コンクリートの養生は、コンクリートの主要材料であるセメントの水和反応を、十分に発揮させるために行います。それは同時に、材齢初期(打設日からの経過日数があまり経っていない状態)の段階で、外部からの力に耐えることのできる強度を得るまで、保護することを意味します。養生という言葉の一般的な意味は、生を養うことであり、健康を増進すること、自然治癒を促すこと、対象物や周辺のものを守ることです。コンクリートの養生も特別な意味を持たず、強度を増すことや、コンクリート自体を守ることを意味します。今回は、コンクリートの養生の目的、養生方法などを紹介します。
第5回「コンクリートの養生」を解説していきます。
第5回もくじ
1. コンクリートの養生の目的
コンクリートが硬化し、強度を得るためには、適当な温度と水分が必要です。コンクリートの養生は、コンクリートに散水すればいいと考えている技術者が多くいます。しかし、ただ単に、水をかければコンクリートが凝結し、順調に硬化して、構造物が安全になるわけではありません。部材の厚さが大きい構造物では、表面から水をかけても、内部までは浸透しません。コンクリートは透水性が高くなく、緻密で水を通しにくい材料です。
では、なぜ養生が重要なのでしょうか? 養生には、コンクリートが凝結を始めてから硬化するまでの間、外部の影響から保護する意味があります。引っ越しの時に家具が、直接ぶつかり、損傷しないように保護することと同じです。示方書や仕様書に示される養生期間は、この保護に必要な期間です。
コンクリートの品質管理のために、供試体(強度や耐久性などを試験するために用いる試験体)を作製して強度試験を行います。その際に、水中で養生をするより、気中に放置して養生した供試体の強度が、15~30%程低くなる実験結果が、多く報告されています。実際の養生では、内部まで水が浸透しやすい供試体と、表面から水分が浸透しにくい実構造物の違いを考えなければなりません。実構造物に含まれる水分は、表面を除けば封かん(水の出入りがない)状態です。なお、表面付近は、外部からの水分と温度の影響を受けやすいので、養生の作業には十分な配慮が必要です。
『土木学会コンクリート標準示方書 施工編』に示される養生期間を表1~表3 に示します。温度が低いと、外部の影響に抵抗できるまでの強度発現に時間を要するため、長い養生期間が示されています。表2と表3 で、コンクリート構造物の養生期間は、水分の供給が十分にある条件下では、長く取られています。温度が低い状態で、コンクリートの表面が水で飽和されると、コンクリート中の水分が凍結し膨張する可能性が高くなり、ひび割れの原因である凍害発生のリスクも高まります。そのため、打設初期での凍害発生を抑えるとともに、凍害に耐えうる強度を得るために、通常より長い養生期間が必要とされています。水分の供給がない場合は強度が小さくてもよいため、これらの標準が示されています。つまり、養生期間は、外部の影響に抵抗できる強度を得るまでの期間とする考えに一致します。また、大雨などからシートなどで、打設直後のコンクリートを守ることも養生といえます。
2. コンクリートの養生方法
コンクリートの養生には、さまざまな方法があります。表4 に各種の養生方法を示します。湿潤養生はコンクリートの水和を進める効果を期待するもので、直接水分を与えるたん水養生、散水養生、供試体で行われる水中養生などがあります。水分の逸散を防ぐのも養生の一つです。型枠養生(型枠を存置している間は養生期間とする方法)、シート養生などは封かん養生と考えるのが適切です。なお、気中養生という言葉がありますが、水分を与えないで空気中にさらしているだけであり、養生とは言えません。ただし、その間に外部の影響を加えないように配慮する意味では、水分を与えない状態で保護しているとも考えることができます。
温度養生は、早い段階でコンクリートを硬化させて、工事のサイクルを早めたい場合に行います。コンクリートの硬化を早めるために温度を高めに設定すると、長期的にはコンクリートの硬化の進みは持続しにくくなります。必要以上に温度を高めない方が、結果としてコンクリートの耐久性を高めます。
コンクリートの2 次製品には、製造のサイクルを早めるために蒸気養生が行われます。圧縮力をかけ通常のコンクリートより強度を高めたPC(プレストレストコンクリート)を材料とする、PC パイル(基礎杭に利用)やPC ポール(電柱に利用)などでは、遠心力成型を行った後、蒸気養生に加えて、オートクレーブ養生が行われます。これらの養生の一例を図1 に示します。オートクレーブ養生を行う前に蒸気養生を行い、蒸気養生の前には前養生と称して2 時間程度静置する時間を取ります。この方法は、実験を通じての経験的な方法です。コンクリートの2 次製品は、長期的な強度の発現ではなく、納入時点での強度の確保が必要とされます。
3. コンクリートの養生技術
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 コンクリートの長所と短所
- 第2回 コンクリートの配合設計
- 第3回 コンクリートの製造技術
- 第4回 コンクリートの打設
- 第5回 コンクリートの養生
- 第6回 コンクリートの仕上げ
- 第7回 コンクリートのひび割れ
- 第8回 コンクリート構造物の劣化
- 第9回 コンクリートの長寿命化