一口に、コンクリートのひび割れといっても、原因や発生時期、対策方法はさまざまです。また、コンクリートのひび割れは、全て問題となるわけではありません。ただし、コンクリートの性質上、回避できないひび割れもあります。今回は、さまざまな原因で生じるひび割れと、その対策について解説します。
第7回「コンクリートのひび割れ」を解説していきます。
1. コンクリートに生じるひび割れの分類
ひび割れを分類する方法はいろいろあります。原因別では、材料、配合、施工、構造などに分けることができます。しかし、ひび割れは発生時期で分類する方が分かりやすく、対策も立てやすいです。表1 に、発生時期によるひび割れの分類を示しています。
近年では、レディーミクストコンクリート(生コン)を使用する建設工事がほとんどです。沈下ひび割れや、初期収縮ひび割れは、打設前に問題が発生していると考えられます。この問題を防ぐのは、主に設計者と製造者です。施工者が原因を作る場合もあります。誰がどの程度責任を負うかは、判断が困難です。図1 に、沈下ひび割れ(沈降ひび割れとも呼ぶ)の事例を示します。
沈下ひび割れの発生する仕組みは後述します。沈下ひび割れの原因には、設計時にブリーディング水(コンクリート打設後に発生する浮き水)の出やすいコンクリートを指定する点が挙げられます。製造時にブリーディング水の発生しやすい材料を選定し、配合することに起因します。しかし、ひび割れは施工後に発生するため、施工者に問題があったとされる場合が多くあります。
図2 に、コンクリートの打設後すぐに発生する初期ひび割れの事例を示します。
初期ひび割れの発生する仕組みも後述します。初期ひび割れの原因は、材料自体が収縮する特性を持っていることと、施工時の対応です。このひび割れも、施工者の問題とされがちです。しかし、設計時の材料選択によっては、ひび割れの発生を防げないこともあります。初期ひび割れを防ぐためには、ひび割れの発生するメカニズムを理解し、事前に対策することが必要です。
供用期間中(コンクリートの耐久期間)に生じるひび割れは、ほとんどがコンクリート中の鋼材の腐食か、コンクリート自体の劣化によって生じます。劣化に伴い生じたひび割れは、一旦発生すると進行するので、早期の補修対策が必要です。供用期間中のコンクリートについては、次回解説します。
2. ひび割れの発生メカニズム
コンクリートには、さまざまな原因でひび割れが生じます。コンクリート構造物に外部から力が作用すると、部材に曲げ応力が作用し、引張応力に対抗する力が弱いコンクリートには簡単にひび割れが生じます。そのために鉄筋で補強して、じん性を付与します。
外部から力が作用しなくても、ひび割れが生じる場合もあります。コンクリートは収縮する性質を持っています。この収縮を拘束すると、コンクリートには引張応力が生じます。引張応力に抵抗できないコンクリートは、容易にひび割れを生じます。このようなひび割れは、初期ひび割れと呼ばれます。乾燥収縮が原因であれば乾燥収縮ひび割れ、コンクリートの硬化により発生した自己収縮が原因であれば自己収縮ひび割れ、セメントの水和発熱が主な原因であれば温度ひび割れと呼びます。
乾燥収縮は、コンクリートの主要材料である水が、セメントの硬化に必要な量を超えた場合、施工後に徐々に乾燥して生じます。温度収縮は、セメントの硬化時に部材内部に水和熱が蓄積され、放熱段階で温度低下に伴い生じます。いずれもコンクリートの主要材料の特性による収縮であり、これらの収縮を抑えることは容易ではありません。図3 に、収縮を拘束して生じるひび割れの発生概念を示します。
図4 に、温度応力によるひび割れの発生概念を示します。施工後のコンクリート構造物の内部は、水和熱による温度上昇が起こり、膨張します。その後、外気温に近い温度になるまで放熱します。放熱に伴い、膨張したコンクリート構造物は収縮し、引張応力が発生します。その引張応力が、コンクリートの引張強度を超えると、ひび割れが生じます。
なお、打ち上がり速度(コンクリートを型枠に流し込む速さ)を速めた場合は、型枠面での沈下ひび割れの発生を助長します。早期の強度発現を求めると、温度ひび割れの発生を助長します。初期養生をおろそかにすると、乾燥収縮ひび割れの発生を助長します。コンクリートのひび割れは、さまざまな原因の組み合わせで発生するので、原因を突き止めるのはなかなか困難です。
3. 初期ひび割れの対策技術
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 コンクリートの長所と短所
- 第2回 コンクリートの配合設計
- 第3回 コンクリートの製造技術
- 第4回 コンクリートの打設
- 第5回 コンクリートの養生
- 第6回 コンクリートの仕上げ
- 第7回 コンクリートのひび割れ
- 第8回 コンクリート構造物の劣化
- 第9回 コンクリートの長寿命化