前回は、セル生産方式の注意すべき原則1から3について紹介しました。今回は、セル生産方式の立ち上げの際に重要になる原則4 から7 について解説します。
第6回「1個流しとは?標準手持ちとは?」を解説していきます。
1. 1個流しとは?標準手持ちとは?
セル生産方式の原則は、「1 個流し」と「標準手持ち」です。1 個流しとは、ワークを1 個ずつラインに投入して生産をすることを指します。セル生産方式では、多能工である作業者が1 個のワークを持ち、複数の工程で組立を行って完成品に仕上げていきます。ワークを1個完成させたら、次のワーク1 個をライン内に投入することにより、ワークの数を一定にします。このライン内のワーク、つまり、ライン内の仕掛品のことを「手持ち」といいます。
手持ちは、TPS(トヨタ生産方式)独自の用語で、「てまち」ではなく、「てもち」と読みます。ラインのどこに何個の仕掛品を置くか、決めることです。仕掛品である手持ちの数を標準化すると「標準手持ち」になります。手持ちが、標準手持ちの数量よりも多くても少なくても、生産に異常があると判断します。これが「標準手持ち一定」の原則です。
標準手持ち一定が崩れることは、不良を発生させる原因になります。作業者間のバランスが崩れるためです。例えば、先頭工程の作業者が早く作業を行うと、どんどんワークがライン内にたまっていきます。つまり、手持ちが増えていく状態です。後工程の作業者は置き場所がなくなると、ラインのあちこちにワークを置くようになります。いわゆる、取り置きが発生します。取り置きが発生すると、先入れ先出しが保てなくなるため、品質保証が難しくなります。ワークが順番に流れないので、不良が発生した時に、いつ投入したワークなのか判断できなくなるためです。
図1 に、標準手持ちの決め方の一例を示します。斜線の入った丸の記号が標準手持ちです。この例では、U 字ライン内に、5 個の標準手持ちが設定されています。
2. IO一致の目的と実現方法
「IO(アイオー)一致」は、インプット(ワークの投入)とアウトプット(ワークの取り出し)を一致させるという意味です。工程のインプット、つまり先頭工程、アウトプットは最終工程になります。先頭工程と最終工程を、同じ作業者が担当します。コンベヤラインでは絶対にできません。
セル生産方式、例えば、U字ラインで、IO 一致が実現できるのは、ラインをU字型に曲げられているからです。ちょうど、先頭工程と最終工程が向かい合っているので、IO 一致が可能になります。工場を見学すると、せっかくU字型にしているのに、先頭と最終工程を別の人が作業しているのを見かけます。管理工程図通り作業配分すると、このようになってしまいます。品質管理部門が強い工場などで、見られる現象です。
IO 一致を行うと、完成品を1 個、アウトプットしたら、ワークを1 個、インプットする作業になります。IO 一致を守ることにより、標準手持ち一定の原則を実現することができます。先頭工程と最終工程を別の人が担当すると、作業の速さを同じにすることはできません。コンベヤラインは一定速度で動くコンベヤで作業を定速にできますが、セル生産方式にはコンベヤがないので作業の速度を同じにすることができないのです。先頭工程の人が早く作業をすると、ラインの中にどんどんワークがたまっていきます。反対に、最終工程の方が早いと、ライン内にワークがなくなってしまうのです。
IO 一致の事例を図2 に示します。このU 字ラインは1 から5までの工程があり、1 人の作業者が、工程1 と5を、もう1 人の作業者が工程2~4を担当しています。
3. 預け作業で生産性アップ
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 セル生産方式とは?なぜ使われなくなったのか?
- 第2回 セル生産方式のメリットとは?生産性も品質も向上するってほんと?
- 第3回 セル生産ラインの設計手順
- 第4回 セル生産ラインの設計事例
- 第5回 セル生産方式の注意点
- 第6回 1個流しとは?標準手持ちとは?
- 第7回 現場力がポイント!今後のセル生産方式