前回は、リスクの認識と、われわれを取り巻くリスクについて解説しました。工学的にリスクを取り扱う場合、リスクを定量化して、対応策を考える必要があります。今回は、リスクの定量化に必要な確率とリスクの考え方を説明します。
第2回「リスクの定量化と確率」を解説していきます。
第2回もくじ
1. リスクを定量化するには?
前回解説したように、私たちの回りには、さまざまなリスクがあります。これらリスクは、将来確実に発生するかしないかの判断はできません。このように、確実に発生するかしないかの間には、必ず図 1 に示すようなグレーゾーンがあります。
このグレーゾーンが、リスクを表しています。このグレーゾーンがない場合は、確実に発生するかしないかのどちらかです。リスクマネジメントでは、リスクが発生しないところから、リスクが発生するところまでの、グレーゾーンでマネジメントを実施することになります。
地震リスクの場合、過去の地震発生は、古文書や地質調査に基づくデータ整備、阪神大震災以降に充実した地震計による地震観測網など、観測記録は多く蓄積されています。よって、中小規模の地震発生では、ある程度の統計的な傾向分析が可能です。しかし、過去に発生したことがないマグニチュード 9 のような巨大地震では、統計分析は不可能です。しかし、理学的な知見に基づき、過去の統計情報の少なさを補完して、その発生確率が推測されています。
地震による被害も、確率的に定量評価することが可能です。地震の規模や発生場所から、各地点で想定される地震動の強さは、統計的に算出可能です。また、建物の耐震性の違いにより、同じ地震動の強さでも倒壊率に差があることは、過去の地震被害から明らかです。地震によって倒壊した建物による被害などのリスクは、一定の推定誤差に基づいて、確率的に定量評価することが可能です。
このように、現実的に発生する可能性のある現象を、数値計算や数式を使って表すことを、モデリングと呼びます。モデリングすることにより、必ずしも統計情報が十分でない事象でも、その発生を確率的に記述することが可能となります。モデリングによるリスクの科学的な定量評価は、確率と影響度の組み合わせのようなリスクの定義により意思決定する場合には、有効な手法です。
2. リスクの確率論的表現
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 自然災害リスクとは?
- 第2回 リスクの定量化と確率
- 第3回 リスクマネジメントの方法
- 第4回 日本の地震危険度
- 第5回 地震ハザード評価
- 第6回 地震リスクの定量化
- 第7回 地震のリスクコントロール
- 第8回 地震のリスクファイナンス