前回は、旋盤やフライス盤を用いたさまざまな切削方法を紹介し、切削加工の基本を解説しました。今回は、切削現象と理論の第 1 回です。切りくずの変形と切削温度について解説します。
切削工具の切れ味が良いと切削抵抗が小さく、切削温度は低くなります。逆に切れ味が悪いと切削抵抗は大きくなり、切削温度も高くなります。そのため、切れ味の良しあしは、切りくずの変化(切削現象)となって表れます。切削加工を高い精度で行うには、切削時の切りくずの状態をよく観察することが大切です。
第2回「切りくずの変形と切削温度」を解説していきます。
1. 二次元切削と切りくずの変形
カンナで木材を削るように、切削工具(バイト)で工作物(鋼材)を切削する場合を考えてみましょう。1 つの直線切れ刃をもったバイトを、切れ刃に対して直角方向に動かしたとき、切りくずがすくい面上を横方向に全く変形せずに、切削幅と等しい幅の長方形断面となるような切削を「二次元切削」と呼びます(図1)。切りくずがすくい面上を横方向に変形して排出される場合は、「三次元切削」と呼びます。
二次元切削において、切れ刃の先端で工作物に対し垂線を立てたとき、バイトのすくい面とのなす角を「すくい角」、また仕上げ面と工具逃げ面とのなす角を「逃げ角」と呼びます。このような二次元切削モデルは切削現象を理解する上で非常に役立ちます。
二次元切削では、工作物の側面に四角形にけがいた格子が急激に変形する面(せん断面)が観察されます(図2、左)。切削時の切れ刃先端が及ぼす工作物のせん断変形により、切りくずは切り込みの約3倍の厚さとなって排出されます(図2、右)。また、せん断変形により切りくずには大きな発熱が生じます。
2. 切削工具の切れ味とは?
「この刃物は切れ味が良い」といったときの「切れ味」を言葉で説明することは困難です。人によって、さまざまな回答が考えられるように、切れ味は人の感覚に依存する定性的な表現といえます。そこで刃物の切れ味を、定量的に表現する方法を考えてみましょう。
切削時における工作物の仕上げ面とせん断面とのなす角を、「せん断角」と呼びます。このせん断角の大小により、切りくず厚さが変化します(図3)。すなわち、せん断角が大きいと薄い切りくずに、小さいと厚い切りくずになります。
また、すくい角が大きな切削工具ほどせん断角は大きく、切りくずは薄くなり、切れ味のよい刃物といえます(図4)。ただし、すくい角が大きすぎると切削時に刃先が破損しやすくなるため、工作物の材質に応じた適切な角度であることが条件となります。また、切削工具を切削油剤で潤滑させ、高速で切削することでもせん断角は大きくなり、切れ味は良くなります。
せん断角は、切削工具のすくい角、切り込み(旋削時は送り)、および切りくず厚さに依存し、次のような式で計算できます。切削工具のすくい角や切り込みを確認し、切りくず厚さをノギスやマイクロメータで測定して計算式に当てはめることで求められます。
3. 構成刃先と表面粗さ
4. 切削温度と切りくずの着色
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 切削加工の種類
- 第2回 切りくずの変形と切削温度
- 第3回 リボン状切りくずの処理方法
- 第4回 切削工具材料の種類
- 第5回 切削工具の種類と選び方
- 第6回 切削油剤の種類と選び方
- 第7回 切削条件の決め方