直交配列表実験の解析|実験計画法の基礎知識7

実験計画法の基礎知識
著者:大阪大学 大学院 情報科学研究科 教授 森田 浩

前回は、2水準系直交配列表を用いた実験の計画を紹介しました。今回は、そこで得られたデータの解析方法を解説します。まず、取り上げた要因の中から効果のある要因を特定し、それらの最適水準を決定します。次に、そのときの母平均の推定やデータの予測をします。多くの因子を取り上げているものの、基本的な考え方は二元配置法における推定と予測と同じです。

第7回「直交配列表実験の解析」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 要因効果の解析

前回、4つの因子A、B、C、Dを取り上げ、交互作用A×B、B×Cを考慮する実験を計画しました。因子Aを第3列、因子Bを第5列、因子Cを第1列、因子Dを第2列に割り付け、交互作用A×Bは第6列、交互作用B×Cは第4列に現れます。そのときの観測データを表1に示します。

因子の割り付けとデータ
表1:因子の割り付けとデータ

列ごとに平方和を計算します。各列には、第1水準のデータが4つ、第2水準のデータが4つあるので、一元配置実験と同じ方法で平方和を計算します。第1水準の合計をT 1 、第2水準の合計をT 2 とすると、平方和の定義式から、以下のように計算できます。

つまり、第1水準と第2水準の差を2乗して、データ数で割ります。要因の平方和は、割り付けた列の平方和となります。要因が割り付けられていない列の平方和は、誤差平方和となります。誤差列が複数あれば、それらの合計が誤差平方和となります。表1では、列平方和を計算しています。

各列には2つの水準があります。そのため、平方和の自由度は1です。これが対応する要因の自由度になります。誤差自由度は、誤差列の自由度の合計です。以上をまとめると、表2の分散分析表ができます。

分散分析表
表2:分散分析表

どの要因も有意にはなりません。しかし、どれも要因効果がないというわけではありません。直交配列表実験では実験回数を絞っているため、誤差の自由度が小さくなり、要因効果の検出力が小さくなってしまいます。そこで、要因効果がないと考えられる要因は誤差と見なして、これらを誤差に合算することで誤差の自由度を高めます。これをプーリングといいます。

プーリングする要因の目安は、F値が2以下、あるいはP値が20%以上の要因とします。ただし、交互作用をプーリングしないときは、その主効果は有意でなくてもプーリングしません。数値例では、主効果B、Dと交互作用B×CはF値も小さいので、プーリングの対象となります。交互作用A×Bが存在しているため、主効果Bはプーリングしません。表3に、プーリング後の分散分析表を示します。主効果A、B、Cと交互作用A×Bだけを考えることになります。プーリング後の分散分析で重要なのは、誤差分散の大きさです。これを用いて、推定や予測が行われます。

プーリング後の分散分析表
表3:プーリング後の分散分析表

2. 最適水準における推定と予測

まず、因子A、B、Cについて最適水準を決めます。このとき、因子Aと因子Bには交互作用があるため、ABの水準組み合わせで決めます。因子Cは他の因子との交互作用がないので、単独で決めます。ABの水準組み合わせの中で最も高くなるのは、A 2 B 1 水準です。CはC 2 水準の方が高くなります。従って、最適水準はA 2 B 1 C 2 となります。

次に、最適水準における母平均を推定します。最適水準の母平均には、主効果a 2 、b 1 、c 2 と、交互作用効果(ab) 2 1 があります。点推定値はA 2 B 1 C 2 水準における平均を求めます。このとき、因子Aと因子Bには交互作用があるので、a 2 、b 1 、(ab) 2 1 をまとめて、A 2 B 1 水準における平均μ+a 2 +b 1 +(ab) 2 1 を求めます。因子Cは単独に考えて、C 2 水準における平均μ+c 2 を求めます。このとき、全体平均μが2回現れるのでμを1回引いておきます。点推定値は、以下の式で求められます。

表1のNo.6の実験は、A 2 B 1 C 2 水準で行われています。しかし、そのときのデータ53を使うのではありません。また、全ての水準組み合わせで実験を行っているわけではないので、得られた最適水準のデータがあるとは限りません。

区間推定の区間幅は、二元配置法と同じ考え方から求められます。

有効繰り返し数は、点推定値を用いた式から田口の式で求めるとよいでしょう。

計算結果は上式のようになるので、信頼区間は52.5±6.2、すなわち46.3から58.7となります。

予測区間の区間幅は、以下のようになります。


よって、予測区間は52.5±9.9、すなわち42.6から62.3となります。

直交配列表実験の計算は、Excelの分析ツールには用意されていません。これまでに説明した計算をシートに入力していきます(図1)。まず、直交配列表をB2:H9に入れ、I2:I9にデータを入力して、I10に合計を計算しておきます。1行には、割り付けた要因を記入しておきます。列ごとに第1水準の和と第2水準の和を求め、平方和を計算します。第1列については

[B10] =$I$10-B11
[B11] =SUMPRODUCT(B2:B9,$I$2:$I$9)-$I$10
[B12] =(B10-B11)^2/8

で計算できます。これをC列からH列にコピーして、第2列から第7列について計算します。また、K1:M3、およびK5:M7には、AB、およびBCの各水準組み合わせにおける合計を計算して、二元表を作成します。分散分析表はA14:G22にまとめています。A列には要因名を入れ、B列には平方和、C列には自由度を入れます。要因Aについては

[A15] A
[B15] =D15
[C15] 1

として、16行から20行も同様に入力します。22行には合計Tを入力します。

[A22] T
[B22] =SUM(B12:H12)
[C22] 7

21行は誤差Eを入力します。誤差平方和は、総平方和から要因平方和の合計を引いて求めると間違いが少なくなります。

[A21] E
[B22] =B22-SUM(B15:B20)
[C21] =C22-SUM(C15:C20)

D列からG列には、平均平方V、F値、P値、境界値を順に計算していきます。要因Aについては

[D15] =B15/C15
[E15] =D15/$D$21
[F15] =F.DIST.RT(E15,C15,$C$21)
[G15] =F.INV.RT(0.05,B15,$B$21)

として、他の要因については16行から20行にコピーします。

分散分析の結果、主効果Dと交互作用B×Cをプーリングします。プーリング後の分散分析表はI14:O22に作成します。I列には要因名を入れ、J列の平方和はB列を参照します。プーリングする要因の行は、空欄としておくといいでしょう。

[J15] =B15
J16、J17、J19、J22には、J15をコピーします。

プーリング後の誤差平方和は

[J21] =J22-SUM(J15:J20)

として計算します。J列をK列にコピーすると、自由度が計算できます。
次に、平均平方V、F値、P値、境界値を再計算します。

[L15] =J15/K15
[M15] =L15/$L$21
[N15] =F.DIST.RT(M15,K15,$K$21)
[O15] =F.INV.RT(0.05,K15,$K$21)

として、16行、17行、19行にコピーします。

直交配列表実験の計算
図1:直交配列表実験の計算

推定と予測は、図2のシートにあるように数式を入力します。誤差分散と誤差自由度は、プーリング後の分散分析表の値を用いていることに注意してください。

推定と予測の計算
図2:推定と予測の計算

3. L 16 (2 15 )直交配列表実験の解析例

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全8回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 実験計画法とは
  • 第2回 一元配置法
  • 第3回 二元配置法
  • 第4回 交互作用の考え方
  • 第5回 乱塊法
  • 第6回 直交配列表実験の計画
  • 第7回 直交配列表実験の解析
  • 第8回 実験計画法の活用

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