前回は、セル生産方式の一つであるU字ラインの設計事例を紹介しました。今回は、セル生産方式の注意点について解説します。
第5回「セル生産方式の注意点」を解説していきます。
1. 失敗しない!セル生産方式の注意点
セル生産方式には守るべき注意点が、いくつかあります。それらを守らないと、生産の立ち上げに長時間を要することになります。いえ、立ち上げることができないかもしれません。実際に失敗して元に戻した経験に基づいて、注意点を解説します。図1に、セル生産方式のねらいと注意点と原則を示します。重要な原則1 から3 までを今回、立ち上げの際に重要になる原則4 から7 を次回説明します。
セル生産方式には、3 点のねらいがあります。生産性向上の2 つの要素は、作業者1 人当たりの生産性と面積生産性であり、どちらも向上させることができます。安定した標準作業を定着させることにより、品質向上が可能になります。生産性と品質向上のいずれにも影響しているのが、作業者の能力の発揮です。コンベヤラインでは作業者の能力が十分に発揮できなくても、セル生産方式では作業者の工夫により生産性や品質を向上することが可能です。作業者が能力を発揮できるのが、セル生産方式の最大の特徴です。
2. 立ち作業へスムーズに移行する方法とは?
座り作業でのセル生産方式の運用は不可能であり、「立ち作業」が必須となります。作業者が複数の工程を担当するため歩行が必要となり、歩行の前後にイスに座る、立ち上がる動作は適しません。反対に、コンベヤラインでは座り作業が一般的であり、座り作業に慣れた作業者は立ち作業を嫌います。立って作業することは、とてつもなく疲れるイメージがあるためです。
立ち作業でも、適度な歩行を行う場合は、身体的な疲れはそれほど大きくありません。実際に、ほとんどの作業者は1 ~ 2 週間で立ち作業に慣れました。ただし、作業者の年齢による差は多少あります。50 代の作業者は、疲労感がやや大きい傾向にあるものの、生産に対して大きな問題になった経験はありません。
注意しなければいけないのは、立ったまま一歩も歩かない作業です。この作業は極めて足が疲れます。ある時作業者を見ていると、足をもじもじさせて、足が気になっている様子でした。生産性向上の障害になるため、不良が発生しないうちに、適度な歩行ができるように作業改善を行うべきです。
座り作業から立ち作業への変化は、作業者にとって非常に大きなものです。実際には1 週間程度で身体は慣れ、疲労は感じなくなるのですが、導入にあたっては細心の注意をすることが重要です。現場の納得が重要となるため、なぜ、立ち作業が必要なのか説明を行うことが大切です。セル生産方式では多工程を担当するため歩行が必要になることを理解してもらった上で、「身体が慣れるまでの1週間は我慢してください」と、作業者にお願いすることが早道です。
セル生産ラインの近くに、座って休憩できるベンチなどを設置すると、作業者が喜んでくれ立ち作業に早く慣れてくれたことがありました。シューズを底の厚いものに変えるのも効果がありました。しかし、床にマットを敷くのは、楽になるどころか、歩行が不安定になるだけでした。多少の個人差はあるものの、1 週間程度で大半の作業者は立ち作業に慣れました。作業を行う人に納得してもらいながら、セル生産ラインを立ち上げていくのがよいでしょう。立ち作業の例を図2 に示します。
セル生産方式では、作業者が複数の工程を担当するため、セル内で歩行が発生します。歩行は、作業者の疲労軽減につながる反面、ムダの一つになります。歩行が少ない方が生産性向上するため、原則2 の「間締め」が重要になります。間締めとは、作業台の間隔を詰めて、少しでも小さくすることです。4 回目に解説したとおり、作業台の大きさや間隔は、できる限り小さく設計することで歩行を少なくし、生産性向上や作業者の負荷軽減につながります。セル生産方式においては、「大は小を兼ねる」は成立しません。反対に、「小は大を兼ねる」という考え方で設計するのが望ましいのです。
3. 多能工の教育方法
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 セル生産方式とは?なぜ使われなくなったのか?
- 第2回 セル生産方式のメリットとは?生産性も品質も向上するってほんと?
- 第3回 セル生産ラインの設計手順
- 第4回 セル生産ラインの設計事例
- 第5回 セル生産方式の注意点
- 第6回 1個流しとは?標準手持ちとは?
- 第7回 現場力がポイント!今後のセル生産方式