前回は、DXの定義と進展の経緯、従来のIT投資との違い、また、DXの取り組みの必要性について説明しました。DXは、イノベーションに関わる取り組みとして重要であることを理解できたと思います。今回は、改めて、イノベーションの観点からDXの整理と分類を行い、その内容について解説します。
第2回「イノベーションとしてのDXとその分類」を解説していきます。
1. デジタルイノベーションとしてのDX
イノベーションの観点では、DXはどのように位置付けられるでしょうか。結論からいうと、DXは、デジタルイノベーションのほぼ主要な部分に相当する概念であるといえます。
イノベーションは、経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが「経済発展の理論」(1912年、1926年改訂)において編み出した概念です。同氏の定義によると、イノベーションとは、「新結合」による付加価値の創出活動を意味します。ここでの新結合には、新商品やサービスの開発だけでなく、新ビジネスプロセスの導入なども含みます。
その上で、デジタルイノベーションとは、デジタル技術を利用したイノベーションを指します。一方、DXは、前回説明したとおり、デジタル技術を利用した、製品やサービス、ビジネスモデルの改革を行うものです。ビジネスモデルの変革につながるビジネスプロセス全体の改革も含みます。従って、DXとは、デジタルイノベーションの主要な部分であるとともに、広義に解釈すると、デジタルイノベーションとほぼ同義であるといえます。
逆にいうと、デジタル技術を導入するだけのIT投資は、デジタルイノベーションというよりは、単なるデジタル技術の普及過程であると見なされます。また、既存のビジネスプロセスの延長に留(とど)まるIT投資は、DXとは見なされません。本稿ではこれを、DXとの対比で、効率化IT投資と定義します(図1)。
2. デジタルイノベーション・DXとその分類
イノベーションの観点では、DXは、どのように分類されるのでしょうか。前述のヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションに関わる新結合として、5つの類型を示しています。ただし、当時はデジタルが存在しなかった時代なので、この類型は原則として、商品を対象とした定義になっています。この5つの類型を、デジタルイノベーションに延長すると、表1のように整理できます。
このうち、新商品・サービス開発と新市場開拓は、ともに顧客に対して付加価値を提供するビジネスモデルに関わる活動(フロントエンド)です。また、新生産方法と新供給源獲得は、ともに企業内と関係企業におけるビジネスプロセスに関わる活動(バックエンド)です。新組織は、同じ組織内における活動ですが、これは、事業というよりは、むしろ業務に関わるプロセスを対象にする活動(バックエンド)です。
その上で、DXは、デジタルイノベーションのうち、製品・サービスやビジネスモデルの変革を伴うものが中心になります。また、ビジネスプロセス全体の改革を伴うものも含みます。これらを踏まえ、本稿では、DXを以下の3つに分類します。
1:新サービス・市場創出型DX
2:事業プロセス改革型DX
3:組織・業務改革型DX
このうち、DXにおいては、1:新サービス・市場創出型DXがとりわけ重要になります。
3. DXの各分類と企業のITシステムとの関係
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
- 第2回 イノベーションとしてのDXとその分類
- 第3回 新サービス・市場創出型DX
- 第4回 事業プロセス改革型DXと組織・業務改革型DX
- 第5回 DXに向けた企業内組織体制の変革
- 第6回 政府におけるDXの取り組み