ダイカスト金型|ダイカストの基礎知識4

ダイカストの基礎知識
著者:ものつくり大学 技能工芸学部 総合機械学科 教授 西 直美

前回は、ダイカストマシンの構造と原理、種類を解説しました。今回は、ダイカスト用金型の構造と材質、種類を紹介します。ダイカスト金型は、ダイカストの3要素(鋳造合金・ダイカストマシン・金型)の中で最も重要です。金型の損傷は生産性の低下、コスト増につながり、金型の完成度はダイカストの品質に大きな影響を与えます。

第4回「ダイカスト金型の構造と材質」を解説していきます。

基礎知識DL

1. ダイカスト金型の構造と材質

ダイカスト金型には、主に2つの役割があります。1つは、溶融金属への製品形状の付与、すなわち、ダイカスト製品の形状決定です。金型には、製品形状および鋳造方案が彫り込まれていて、金型の寸法精度は、製品の寸法精度を左右します。鋳造方案とは、ゲートからの溶湯(ようとう)の流入やガス抜きなどに関わる設計で、鋳巣や湯回り性の良しあしを左右します。ダイカスト金型のもう1つの役割は、鋳造合金の熱抽出です。金型キャビティに充填された溶湯の顕熱(温度変化に必要な熱)・潜熱(固体から液体など、相変化に必要な熱)を抽出し、冷やして固めます。金型は、溶湯からの熱伝達による厳しい温度条件に耐えて、長い寿命を保持しなければなりません。

ダイカスト金型は、固定型と可動型で構成され、それぞれ固定盤と可動盤に取り付けられています(図1)。また、固定型には、溶湯を金型キャビティに注入するための鋳込み口ブッシュが取り付けられています。可動型は、型締め装置により開閉され、製品を取り出すための押出機構が取り付けられています。

ダイカスト金型の構造(引用:日本ダイカスト協会、ダイカストの標準D1・金型編、2008年、P.4)
図1:ダイカスト金型の構造(引用:日本ダイカスト協会、ダイカストの標準D1・金型編、2008年、P.4)

製品の形状が、金型の移動方向に対して平行に抜けない場合は(アンダーカット形状)、引抜中子が使用されます。引抜中子は、一般的にコアプラー(油圧シリンダ)や傾斜ピンなどで動作させます。図2 に、コアプラーの例を示します。コアプラーは、油圧シリンダで中子を金型の中に出し入れし、ダイカストマシンの油圧回路によって制御されます。

引抜中子を駆動するコアプラー
図2:引抜中子を駆動するコアプラー

ダイカスト金型の内部には、金型の温度を一定に保つための冷却回路、または加熱回路が設けられています。キャビティ内の空気やガスを抜くためのガス抜き装置が設けられる場合もあります。表1に、ダイカスト金型の主要な部品と、その役割、材質を示します。一般的に、固定型および可動型は、入子と主型で構成されています。

金型の主要な部品と役割
表1:金型の主要な部品と役割

入子は、製品となるキャビティを構成するブロックです。固定型および可動型それぞれに入子があります。主型は、直接溶湯が接しないため、S45CからS50Cなどの炭素鋼や、SC450からSC480などの鋳鋼、FCD450からFCD600などの鋳鉄が用いられます。これに対し、入子、引抜中子、鋳抜きピンなどは、高温の溶湯に接するため、SKD6やSKD61などの熱間工具鋼が一般的に使用されます。表2にSKD6、SKD61の化学組成を示します。SKD6、SKD61はCr-Mo-V鋼で、両者の違いはバナジウムVの含有量です。SKD6、SKD61にクロムCr、タングステンW、モリブデンMo、バナジウムV、コバルトCoなどを調整添加した改良特殊鋼も使用されます。

SKD6、SKD61の化学組成(JIS G 4404合金工具鋼鋼材から抜粋)
表2:SKD6、SKD61の化学組成(JIS G 4404合金工具鋼鋼材から抜粋)

入子、引抜中子、鋳抜きピンは、熱処理や表面処理を行うことで寿命を延ばすことができます。熱処理には、焼入れ・焼戻し処理が行われ、硬度の高いマルテンサイト組織に粘さを与えます。表面処理には、拡散法、コーティングのほか、窒化処理があります。窒化処理は、ダイカスト金型によく行われる表面処理法で、金型表面に窒素を拡散浸透することで、硬化層を生成する方法です。処理温度が500~ 600℃と低いため、ひずみや変形が少ない特徴があります。

ダイベースにはS35C、S40C、S45Cなどの一般構造用圧延鋼が、ガイドピン、ガイドピンブッシュはSKS2、SKS3の合金工具鋼や、SUJ2などの軸受け鋼が用いられます。これらには、市販されている標準部品があります。

押出ピンは入子と同様に、溶湯に直接触れるため、SKD6、SKD61あるいはSKS2、SKS3の合金工具鋼や、SKH2などの高速度工具鋼が用いられます。押出板には、S55C、SS330などの一般構造用圧延鋼や、機械構造用炭素鋼が用いられます。押出ピンを元の位置に戻すリターンピンは溶湯には触れないため、KS120などの炭素工具鋼やSKS2、SKS3などの合金工具鋼などが用いられます。熱抽出の機能を果たす冷却穴や冷却管は、直接溶湯と接するため、SKD6、SKD61が用いられます。

2. ダイカスト金型の種類

続きは資料をダウンロードしてご覧ください!

全10回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 ダイカストとは?
  • 第2回 ダイカスト合金の種類と特徴
  • 第3回 ダイカストマシンの構造
  • 第4回 ダイカスト金型
  • 第5回 ダイカストの製品設計
  • 第6回 ダイカストの鋳造方案設計
  • 第7回 ダイカスト金型の設計
  • 第8回 ダイカストの鋳造工程
  • 第9回 ダイカストの品質と欠陥
  • 第10回 特殊ダイカスト技術

基礎知識DL

  • 資料ダウンロード

    これさえ読めば簡単に利用できる
    「3分でわかるイプロス無料出展会員」

  • 無料掲載

    イプロスで製品・サービスをPR
    無料掲載のお申し込みはこちらから