リスクマネジメントの方法|地震リスクマネジメントの基礎知識3

地震リスクマネジメントの基礎知識
著者:防衛大学校 システム工学群 建設環境工学科 教授 矢代 晴実

前回までは、確率を含めたリスクの概念と、工学的にリスクを取り扱う場合の定量化を紹介しました。今回は、リスクマネジメントの方法を紹介します。

第3回「リスクマネジメントの方法」を解説していきます。

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1. リスクマネジメントとは?

リスクマネジメントとは、リスクを全て把握し、重要なリスクについて対応策を講じることです。リスクを確率と影響度で可視化するだけでは、リスクは管理できません。洗い出されたリスクに対して、その対応を意思決定し、継続的にリスクを小さくします。

ISO Guide 73:2009リスクマネジメント用語では、リスクマネジメントを「リスクに つ いて、組 織 を 指 揮 統 制 するた め の 調 整 され た 活 動:Coordinated activities to direct and control an organization with regard torisk」と定義しています。これは、伝統的な防災や安全衛生のような限定された活動ではなく、経営目的を達成するための活動に位置付けられています。リスクマネジメントのプロセスを図 1 に示します。

リスクマネジメントのプロセス
図1:リスクマネジメントのプロセス

このプロセスのうち、最初に実施するのは「置かれている状況の確定」です。これは、解決すべき目標設定を含む、課題の定義です。解決すべき課題、業務の目的、目指すべき目標、適用範囲、課題検討時の外部の条件、組織内部の条件などを確認、認識します。実際には、まずリスクマネジメントの目的を、最初に確認することが重要です。例えば、企業のリスクマネジメントでは、発生するリスクによる損失や被害を、最小限になるようにします。究極の目標は企業の倒産防止です。それを阻む課題の 1 つとして、地震リスクが洗い出されるのです。

次のステップは、「リスクの明確化」、「リスク分析」、「リスク評価」の 3つです。この 3 つは、「リスクアセスメント」として区分されます。リスクの特定は、頻度と影響度の観点で、目標に対する無視できない阻害要因リスクを特定するステップです。ここで、多くの日本企業は、地震リスクをリスク管理すべき対象として洗い出します。

地震リスクといっても、人命に関するリスクなのか、経済的な損失についてのリスクなのか、津波まで含めるのか、あるいは地震による二次影響も含むのかなどさまざまです。その影響度や確率を評価しなければ、合理的に対応方針を判断することはできません。「リスク分析」を行うことにより、地震リスクの合理的な意思決定で、確率的なリスク分析が有効となります。「リスク分析」の結果、そのリスクを許容できるか否かを判断するステップが「リスク評価」です。

2. リスクへの対応方法

「リスクの明確化」「リスク分析」「リスク評価」と、一連の「リスクアセスメント」を実施した後は、「リスク対応」を行います。リスク対応として、ISO 31000:2009 リスクマネジメント 原則及び指針では、7 ステップのフローが示されています。

1. リスクを生じさせる活動を開始または継続しないことと決定し、リスクを回避する
2. ある機会を追求するために、そのリスクを取るまたは増加させる
3. リスク源を除去する
4. 起こりやすさを変える
5. 結果を変える
6. 他者とリスクを共有する(契約およびリスクファイナンスを含む)
7. 情報に基づいた意思決定によって、そのリスクを保有する


地震リスク対応では、地震の発生自体を抑制することはできません。そのため、図 2 に示すような、物理的なリスク低減対策(リスクコントロール)および、地震保険などの経済的なリスク軽減(リスクファイナンス)が選択できる対応策となります。

地震リスク対応の選択肢
図2:地震リスク対応の選択肢

3. 地震リスクマネジメントとは?

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全8回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 自然災害リスクとは?
  • 第2回 リスクの定量化と確率
  • 第3回 リスクマネジメントの方法
  • 第4回 日本の地震危険度
  • 第5回 地震ハザード評価
  • 第6回 地震リスクの定量化
  • 第7回 地震のリスクコントロール
  • 第8回 地震のリスクファイナンス

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