前回は、コンクリートの製造技術を解説しました。今回は、コンクリートの打設について解説します。コンクリートの施工時に、不良箇所を出さないためには、正しい打設の理解が必要です。
コンクリートの打設には、2 つの意味があります。一つは、製造されたコンクリートを現場まで運搬した後、コンクリート用ポンプなどを用いて圧送し、打込み、締固めの後にコテなどを用いて仕上げ、養生する一連の行為を指します。もう一つは、単に打ち込む行為を意味します。この記事では、生コンを運搬した後の、打込みと締固めについて解説します。
第4回「コンクリートの打設」を解説していきます。
1. コンクリートの打込み、締固めの語源
コンクリートの打込みとは、コンクリートを型枠の中に流し込む行為です。なぜ、流し込みではなく打込みというのでしょうか? これは、コンクリートの原点を知らなければ分かりません。
昔のコンクリートは、打ち込まなければならないほど固練り(スランプでいえば、せいぜい2 ~ 3cm 程度)でした。固練りのコンクリートを使っていた理由は、現在のように、混和剤を用いて柔らかくしながら、単位水量を低減することができなかったためです。製造技術も現代のように発達しておらず、軟らかいコンクリートを製造すると、たちまちひび割れが生じていました。また、戦前は骨材に、天然の砂利や砂を使用していたため、最大寸法も現在のものよりやや大きく、25mm ~ 40mmが標準的でした。そのため、現在のように流し込むような打設ができなかったのです。このような固練りのコンクリートを型枠に詰め込むには、突き固めるか、締め固めることが必要でした。締固め具の例を図1 に示します。
言葉に違和感はありますが、コンクリートを流し込むことを専門用語では打込みと呼びます。流し込んだコンクリートに巻き込まれた余分な気泡を抜く行為を、締固めと呼びます。近年のコンクリートの打込みの様子を図2 に示します。
2. コンクリートの打込みの基本
コンクリートの打込み時には、材料分離(粗骨材分離)を生じさせないように配慮しなければなりません。コンクリート製造時に骨材を均質にしても、打込んだ状態で偏りが生じると、硬化後の品質にも偏りが生じます。コンクリートの強度は、水セメント比によって決まるので、骨材に偏りが生じても、空隙(隙間)がなければ強度の偏りは生じません。しかし、モルタルが多い箇所は、単位水量と単位セメント量が多いことを意味するので、コンクリートの収縮が大きくなります。コンクリートの収縮が大きいと、ひび割れの生じやすい箇所の発生につながります。そのため、打込み時の材料分離は、極力避けなければなりません。
材料分離が極端に生じたときにできる不具合が豆板(まめいた:ジャンカとも呼ばれる。)です。豆板は、柱の下部によく発生し、コンクリートの打ち始めに、骨材だけが先行し、一か所に集まったときにできます。骨材だけが柱の下部に集まった状態では、いくら振動をさせても、骨材の隙間にコンクリートは入り込めません。豆板の発生を防ぐためには、打込みの段階で、骨材だけが一か所に集まる状況を避けなければなりません。骨材だけが先に流れ落ちるのは慣性力によるもので、斜めにコンクリートを流し込むと生じます。しかし、コンクリートを圧送する工事においても豆板は生じます。図2 の打込みの状況を見ると、骨材だけが集まる状況は想像できません。コンクリート圧送時の段取り替えで、先端ホースから自由落下させた場合に、材料分離が生じやすいので注意が必要です。打込みの基本は、均質かつ速やかに行うことです。図3 に豆板の生じた壁体の事例を示します。
豆板の語源は、干菓子の豆板です。しかし、砕石を用いたコンクリートに発生した豆板は、干菓子の豆板には似ていません。昔の主流であった川砂利を用いたコンクリートに発生した豆板は、干菓子の豆板といっても納得のいく比喩でした。
3. コンクリートの締固めの基本
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 コンクリートの長所と短所
- 第2回 コンクリートの配合設計
- 第3回 コンクリートの製造技術
- 第4回 コンクリートの打設
- 第5回 コンクリートの養生
- 第6回 コンクリートの仕上げ
- 第7回 コンクリートのひび割れ
- 第8回 コンクリート構造物の劣化
- 第9回 コンクリートの長寿命化