ダムの種類|ダムの基礎知識3

ダムの基礎知識
著者:法政大学 デザイン工学部 都市環境デザイン工学科 教授 溝渕 利明

前回は、国内外のダムの歴史と、その寿命について説明しました。今回は、ダムの種類を解説します。ダムの区分は多くの場合、使用材料や型式で大別されます。使用材料での区分としては、コンクリートを使用したコンクリートダムや、土や岩、石を用いたフィルダムなどがあります。型式としては、コンクリートダムの場合、重力式、アーチ式、バットレス式などがあります。フィルダムの場合は、アースダム、ロックダム、フェイシングダムがあります。この他、コンクリートダムとフィルダムを組み合わせた複合型(コンバイン)ダムがあります。

第3回「ダムの種類」を解説していきます。

基礎知識DL

1. コンクリートダム

コンクリートダムは、以下に挙げる重力式、アーチ式、重力式アーチダム、バットレス式、中空重力式の 5 つの型式に大別されます。

・重力式
重力式コンクリートダムは、コンクリートダムの中で最も多く建設されています(図 1)。これまでに国内で建設されたコンクリートダムは約1,200 基あり、そのうちの約 92% がこの型式です。全世界で見ると、ダムの約 7 割は土や岩を用いたフィルダムであり、残り 3 割に当たるコンクリートダムの大半は重力式で造られています。その理由は、他の型式のダムに比べて、設計や施工が比較的容易なためです。また、重力式ダムは周囲の岩盤がそれほど強固でなくても建設することが可能であることも大きな理由の 1 つです。

重力式コンクリートダム「宮ケ瀬ダム」
図1:重力式コンクリートダム「宮ケ瀬ダム」(引用:愛川町観光協会ウェブサイト)

使われるコンクリート配合は、基本的に外部コンクリートと内部コンクリートの 2 種類あります。重力式ダムの場合、外部コンクリートには、水の侵入や気温の変化などによって傷まないようにするため、強度の高いコンクリートを用います。一方、内部コンクリートは、強さよりも重さを重視したコンクリートになっています。重力式コンクリートダムは、コンクリート自体の重さで水圧に耐えるように設計されています。従って、重力式コンクリートダムの基本形状(断面)は三角形をしています。上流側は、基本的に垂直になっています。水圧は水面からの深さに比例して大きくなるため、ちょうど水圧に抵抗する理想的な形といえます。

・アーチ式
アーチダムは、水の圧力を両側の岩盤に伝える構造になっており、重力式に比べてスレンダーな形状をしています。従って、ダムの建設に際しては周囲の岩盤が強固であることが重要となります。アーチダムの形状の中で最も多いのはドーム型と呼ばれるものです。その他にも放物線型や円筒型のものもあります(図 2)。使用されるコンクリートの配合は、重力式ダムが 2 種類を使用するのに対し、アーチダムの場合には基本的に外部コンクリートの 1 種類です。これは、アーチダムがもともと重力式ダムに比べてスレンダーな構造になっていることによります。

強固な岩盤に囲まれたアーチダム
図2:強固な岩盤に囲まれたアーチダム

・重力式アーチダム
重力式アーチダムとは、重力式ダムの安定感と、アーチダムの持つスレンダーさを併せ持ったダムです。重力式アーチダムは、国内において戦後の電力不足解消のために建設されました。コンクリート材料などを十分確保することが難しかった時期に、アーチダムを造るほど周囲の岩盤が堅固ではないものの、通常の重力式ダムのような大量のコンクリートの使用を避けられるような立地条件で建設されました。従って、ほとんどが 1960 年代までに造られています。1970 年代後半以降は、コンクリート材料の 1 つであるセメントが比較的安価に入手できるようになったため、岩盤条件にそれほど左右されない重力式ダムが建設されるようになりました。

国内最古の重力式アーチダムは、宮崎県にある芋洗谷ダム(1930 年竣工)で、土木遺産にもなっています。海外では、アメリカのフーバーダムが最も有名な重力式アーチダムの一つです。戦前の 1936 年に竣工し、ダムの高さは 221.4m、総貯水量が約 400 億トンあり、日本のダムの総貯水量の約 2 倍となります。また、日本最大の湖である琵琶湖の貯水量 280 億トンであることから、フーバーダムの巨大さが分かるでしょう。

・バットレス式
バットレスダムとは、水圧を支える壁を、扶壁(ふへき:バットレス)で縦横組み合わせて支える構造をしているダムです。ダムの中で、唯一鉄筋コンクリートで造られています。バットレスダムは、大正から昭和初期にかけて 8 基が造られており、そのほとんどは電力会社が保有しています。当時は、コンクリートが高価だったため、アーチ式ダムを支えるだけの地盤がない場合に、コンクリートの使用量を大幅に削減できるとして建設されました。建設から100年近く経過した現在でも6基が残っており、今も現役で活躍しています。日本で最初に造られた北海道の函館にある笹流ダム(1923 年竣工)は、バットレスダムの中で唯一の水道用ダムです(図 3)。

バットレスダム「笹流ダム」
図3:バットレスダム「笹流ダム」

・中空重力式
中空重力式ダムとは、形状は重力式でありながら、中を空洞にしてコンクリートの量を減らした構造のダムです。戦後間もない頃は物資不足が深刻で、材料のセメント自体が高価であったため、コンクリートの量を大幅に減らせるバットレスダムが建設されました。しかし、バットレスダムは、構造上あまり堤頂を高くすることができません。その頃は電力不足が大きな問題となっていたため、発電用のダム建設が急務でした。

そこで、造られたのが中空重力式ダムです。中空重力式ダムは、確かにコンクリートの量を減らすことはできるものの、コンクリートを打ち込むための型枠が普通の重力式ダムの倍以上必要となってしまいます。このため、コンクリートが安く入手できるようになってからは、ほとんど造られなくなりました。

2. フィルダム

フィルダムとは、天然の土砂や岩石を盛り立てて築いた構造物です。ダム建設には、大量の材料が必要です。また、ダムの多くは山の中に造られるため、遠い場所からの材料の運搬に時間とお金がかかります。そこで、身近にある材料である土や岩を用いたフィルダムが多く造られています。基本的に土だけで造ったダムをアースダム、土と砂・砂利、岩で造ったダムをロックフィルダムと呼びます。また、土や岩に加えてアスファルトなどを使用するフェイシングダムがあります。

・アースダム
アースダムは、最も古いダム型式です。国内では、7 世紀に造られた狭山池ダム(第 2 回、図 3 参照)が最も古いアースダム(ため池)となります。アースダムは、基本的に土を盛って造ることから、ロックフィルダムのようなゾーン型フィルダムに対して均一型フィルダムとも呼ばれます。国内では地震が多いため、堤高が高いアースダムは造られていません。対して、海外では地震が少ない地域に超巨大なアースダムがいくつもあります。世界最大のアースダムは、タジキスタンにあるヌレークダムで、高さが300m、堤体積が 5,800 万 m3 です(図 4)。

世界最大のアースフィルダム
図4:世界最大のアースフィルダム「ヌレークダム」(引用:ヌレークダム、ウィキペディア)

・ロックフィルダム
ロックフィルダムは、基本的な断面が堤防などと同じ台形をしています。構造上その芯となる部分をコアといい、粘土で造られています。この部分(コア材)で水を止めます。ただし、粘土は水に直接触れると溶けて崩れてしまうため、コアの周囲を砂や砂利(フィルタ材)で覆い、崩れないように保護しています。しかし、フィルタ材だけではダム湖の水位の変化や波の影響で崩れてしまう可能性があるので、その周囲を岩(ロック材)で覆って保護しています。一番外側に、きれいに敷きならしたロック材をリップラップといいます(図 5)。

ロックフィルダム「徳山ダム」
図5:ロックフィルダム「徳山ダム」(引用:徳山ダム管理所、独立行政法人水資源機構)

・フェイシングダム
ロックフィルダムやアースダムは、基本的にダムの厚さや内部に設けたコア材によって水を遮断する構造であるのに対し、フェイシングダムは、ダムの上流側に水を通さない層を設けたダム(表面遮水型フィルダム)です。最も多く使用されているのが、防水性の高いアスファルトです。ただし、アスファルト自体の厚さは数 10cmしかありません。アスファルト以外にも、コンクリートを使ったものやゴムシートを張り付けたダムもあります。このフェイシングダムの多くは、揚水発電所の上池として造られています。

3. 砂防ダム

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 ダムとは
  • 第2回 ダムの歴史
  • 第3回 ダムの種類
  • 第4回 ダムの構造
  • 第5回 ダムの施工
  • 第6回 これからのダム

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