前回は、乱塊法の考え方を紹介しました。多くの因子を取り上げると、水準組み合わせの数は膨大になってきます。直交配列表実験は、一部の水準組み合わせで実験することで、必要な要因効果を検証可能にします。今回は、全ての因子が2水準に設定された、2水準系直交配列表実験の仕組みを説明します。
第6回「直交配列表実験の計画」を解説していきます。
第6回もくじ
1. 部分配置実験の考え方
要因配置実験は、全ての水準組み合わせで実験するのに対し、部分配置実験では、一部の水準組み合わせで実験します。因子が多くなると、水準組み合わせの数も多くなります。例えば、5つの因子をそれぞれ2水準に設定したとき、水準組み合わせの数は2 5 で32通りになります。一方で、5つの因子がある場合、主効果は5つ、ただし、2因子間の交互作用は10通りあります。さらに、3因子間が10個、4因子間が5個、5因子間が1個あるため、合計すると31個になります。従って、少なくとも32回の実験をしないと、全ての要因を検出できません。
しかし、本当に31個全ての要因を調べないといけないのでしょうか?3因子間以上の交互作用は、技術的にも説明しにくく、存在しないと考えることが一般的です。2因子間の交互作用でも、互いに関連がなさそうなものもあります。仮に、2因子間交互作用のうち4つについて検証したいなら、全部で9つの要因を検証すればよいので、少なくとも10回の実験でよいことになります。このように、取り上げる要因を絞ることによって、実験回数を抑えられる可能性が出てきます。
まず、3つの因子A、B、Cで、交互作用は考えない場合で説明します。全て2水準を設定すると、2 3 で8通りの水準組み合わせができます(表1)。
ここで、a 1 というのは、因子Aを第1水準に設定したときに、全体平均μよりどれだけ大きくなるかを表すものです。a 2 は第2水準のときなので、a 1 +a 2 =0となります。
同様に、b 1 +b 2 =0と、c 1 +c 2 =0も成り立ちます。No.1の実験ではA 1 B 1 C 1 水準なので、全体平均μにa 1 、b 1 、c 1 の効果と、誤差ε 1 が加わって観測されると考えます。
A 1 水準の合計とA 2 水準の合計を計算すると、b 1 +b 2 =0、c 1 +c 2 =0なので、以下のようになります。
T(A
1
)=x
1
+x
2
+x
3
+x
4
=4μ+4a
1
+(ε
1
+ε
2
+ε
3
+ε
4
)
T(A
2
)=x
5
+x
6
+x
7
+x
8
=4μ+4a
2
+(ε
5
+ε
6
+ε
7
+ε
8
)
ここで、因子Bと因子Cの効果は消えています。Aの各水準において、BとCの水準が等しく実験されているからです。ここで、Aの水準間の差を取ると、
T(A 1 )-T(A 2 )=4(a 1 -a 2 )+(ε 1 +ε 2 +ε 3 +ε 4 -ε 5 -ε 6 -ε 7 -ε 8 )
となり、Aの効果に誤差が加わったものになっていて、他の因子の効果は影響していません。B 1 水準とB 2 水準、およびC 1 水準とC 2 水準に関しても同様です。
表2に示す4通りの水準組み合わせでも、他の因子の効果は影響していません。
A 1 水準の合計とA 2 水準の合計を計算すると、
T(A
1
)=x
1
+x
2
=2μ+2a
1
+(ε
1
+ε
2
)
T(A
2
)=x
3
+x
4
=2μ+2a
2
+(ε
3
+ε
4
)
となり、因子Bと因子Cの効果は消えています。水準間の差は、
T(A 1 )-T(A 2 )=2(a 1 -a 2 )+(ε 1 +ε 2 -ε 3 -ε 4 )
です。つまり、実験回数は半分になり、Aの効果に誤差が加わったものになっています。
この水準組み合わせは、表1にある8つのうちから4つを選んだものです、ただし、どの4つを選んでもよいわけではありません。Aの効果と他の因子の効果が交絡しないような水準組み合わせを選んでいます。このときに役立つのが、直交配列表です。
2. 直交配列表のしくみ
直交配列表実験は、直交配列表(直交表)を利用して、少ない実験回数で各因子の効果や因子間の交互作用の効果を測定できるようにした方法です。表3は、2水準系の直交配列表の一例です。4行3列の表に、1と2が入っています。各列に注目すると、どの列にも1と2が同数あります。そして、任意の2列には、(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)の4通りの組み合わせが同数あります。
この表は4行3列の2水準系であることから、L 4 (2 3 )と表記されます(図1)。
この表を用いて水準組み合わせを決めるには、各列に因子を割り付けます。表3にあるように、因子Aを第1列、因子Bを第2列、因子Cを第3列に割り付けたとすると、No.1では、各因子はA 1 水準、B 1 水準、C 1 水準で実験を行うことを表しています。このようにして求めた4通りが、表2に示した水準組み合わせです。
直交配列表は、どの列にも1と2が同数あることと、任意の2列にある(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)の組み合わせも同数あることの、2つの性質を満たしています。そのような表の行数は2のべき数、すなわち4、8、16、32、・・・で、列数は3、7、15、31、・・・となります。表3より1つ大きいサイズは、表4のL 8 (2 7 )直交配列表になります。
各列には、割り付けた因子の主効果が現れます。ただし、因子間に交互作用がある場合は、それとは別の列に交互作用が現れます。そのため、例えばAとBの交互作用が現れる列に因子Cを割り付けてしまうと、交互作用と主効果Cが混ざってしまい、それぞれの効果を検証することができなくなります。そのことを、交絡するといいます。交絡を避けるためには、交互作用がどの列に現れるかを知らなければなりません。
・成分記号
直交配列表の各列には、成分と呼ばれる記号がついています。これは交互作用の関係を表すものです。2つの列の交互作用は、それぞれの列の成分を掛け合わせてできる成分の列に現れます。例えば、因子Aを第3列、因子Bを第5列に割り付けたとき、
ab×ac=a 2 bc=bc
となり、交互作用A×Bは第6列に現れます。ここで、a 2 =b 2 =c 2 =1と考えます。
4つの因子A、B、C、Dを取り上げ、交互作用A×B、B×Cを考慮する実験を計画するときは、2つの交互作用と交絡しないように因子を割り付けます。例えば、因子Aを第3列、因子Bを第5列に割り付けると、交互作用A×Bは第6列に現れるため、因子Cはこれら以外の列に割り付けます。
因子Cを第1列に割り付けると、交互作用B×Cは第4列に現れます。因子Dは残っている列のいずれかに割り付ければよいので、第2列に割り付けることにします。4つの因子の割り付けができると、8通りの水準組み合わせが決まります。
直交配列表実験では、全ての交互作用を考えるのではなく、考慮すべき交互作用だけを取り上げます。それらの交互作用が、他の要因と交絡しないように因子の割り付けを考えます。ただし、交互作用の数が多くなると、割り付けは難しくなります。
3. 直交配列表への割り付け
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 実験計画法とは
- 第2回 一元配置法
- 第3回 二元配置法
- 第4回 交互作用の考え方
- 第5回 乱塊法
- 第6回 直交配列表実験の計画
- 第7回 直交配列表実験の解析
- 第8回 実験計画法の活用