前回は、クリーン化の観点から、設備を 3 ステップで診断する方法などを解説しました。今回は、いよいよ最終回です。クリーン化の事例と、クリーンルームの地震対策などを紹介します。
第6回「クリーン化の事例と安全対策」を解説していきます。
第6回もくじ
1. クリーン化の事例
筆者がクリーン化のコンサルティングをする中で、見てきた 3 つの事例を紹介します。小さく地道な取り組みが、思いがけないほど大きな成果を生み出すことがありました。また、好ましくない事例もありました。
1:掲示物の貼り方を徹底的に整えた事例
中国の蘇州にある工場を訪れた時のことです。図 1 のように、廊下の掲示がきれいに整えられてることに驚き、社長に質問しました。以前は長いこと貼ったままの掲示物が多く、古くて汚れたもの、破れたものが目立っていたそうです。そこで、掲示の目的・意味を考え直し、人が見たくなる掲示物を目指すことにしました。職場入り口の掲示物は、半月ごとに更新。掲示物が貼りっぱなしにならないルールを定めました。また掲示物は、水平、垂直、直角に貼ることを、半年以上、徹底的に指導し続けたそうです。
当初の社長の狙いは、掲示物を刷新し美しく貼ることでした。しかし、この取り組みを続けることで、物を水平、垂直、直角に整頓するという意識が、会社や従業員に浸透していきました。そのうち、工場でカバーが斜めに取り付けられている、電気の配線が垂れ下がっている、台車がぶつかった後に設備の位置がずれているなど、水平、垂直、直角から外れるものは全て異常だと判断し、管理監督者に報告するようになったそうです。管理監督者が報告のたびに、少しオーバーなくらいに褒めたところ、さらに沢山報告して来るようになったといいます。これらの報告に対して対策を打っていったところ、微小災害の減少につながりました。掲示物を徹底して整理整頓しただけで、従業員の意識に変革が起こり、現場の改善につながった事例です。
2:社長自身が率先して活動した事例
インドネシアのとある工場で、赴任して日の浅い社長に聞いた話です。まずは現場状況を把握しようと、見回りで工場に立ち入ったところ、ゴミがたくさん落ちていることに気が付きました。社長は作業者に掃除の指示をするのではなく、毎日ビニール袋を持って、自分でゴミを拾って歩いたそうです。それを見た現地の管理職や作業者が近寄ってくると、ゴミが落ちていてはいけないと、繰り返し説明しました。やがて、作業者たちも自発的にゴミを拾いだし、工場は自然ときれいになりました。社長が、自分の行動を従業員に見せることで人材を育てた例です。
3:クリーンルームを過信していた事例
中国の無錫にある工場を、診断した時のことです。構内を案内された時、廊下の非常ドアの隅に外が見える小さな穴があることに気が付きました。せっかくクリーンルームを設けていても、外からの異物が入り込む可能性があります。案内をしてくれた技術者は、「クリーンルームや廊下の気圧は、屋外より高い。よって、外からのゴミは侵入しないので大丈夫だ」と回答しました。しかしこの地域には、黄砂混じりの強烈な風が吹く時期があります。また、虫が入ってくることもあるでしょう。
簡易的に作った乱流式のクリーンルーム内で、クモの巣や昆虫を何回か見かけたことがあります。虫は光(紫外線)に近づこうとする性質があるので、小さな穴から漏れ出る光に近づき、クリーンルームに入り込んでしまいます。また小さな穴から漏れ出る空気も虫にとっては大きな情報です。歩行性の虫は入ってきます。クリーンルーム内に餌はないので、虫はやがて死にます。しかし虫が持ち込んだ微粒子と死骸が、ゴミとなって舞い、製品の品質に影響を与えます。
2. クリーン化と安全対策
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 クリーン化の本質とは
- 第2回 クリーン化成功のポイント
- 第3回 クリーンルームの定義と正しい運用方法
- 第4回 クリーン化活動の推進法
- 第5回 クリーン化の設備診断
- 第6回 クリーン化の事例と安全対策