前回は、擦り合わせ型開発の基本的な考え方を示しました。基本的な考え方が分かったところで、今回は、構想設計の具体的な手順を学びましょう。
第3回「構想設計の進め方」を解説していきます。
1. 擦り合わせ型開発のおける構想設計の手順
開発初期段階の構想設計全体フローを図1 に示します。品質表の作成、技術手段抽出表の作成、全体構想のまとめ、モジュール開発目標の設定、モジュール開発計画という流れです。各ステップについて説明していきます。
1:品質表の作成
品質機能展開(QFD:Quality Function Deployment)という手法を用いて、顧客の要求品質と設計の特性を対応させ、技術的な課題を整理します。そのために品質表と呼ばれるマトリクスを作成します。ここでは詳細な説明は省きますが、顧客要求と技術的特性をそれぞれ要素に展開し、両者をマトリクスの軸にしてその対応関係を記述します。レーザープリンタの例の一部を表1 に示します。
2:技術手段抽出表の作成
品質表を作成すると、各技術特性が相反したり、単独では決められない特性がかなり出てきます。それをどうするかが課題になります。そこで表2 のような技術手段抽出法を作成します。
・要求品質・要求レベル・現状
要求品質を定量化可能なレベルまで展開し、要求レベルと現状を記載します。
・対応する技術品質
品質表から要求品質に対応する技術品質を全て転記し、要求レベルの達成方法を記載します。この場合、複数の技術品質の組み合わせが必要な場合はそれも同時に記載します。またできるだけ多くのアイデアを上げ、並行して記載します。
・評価
要求に対する効果、副作用、製品コストへの影響、開発工数の評価を行います。出されたアイデアに対して、技術的な難易度、要求項目に対する効果、副作用、製品コスト、開発工数を点数化します。ここでは推測しかできないので、新たな検討結果や情報などがあった場合は柔軟に見直します。
・判断
各評価点を参考に、開発を進めるかどうかの判断をします。この場合、例えば、単純に合計点で決めたりしないようにしましょう。各点数は現時点でのものであり、今後どのように変化するかは不明です。また難易度が非常に高く、多くの開発工数が必要なものであっても、代替手段がない場合はあえて採用する場合も出てきます。
3:全体構想のまとめ
抽出されたアイデア(技術手段)を選択・統合し、目標どおりの性能が得られるか、副作用が発生しないかなどを確認します。製品開発上の制約条件を考慮ながら、技術手段を組み合わせてシステム構想としてまとめます。その組み合わせにより、複数のシステム構想が作成される場合もあります。さらに多くの場合、モジュール(サブシステム)構成に分割します。モジュール構成については後述します。
4:各モジュールの開発目標の設定
システムの仕様とシステム構想に基づいて、システムの課題を各モジュールに配分して、それぞれの開発目標を設定します。これは構想設計の重要な項目です。擦り合わせ型のシステムにおいては、1 つのモジュールに対する目標が決めにくく、逆にいえばいくつものやり方がありえます。その場合でも、元々の設計思想や技術手段抽出表、あるいはその他の情報に基づいて、技術目標を決める必要があります。
5:各モジュールの開発計画を立てる
システム構想を受けて、手段などを具体化して基本設計を行っていきます。すなわち、抽出された達成手段を組み合わせることにより、モジュールとしての目標が満足できるか、副作用などの障害はないかなどのチェックを行います。
基本的な流れは以上のとおりです。開発する製品や状況に応じて柔軟に運用していきます。例えば後工程で検討した結果を前工程にフィードバックし、部分的に見直すことは積極的に行うべきです。
2. モジュール構成
ここでモジュールについて触れておきます。製品システムがある規模以上の構成数になると、分業化が必要になります。そのため、表3 のような基準でモジュールと呼ばれるサブシステムに分割し開発の効率化を図ります。
モジュールが単一の機能を担っている場合は、全体構成が単純になり、組み合わせ型のシステムになります(表4 のa)。それに対してモジュールと機能が一対一に対応していない構成になっていることも少なくありません。この場合は1 つの機能に複数のモジュールが関わっており、擦り合わせ型のシステムになります(表4 のb)。特にこのような擦り合わせ型のシステムで、構想設計が重要になります。
3. フロントローディング開発と、その効果
全5回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 擦り合わせ型開発と組み立て型開発
- 第2回 擦り合わせ開発の成功のための考え方
- 第3回 構想設計の進め方
- 第4回 VEを使ったコスト見積もり
- 第5回 構想設計の見直し方