拠した基準に記載されています。また、EMC関連では少ないものの、IEC-J 規格の本文の多くは、国際規格に準拠したJISになっています。
アメリカにおけるEMCの規格には、FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)が発行しているCFR47のPart15やPart18などがあります。ただし、これらは共通の事項はありますが、国際規格には準じていません。
IEC-J規格、およびJISは、国際規格を参照している規格です。ただし、完全に一致しているわけではなく、その点で注意が必要です。代表的な例に、EMCの高調波電流発生限度値を規定したIEC61000-3-2と、JIS C 61000-3-2があります。IECの対象範囲は、1相当たり16A以下の商用電源系統に接続している電気・電子機器です。220V以下の電気・電子機器に対する限度値は考慮されていません。これに対しJISは、電圧300V以下の商用電源系統に接続される、1相当たり20A以下の電気・電子機器が対象となります。
また、クラスA機器の限度値も、JISでは220V以下に対応するため、表2のようにIECの限度値に対して230/V nom 倍と変更しています。これほど大きな違いがある規格は少ないものの、完全に一致した規格でないことを認識しておく必要があります。
・団体規格
団体規格は、特定の団体によって定められた規格です。日本の代表的な団体規格には、VCCI協会(情報処理装置等電波妨害自主規制協議会)が定めた自主規制があります。VCCIの技術基準は、国際規格であるCISPR32マルチメディア機器の電磁両立性(エミッション要求事項)、およびCISPR22情報技術装置からの妨害波の許容値と測定法を参照して作られています。また、企業が独自の社内基準を設けて試験を実施している場合もあります。
2. EMC規格の分類
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 EMCとは?
- 第2回 エミッションとは?
- 第3回 イミュニティとは?
- 第4回 エミッション対策
- 第5回 EMC試験の要求
- 第6回 EMC規格の種類
- 第7回 放射エミッション試験と簡易測定