地震ハザード評価|地震リスクマネジメントの基礎知識5

地震リスクマネジメントの基礎知識
著者:防衛大学校 システム工学群 建設環境工学科 教授 矢代 晴実

前回は、日本の地震危険について紹介しました。地震リスクマネジメントの最初のステップは、対象地点の地震危険(地震ハザード)を評価することです。日本では、多くの人が地震を経験しています。しかし、被害を伴う大地震を経験した人は多くありません。これは、地震が広域災害であっても一定地域で発生するからです。今回は、対象地点での地震の強さと発生確率を予測する方法を紹介します。

第5回「地震ハザード評価」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 地震ハザード評価とは?

地震ハザードとは、地震による揺れの強さや、発生確率を評価したものです。その地震が建物・企業・社会に与える被害は地震リスクと呼ばれます。地震ハザードと地震リスクは異なります。

地震波の伝わり方を説明します。まず、地震断層で発生した地震波が固い基盤(岩盤)を伝わり、対象地点の真下にある工学的基盤面と呼ばれる地点に到達します。工学的基盤面は、固い基盤と地盤(固い地盤・軟らかい地盤)を工学的に分類した境の面です。そして、工学的基盤面に到達した地震波は、表層地盤に入り増幅されて対象地点に現れます。図 1 に地震波の伝わる様子を示します。地震ハザードの算出では、発生確率と地盤を伝わる間の増幅を考慮して、対象地点の揺れを予測することになります。

地震波の伝わる様子
図1:地震波の伝わる様子(引用:吉川弘道、矢代晴実、福島誠一郎、大峯秀人、都市の地震防災、フォーラムエイトパブリッシング、2013年、P.36)

地震断層の情報は、発生のメカニズムや場所に応じていくつかのタイプ(海溝型、活断層、陸域の浅い地震など)に分類できます。古文書や地質調査などの過去の地震発生情報と合わせ、今後の発生が予想される地震の地震規模(マグニチュード)、発生場所(緯度・経度・深さ)と発生頻度の関係をモデル化することができます。

地震動は伝達距離が長いと減衰する特徴があります。モデル化された地震断層から固い基盤(岩盤)を伝わる際、この特徴を定式化した距離減衰式を適用して、基盤面での地震動の強さを評価することができます。表層地盤において、軟らかい地盤では増幅が大きくなり、固い地盤では増幅が小さくなる性質があります。表層の軟らかい地盤は数十メートルの厚みがあり、地震動を大きく増幅させます。また、表層地盤の増幅は、工学基盤に到達した地震波を倍増させるなどの効果もあります。軟らかい地盤は平野部の河川流域、河口、三角州といった堆積層の地域や埋め立て地に見られます。固い地盤は山間地域や台地などに見られます。

2. 地震ハザード解析とは?

地震ハザード解析(Seismic Hazard Analysis)は、上記の地震波の経路を考え、対象地点での地震揺れの規模と発生頻度(発生確率)を予測するものです。地震危険度解析とも呼ばれ、耐震設計の基本情報でもあります。具体的には、「ある地震の発生確率」に「その地震発生時の対象地点での揺れが、ある大きさを超える確率」を乗じたものを、全ての地震に対してまとめた「地震動の超過確率」を算出します。地震の発生確率と地震動の超過確率は異なります。

確率論的地震動予測は、地震の発生確率と地震動の超過確率から考えます。地震の発生確率は、ある地震がある期間内に発生する確率です。単年度または 30 年や 50 年レベルでの発生確率で示します。地震動の超過確率は、対象地点においてある期間内に 1 回以上、地震動の強さが一定のレベルを超える確率です。例えば「ある地点で、今後 30 年以内に震度 6 弱以上の地震動が生じる確率」などです。地震動の超過確率は、「今後 30 年以内で地震が発生するという確率」と「地震が起きたときに、ある地点で震度 6 弱以上の地震動が生じる確率」の掛け算で算出します。

3. 地震ハザード曲線とは?

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全8回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 自然災害リスクとは?
  • 第2回 リスクの定量化と確率
  • 第3回 リスクマネジメントの方法
  • 第4回 日本の地震危険度
  • 第5回 地震ハザード評価
  • 第6回 地震リスクの定量化
  • 第7回 地震のリスクコントロール
  • 第8回 地震のリスクファイナンス

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