前回は、顧客生涯価値と顧客資産という2つの顧客価値について説明しました。今回は、1to1マーケティングにおける4Pの側面について解説します。4Pとは、プロダクト(Product)、プライス(Price)、プロモーション(Promotion)、プレイス(Place)の4つのPを指します。
第5回「1to1マーケティングにおける4Pの側面」を解説していきます。
第5回もくじ
1. プロダクト:消費者が製品開発を行う時代
プロダクトとは、製品を指し、サービスや情報なども含みます。ネットの普及以前は、製品・サービスの供給者と需要者の役割が明確に分かれており、消費者の意見を反映しながらも、製品開発はあくまで企業主導で進められるものでした。しかし、ネットによって消費者がより多くの知識を持つようになると、消費者に製品スペックの決定権、さらには製品開発までもがシフトするようなビジネスモデルが登場してきました(図1)。
基本的な形態としては、パソコンや旅行ツアーなどで見られる、製品のカスタマイゼーションがあります。これは、BTO(Build to Order)と呼ばれます。顧客は、製品個々の構成要素について、その仕様と価格をウェブサイト上で比較しながら、好みに合わせたスペックを構築できます。顧客にとってのメリットは、選択の自由度が増え、営業マンとの煩わしい対応が不要になるということであり、企業にとっては自動化による人件費の削減や、受注後に生産を行うため在庫リスクが低くなるなどのメリットがあります。
これを発展させた形態にプロシューマと呼ばれるものがあり、専門的な知識をもった消費者(professional + consumer)に、製品開発の一部を委譲します。ソフトウェアの分野では、リリース前のベータ版をリードユーザーに無償で配布することで、企業がフィードバックや製品改善のアイデアを得たり、Linux やウィキペディアのように全ての開発プロセスをユーザーが行ったりする事例があります。製品では、CUUSOO(旧称:空想生活)のように、開発してほしい商品のアイデアを消費者から募り、それが一定数以上の賛同が得られたら製造業者に製品開発・製造を委託するといった例があります。さらに、これを一般化したものが、事業やアイデアに対してネット上で資金を募るクラウド・ファンディングです。
2. プライス:価格を決める主体が消費者になる
プライスとは、価格のことを指し、製品やサービスを市場で販売する上での金銭的価値のことをいいます。CRMやイールド・マネジメント(顧客の支払い意欲に応じて販売価格と販売量をコントロールし収益を最大化させる手法)との併用で、価格を顧客・在庫・需要・時間によってリアルタイムで細かく調整することが可能になりました。ただし、アマゾンが新規顧客と既存顧客に異なる価格を提示したり、コカ・コーラが自販機の価格を天候によって変動させることを検討するときに物議をかもしたように、不公平感や非倫理感を伴うプライシングはネット上で炎上し、企業の大きなイメージダウンにつながります。顧客によって価格に差を持たせる場合は、ルールを明確にして公平感を保つことが大切です。
ネットは、顧客が大量の価格情報を収集・比較するツールとして有用です。さらに、その作業を自動化・効率化した価格比較ウェブサイトやショップボット(自動的にウェブ上を徘徊し、商品探しなどを行なう)の出現によって、消費者の価格感度は上昇傾向にあり、小売業者間の価格競争は激しさを増しています。小売業者にとっては、価格以外の側面でいかに差別化を図るかが、きわめて重要な課題となっています。
価格の決定権が顧客にシフトした例としては、プライスライン社に代表されるリバース(逆)オークションがあります。まず、顧客が宿泊の地域・日程・グレードを指定して希望価格を提示します。そして、供給側がそれを受諾した場合に具体的なホテル名が明かされ、キャンセル不可の予約が確定してクレジットカードで課金される仕組みになっています。また、決済手段として電子マネーやビットコインのような仮想通貨が広く普及し始めており、貨幣経済からシェアリング・エコノミーへと、ネットの力は物々交換のトレンドを加速させているようです。
3. プロモーション:「企業と消費者」「消費者と消費者」が双方向に結びつく
4. プレイス:新たに登場した「情報」の中間業者
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 マスから個々人へのマーケティング
- 第2回 優良顧客の囲い込み
- 第3回 優良顧客を識別する
- 第4回 顧客の価値
- 第5回 1to1マーケティングにおける4Pの側面
- 第6回 ビッグデータとAI