前回は、切削油剤の種類とその働き、および選定方法について解説しました。今回は最終回です。総まとめとして、旋盤作業を例に切削条件の決め方を解説します。(一部、過去の回と内容が重複します。)
通常、作業者は加工図面を見て、どのような工作機械と切削工具を使用し、どのような工程で加工を行うのかを考えます。この場合、1 つのポイントは、工作物(被削材)のどこを基準に加工を行うかです。面を基準にすることを面基準、穴を基準にすることを穴基準と呼びます。また、工作機械は、搭載モータの能力を上回る加工はできません。さまざまな種類の切削工具の中からどれを選び、どのような条件で使用するかを検討します。旋盤作業では、このような段取りが特に重要で、切削加工の自動化の基礎になっています。
第7回「切削条件の決め方」を解説していきます。
第7回もくじ
1. 材料記号と比切削抵抗
図1の加工図面を見てください。まず、工作物(被削材)の形状によって、丸物部品か角物部品かを判断できます。丸物部品なら旋盤を、角物部品ならフライス盤を使用します。この部品は丸物部品なので、旋盤を使用します。旋盤に搭載されているモータの能力を超えた加工はできないため、出力値を確認することが大切です。
加工図面には、材料記号や表面粗さの記号が記されています。この部品の材料記号は、S45C です。炭素量0.45% を含む機械構造用炭素鋼であることが分かります(表1)。
この材料を、バイトを使い、所定の切り込みと送りで切削すると、切削断面積= 切り込み× 送りとなります。切削断面積に工作物の破壊強度を掛けることで、切削力を計算できます。ただし、切削加工では、寸法効果(寸法が大きいほど、強度が低下する現象)があるため、破壊強度の代わりに比切削抵抗を用います。切削力= 比切削抵抗× 切削断面積となります。したがって、工作物の材質と切り込み、送りが分かれば、比切削抵抗が分かり(表2)、おおよその切削力を予測できます。
2. 工具材料と工具寿命
切削力に距離を掛けると、仕事量が求められます(仕事量=切削力×距離)。距離は、切削速度と切削時間を掛けた値です(距離= 切削速度× 時間)。また、切削時間には単位時間1 を用いるため、仕事量=比切削抵抗× 切り込み× 送り× 切削速度と表すことができます。したがって、切削に必要な所要切削動力は、仕事量(比切削抵抗× 切り込み× 送り× 切削速度)を、60×1,000× 機械効率で割った値となります(図2)。
加工図面を見て、工作物(被削材)の材質が分かれば、比切削抵抗も分かります。次に、使用するバイトの種類や、切削条件を考えます。バイトの材質は、超硬合金や高速度工具鋼などから選びます。また、バイトのコーナ(ノーズ)半径や、チップブレーカなどの工具情報を設定します。
加工を続けると、バイト刃先は摩耗し、切削の継続が困難になります。工具が寿命に達すると、スローアウェイバイトの場合はチップ交換、ろう付けバイトの場合は再研削が必要です。通常、バイト切れ刃の逃げ面摩耗幅が0.4mm に達すると、工具寿命と判断します。切削速度を高くすると工具寿命は短くなります(図3)。
切削速度と工具寿命との関連を実験式で示したのが、有名なテーラーの工具寿命方程式です(図4)。工具寿命方程式は、「VT n =C」で表されます(V:切削速度、T:工具寿命、n・C:定数)。
工作物と工具の材質が分かれば、工具寿命方程式の実験定数も決まります。例えば、一般構造圧延鋼材SS400を、超硬工具P10種で切削したときのn の値は0.3、C の値は800です(表3)。定数C は、工具寿命を1 分間としたときの切削速度です。この値が大きいほど高速切削が可能です。工作物と工具の材質に対応した実験定数n とC 値は、日頃より記録し、データベースを作成しておくことが大切です。
3. 切削速度の決め方
4. 送りと切り込みの決め方
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 切削加工の種類
- 第2回 切りくずの変形と切削温度
- 第3回 リボン状切りくずの処理方法
- 第4回 切削工具材料の種類
- 第5回 切削工具の種類と選び方
- 第6回 切削油剤の種類と選び方
- 第7回 切削条件の決め方