前回は、セル生産方式の立ち上げの際に重要になる原則 4 つを紹介しました。今回は、最終回です。セル生産方式の活用方法について解説します。
第7回「現場力がポイント!今後のセル生産方式」を解説していきます。
1. セル生産方式の弱点とは?
セル生産方式は、請負をはじめとする非正規社員化の増加とともに、日本から姿を消そうとしています。「多能工」がセル生産方式の前提となっているためです。本来、日本の強みであった多能工が、セル生産方式の大きな弱点になってしまったのです。そのため組立を中心に行っている工場では、生産の自動化を推進するか、海外工場に生産をシフトしているのが現状です。
実際に、私が開発に携わったセル生産ラインは、全て海外工場に生産が移管されました。海外工場では、ほとんどがコンベヤラインで生産を行っています。ラインを開発した当時は社員で生産を行っていたものの、非正規社員化を急速に進めたため、生産を維持することができなくなったのです。もちろん、非正規社員を正しく訓練すればセル生産ラインで生産できるのですが、十分な訓練ができませんでした。セル生産ラインに訓練の不十分な新しいメンバーが入ると、たちまちセル生産ラインが不安定な状態になり、生産性が大きく低下したのです。
正しく作業配分されたセル生産ラインは、1 人でも新人が入るとガタガタになってしまいます。非正規作業者の増員に伴って、ベテラン作業者は製造部門以外に配置転換されることが多くなり、現場でセル生産方式の作業指導ができなくなってしまいました。そのため、セル生産ラインから、元の生産形態に近いレイアウトに戻すラインが続出しました。さすがに、コンベヤラインには戻せないので、手でワークを送る直線ラインに戻ったケースが多くありました。元に戻せない場合は生産そのものを海外に移管するケースが続出しました。
実際に海外に移管してしまったU 字ラインの事例を、図1 に示します。撮影時は社員が生産していました。この後、請負化が推進され、その2年後には、海外工場に生産移管されました。図1のU字ライン本体は、ほとんどが解体・廃棄されてしまいました。とても残念なことでした。
2. 今後も、セル生産方式を使うコツ
セル生産方式は、現代のモノづくりに対応できない生産方式なのでしょうか? セル生産方式の強みは、非定員制のラインです。これを生かし、非正規社員が増加すれば定員を増やすことで、対応は十分にできそうです。しかし、実際にはそのようにはなりませんでした。それは、現場で作業配分をコントロールできなかったからです。
セル生産方式は、多品種少量生産に強いラインを目的に誕生し、コンベヤラインと比較して生産性も飛躍的に上がりました。そのため、生産性ばかり追求されるようになり、作業にほとんど余裕がなくなってしまったのです。少しでもペースが乱れると、大幅に生産性が低下してしまうレベルまで、生産性向上を追求したのです。高いIE 技術で巧妙に作られたセル生産ラインは、労働力の流動化の中で運用するのが難しくなってしまい、次第に消えていったのです。
セル生産方式全盛の時には、私も高い生産性ばかり追求していました。しかし、思い出してみると、その当時に見学した工場の中に、作業配分を工夫していた工場がありました。生産性向上を追求していた私には、生産性がよいとは思えなかったため、当時は気に留めませんでした。今、思い出してみると、新人には簡単な作業をさせ、ベテランがメインの組立を行っていたのです。実に、理にかなったラインだったのです。
作業者全員が、多能工でなくても、作業配分を作業者の能力に応じて配分すればよいのです。コンベヤがない分、作業配分が柔軟に行えるのが、セル生産方式の特徴です。セル生産ラインに、従来のコンベヤラインのような直線ラインを付加してもよいし、1 人で生産する工程を付加することもできるのです。
図2 に、複合型のセル生産ラインのイメージ図を示します。中央の1から5 までの部分は、すでに紹介したU 字ラインです。黄色の部分が、従来の生産方式のラインを付加した部分です。右側は、手送りの直線ライン、左側は2 台の作業台や機械を設置した1 人生産です。黄色の工程を新人に担当させ、中央のU 字ラインの部分にベテランを配置することが可能です。
本来のセル生産方式の目的は「非定員制のライン」です。作業配分が調整しやすいラインなので、作業配分にもう少し余裕を持たすことができれば、まだまだ運用できるでしょう。図2 のようにセル生産ラインの形状を工夫してもよいし、新人の作業者にはベテランの半分程度の工数を担当させることも可能です。
他にもさまざまな応用ができます。最も重要なのは、製品の特徴に合わせた生産方式を構築することです。これらの検討から改善の実施は、生産技術にはノウハウが少ないため、現場メンバーが行動することが重要なのです。現場力の蓄積が、セル生産方式を継続的に運用できるポイントとなります。
3. セル生産方式と5S 活動
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 セル生産方式とは?なぜ使われなくなったのか?
- 第2回 セル生産方式のメリットとは?生産性も品質も向上するってほんと?
- 第3回 セル生産ラインの設計手順
- 第4回 セル生産ラインの設計事例
- 第5回 セル生産方式の注意点
- 第6回 1個流しとは?標準手持ちとは?
- 第7回 現場力がポイント!今後のセル生産方式