セル生産方式のメリットとは?生産性も品質も向上するってほんと?|セル生産方式の基礎知識2

セル生産方式の基礎知識
著者:楽々改善舎 現場改善コーチ 来嶋 一弘

前回は、セル生産方式とは、どんな生産方式なのか、どのように生まれたのか、どうして使われなくなったのかを紹介しました。今回は、セル生産方式のメリットを詳しく解説します。

第2回「セル生産方式のメリットとは?生産性も品質も向上するってほんと?」を解説していきます。

基礎知識DL

1. セル生産方式のメリットとは?

「セル生産方式」は、多品種少量生産に適しています。コンベヤラインでは、どうして対応できないのでしょうか? 「セル生産方式」のメリットについて解説します。

コンベヤラインは、多くの作業者で分業を行う、少品種大量生産に適した生産方式です。特定の品種に関してのみIE 改善を行い、生産性を最大にします。多くの作業者で分業をするため、品種切り替えの必要な箇所が多くなり、品種切り替えに長時間を必要とするのが弱点でした。そのため、バブル崩壊後、1 日に多くの品種を生産しなければならなくなると、少品種大量生産では効率的だったコンベヤラインが、皮肉なことに足を引っ張る結果になったのです。

そこで、発想を大きく変えて、「多く生産する」から「少なく生産する」ことを模索したのが「セル生産方式」です。品種切り替えロスを最小にするとともに、複数のセル生産ラインを配置することにより、同時に異なった品種を生産できるのが特徴です。大きなコンベヤラインからコンベヤを取り去り、作業台をU字型などに並べた小さなエリアで、少人数の作業者で生産を行うように改善を行ったのです。つまり、1 台のコンベヤラインを複数の小さなセル生産ラインに変えました。今まで目指してきた大人数での大量生産ではなく、全く反対の少人数で少なく生産することを目指したのです。

コンベヤラインとセル生産方式(U字ライン)の比較
図1:コンベヤラインとセル生産方式(U字ライン)の比較

セル生産方式は、確かに多品種対応には有効でした。しかし、少量生産のため、開発当初は誰もが生産性が低下すると考えました。多能工訓練を必要としたため、最初は生産性が大きく低下したものの、熟練した多能工が増えてくると、じわじわと生産性が向上しはじめました。そして、ついに1 人当たりの生産性がコンベヤラインを抜いてしまったのです。しかも、品質もコンベヤラインを上回りました。「セル生産方式」は、多品種少量生産なのに、生産性・品質共に、コンベヤラインを超えたのです。

2. なぜ、生産性が向上したのか?

多品種少量生産に適した「セル生産方式」は、なぜ生産性向上につながったのでしょうか? 大きく2つの要因があります。一つは「ムダの削減」、もう一つは「モラール(やる気)向上」です。

一つ目の「ムダの削減」は、「コンベヤのムダ」を少なくしたことです。コンベヤラインでは、コンベヤ上にあるワークを取り出したり、コンベヤに投入するムダな動作が発生します。コンベヤ上でのネジ締めやはんだ付け作業では、この投入取り出しのムダが発生しません。しかし、そのような工程は限られています。

ほとんどの作業者で、このようなムダが発生し、取り出しと戻しの動作で、およそ1秒は必要です。コンベヤ速度を上げると、この時間が大きな割合になります。例えば、1個のワークにつき10秒の作業を行う場合は、その10%が投入取り出しのムダになってしまいます。間欠送りのコンベヤだと、コンベヤの送り時間も手待ちのムダになります。

さらに、作業者間の作業のバランスロスも発生します。同じ品種を継続的に生産している場合は、改善を行ってバランスロスの低減が図れました。しかし、品種数が多くなると、改善が追い付きません。やむなく、バランスロスの発生した状態のままで生産することも、生産性を低下させる原因でした。

「セル生産方式」の場合、作業者が1個のワークを取ると、そのまま複数の作業を行っていきます。1個のワークを持ったまま、次々に作業を行っていきます。つまり、取り出しムダの割合を小さくすることができます。バランスロスも発生しません。このムダの削減による生産性向上を10~15%程度と予測していました。しかし、実際には1.5倍や2倍になったセル生産ラインが出てきました。実は他にも要因があったのです。図2に、実際に立ち上げた電子機器の組立用U字ラインの実績を示します。この例では、4 か月で約70%の生産性向上ができました。

生産性推移の実績
図2:生産性推移の実績(電子機器組み立て用U字ラインの例)

もう一つの要因が、作業者の「モラール向上」です。モラールとは「やる気・士気」のことで、近い言葉には「モチベーション」があります。コンベヤラインの最大の欠点は、コンベヤ速度で生産性が決まってしまい、作業者の頑張りが生産性につながらないことです。コンベヤラインは大勢の作業者で生産を行いますが、1 人がいくら頑張っても、生産数は増えません。しかし、「セル生産方式」の場合、1 人が頑張ると、生産数を増やすことができるのです。これは他の作業者にも良い影響を与え、作業者全員で工夫すると、もっと大きな成果を出すことができるのです。

「セル生産方式」をスタートして約2週間経過すると作業者は熟練してきます。すると、作業者全員が、「工夫すれば生産数が増える」ことに気が付きます。生産数が増えると、工夫することが面白くなってきて、どんどん改善するようになります。「気が付けば、生産性が2倍になっていた」というラインが、あちこちでできたのです。

コンベヤラインの中では、作業者は考えて工夫することを忘れてしまいました。「セル生産方式」により、工夫することを思い出したのです。人が改善をする力は素晴らしく、生産性向上を実現できました。

3. なぜ、品質も向上したのか?

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 セル生産方式とは?なぜ使われなくなったのか?
  • 第2回 セル生産方式のメリットとは?生産性も品質も向上するってほんと?
  • 第3回 セル生産ラインの設計手順
  • 第4回 セル生産ラインの設計事例
  • 第5回 セル生産方式の注意点
  • 第6回 1個流しとは?標準手持ちとは?
  • 第7回 現場力がポイント!今後のセル生産方式

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