ダムの構造|ダムの基礎知識4

ダムの基礎知識
著者:法政大学 デザイン工学部 都市環境デザイン工学科 教授 溝渕 利明

前回は、さまざまなダムの種類を紹介しました。今回は、ダムの構造について解説します。ダムの設計は、転倒しない、滑動しない、水圧で破壊されないという3つの原則に基づいて行われます。また、ダムの型式(フィルダム、コンクリートダム)を選定する条件として、周囲の岩盤の強さや地形が重要になります。建設するダムは、できるだけ少ない堤体積で、貯水量を多く確保できることが理想的です。ダムの建設に使用される材料には、土、土砂、岩石、コンクリート、アスファルト、ゴムなどがあります。

第4回「ダムの構造」を解説していきます。

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1. ダム構造の三原則

ダムはその完成後、上流側の貯水池から大きな水圧を受けることになります。ダムの設計では、この水圧に耐えられる構造にするための検討が、次に示す三原則を基に行われます(図1)。

ダム構造の三原則
図1:ダム構造の三原則

原則1:転倒に関する検討
転倒に関する検討とは、水圧によって、ダムがひっくり返ってしまわないようするための検討です。ダムという巨大な構造物が転倒するわけがない、と思われるかもしれません。しかし、水の力というのは非常に巨大で恐ろしいものです。例えば、土石流などでは何十トンもある巨石が濁流に乗って、まるで小石のように移動してしまうのです。また、津波によって、鉄筋コンクリート製の建物や防潮堤である何千トンもの巨大ケーソンが転倒したり、何百トンもある船が海から数キロ離れたところまで運ばれてしまったりもします。従って、ダムに生じると想定される水圧の計算からダムの形状などを決め、転倒しないような構造に設計するのです。

原則2:滑動に関する検討
滑動に関する検討とは、ダムが水圧で滑り、動き出してしまわないようにするための検討です。ダムと周囲の岩盤の間にせん断力が生じると、ダム自体が動き出して(滑動して)しまい、その結果壊れてしまいます。このため、ダムが動き出さないようにその形状を決め、同時に岩盤と接触している面の強度も、岩盤も含めて十分かどうか確認します。

原則3:圧縮破壊に対する検討
圧縮破壊に対する検討とは、ダム自体が水圧で破壊されない構造とするための検討です。コンクリートダムの場合、コンクリートの強度が水圧に対して十分でないと、ダム自体が水圧で壊れてしまいます。特に、コンクリートダムの場合、コンクリート自体が引張(ひっぱり)に弱いこと、さらに、無筋コンクリートでできている(バットレスダムを除く)ことから、ダムの堤体に引張力が生じないように設計する必要があります。ダムが壊れないよう、十分な強度を確保できるよう設計するとともに、施工中もコンクリートの強度が厳密に保たれているかどうかをチェックします。この他、ダム本体をしっかり支えられる地盤であるのか、水がダムの周囲に浸透し、ダムごと破壊することはないか、などを確認します。

2. ダムの型式と地形

ダム建設場所の選定について、面白い話をある大学教授から聞いたことがあります。その教授いわく、「昔は建設省の○○局にダムの場所を決める達人がいて、ダム建設計画の担当者が予定地付近の地図を持って行くと、しばらく地図を眺めて『ここに造りなさい』と指さし、ダムの建設場所を決めていた」とのことです。

ダムの最大の目的が水をためることであっても、そのためにダム本体を大きくしてしまうと費用もかさみ、建設期間も長くなってしまいます。従って、いかに少ないボリュームでダム本体を建設し、より多くの水を貯水できるかが重要です。そのためには、先ほどの教授の話(事の真偽はいざ知らず)のように、ダム建設場所付近の地図を見て、どこにどれくらいの高さでダムを造ったら、どの領域まで水がたまることになるのかをイメージできる、空間認知能力に長(た)けた人が判断するというのは、あながち間違いではないのかもしれません。その判断にはもちろん、建設場所の地質状況といった情報が必要になります。加えて、その地形が形成された経緯も分かっていれば、ピンポイントで場所を決めることができるかもしれません。

水をためやすい場所が、必ずしもダムを造りやすい場所というわけではありません。日本一の高さを誇る「黒部ダム」の建設場所は、ダム立地に最も適していることが戦前から分かっていたものの、資材の搬入路もなく、膨大な費用がかかるとして建設を断念していました。しかし戦後、関西地域の電力不足解消のため、関西電力が社運を賭けて建設しました。その際、資材などを搬入するためのトンネル工事は難航を極め、その経緯は小説「黒部の太陽」として描かれ、映画化もされました。

ダム建設にとっての理想的な地形は、山中で両側が切り立った険しい崖で、さらに上流に向かうにつれて崖が少しずつなだらかになっていくような場所であるといえます。そこにV字型のダムを造れば、上流側に広がるなだらかな地形に多くの水をためることができます。ダムの建設には、多くの資材と時間、そして費用がかかります。これが、少ない資材で短時間に建設できれば、費用も安く済みます。V字型の渓谷は、両側の崖が硬い岩盤でできているため、アーチ型のコンクリートダムを造るのに適した場所といえます。他のコンクリートダムよりもダム高を高く、しかもコンクリート量を少なくすることができます。

そうでない場所は、周辺の地盤がV字渓谷の岩盤よりも軟らかいので、アーチダムを造るのには適さないものの、重力式ダムやフィルダムを造ることは可能です。下の地盤がそれほど硬くなくても、ダムの底面積を大きくすることで、巨大なダムの重さを支えることができます。さらに、ダムを建設する場所を広くとることができれば、フィルダムのような台形のものでもダムの高さを高くすることができます。対して、海外のように川幅が広く流れが緩やかな場所で水をためようとすれば、日本における堤防のようなダムを造ることになります。それには、膨大な材料と時間と費用が必要になります。

3. ダムに使う材料

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 ダムとは
  • 第2回 ダムの歴史
  • 第3回 ダムの種類
  • 第4回 ダムの構造
  • 第5回 ダムの施工
  • 第6回 これからのダム

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