前回は、クリーンルームの定義、清浄度クラスの考え方、運用のポイントを解説しました。今回は、高いレベルでクリーン化活動を推進し続ける方法の一つとして、3 ステップのクリーン化活動の推進法を紹介します。
第4回「クリーン化活動の推進法」を解説していきます。
第4回もくじ
1. クリーン化活動の 3 ステップとは
クリーン化活動の 3 ステップとは、クリーン化活動の基盤を強化し、継続的にクリーン化活動をレベルアップさせる手法です(図 1)。現場のクリーン化活動は、やみくもに行うのではなく、この 3 ステップで取り組むとスムーズに実行・継続しやすくなります。
メリットは、3 ステップで 1 サイクルという簡単な工程で覚えやすく、作業者全員が内容をすぐ理解・共有できる点です。ステップ 3 を終えた後、再びステップ 1 に戻って活動を繰り返すことで、クリーン化活動の基盤強化、レベルアップが期待できます。各ステップを解説します。
・ステップ 1:清掃、整理、整頓
ステップ 1 では、クリーン化の基本である掃除(清掃、整理、整頓)を行います。ステップ 1 の工程は、安全の確保と事前教育、担当ゾーン・担当設備の決定、清掃手順書の作成、不用品の一掃・整頓、徹底清掃の 5 つです。それでは、各工程を解説します。
1:安全の確保と事前教育
本格的な清掃の前に、とても大切な準備があります。安全の確保と事前教育です。これをせずに一斉清掃を指示すると、けがや事故が発生しかねません。例えば薬液を使ったクリーニングでは、保護眼鏡や前掛け、専用の手袋を準備・着用します。脚立を使う時は、必ずロックをかけ、補助者が脚立の足を支持する必要があるため、2 人 1 組体制にしましょう。ヘルメットも必要です。
さまざまな安全教育の場面で引用される、ハインリッヒの法則を紹介しましょう。アメリカの損害保険会社の安全技師だったハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが唱えた、事故、災害の発生確率のことです。1件の重大な事故・災害が発生した時、その背後には 29 件の微小な事故・災害があり、さらにその背後には、300 件ものヒヤリ・ハット(事故には至らなかったものの、ヒヤリとした、ハッとした事象)があるというのです(図 2)。
管理・監督者は、作業者の「今日は脚立から落ちそうになった」、「作業台の間に指を挟みそうになった」というヒヤリ・ハット事例を、聞き逃してはいけません。1 件の重大事故へとつながる可能性があるからです。また清掃時も、管理者は安全に清掃が行われているか見回りをします。自分の問題として真剣に取り組み、対策を施し、きちんと作業員にフィードバックを行い、事故を未然に防止しましょう。
2:担当ゾーン・担当設備の決定
専門知識が必要な電装系の清掃は、担当者以外は絶対に手を出してはいけません。事前に担当ゾーン、担当設備を分けることで、責任感を持って掃除に当たらせる効果もあります。
3:清掃手順書の作成
清掃の手順は、あらかじめマニュアル化しましょう。この中に、安全に関する項目を加え、清掃と合わせて安全対策を指導することも大切です。
4:クリーンルーム内の不用品の一掃・整頓
クリーンルームの要件(参考:第 3 回)の一つに、平滑な床・壁(ゴミ・汚 染物質などが付着しにくい)にすることがあります。不用品が持ち込まれ、そのまま置かれることで平滑な部分が減少し、気流の乱れやゴミだまりができます。不用品は極力、室外に排出し、必要最低限にしたルーム内の保管物も整頓します。
5:徹底清掃
事前準備が整ったら、いよいよ掃除を始めます。久々に掃除するところや、特に汚れのひどい場所は、人員と時間を割いて徹底的に掃除しましょう。徹底清掃で苦労すると、また同じように汚して、後々大変な思いをするのは嫌だという心理から、定期清掃時にその場所を掃除する意識が生まれ、クリーンな状態の維持・管理につながります。
また徹底清掃後は、ゴミの発生源を特定する機会でもあります。1 度クリーンな状態にすることで、次にゴミが出た時、どのようなゴミが、どのような経緯でたまるのかを観察できます。その経過から、ゴミの発生源を特定できるはずです。ゴミ発生源の特定対策として、光を用いたゴミの発見方法と、ゴミの分析方法があります。この 2 つの具体的な内容は、詳しく後述します。
・ステップ 2:ゴミの発生源対策、改善の実施
ステップ 2 では、ステップ 1 で見えてきたゴミの発生源に対し、具体的な対策を取ります。ステップ2の工程は、ゴミ発生源の対策、クリーンルームの 4 原則の実施、清掃困難箇所の対策、設備・機器の劣化復元、摺動部・振動部対策の 5 つです。各工程の詳細を説明します。
1:ゴミ発生源の対策
ステップ 2 で最も大切なことは、ゴミ発生源の元を断つことです。それが不可能な場合は、飛散防止策を考えます。遠くにゴミが飛散するのを防ぎ、狭いエリア内でゴミを処理します。これができれば、清掃場所が狭い範囲で済み、汚染の拡大を防ぐことができます。実際の現場では、飛散防止策を取りながら発生源対策をするなど、並行した取り組みが求められます。
2:クリーンルームの 4 原則の実施
クリーンルーム最大の汚染源は、人間です。清浄度の確保で最も重要なのは、人間をどう管理・制御するかです。クリーンルームの 4 原則(参考:第 3 回)の各項目と実情を照らし合わせ、間違った運用を行っていないか具体的に洗い出し、改善に取り組みます。
3:清掃困難箇所の対策
清掃をする場合、どうしてもやりにくい箇所が出てきます。手が届かない、その場に適した清掃用品(設備と床の伱間の清掃用具、最適なワイパー、設備の狭い部分の清掃用具など)が不明、清掃箇所に危険が伴うなどの場合です。これらを放置せず、清掃困難箇所として拾い上げ、管理・監督者、技術・品質・保全部門に相談し、具体的な対策を考えましょう。
4:設備・機器の劣化復元
設備や機器の劣化部分をそのままにしておくと、さびや金属粉の発生、塗装粉の飛散など、ゴミの発生につながります。劣化部分に意図せず触れた場合に、けがをする恐れもあり、安全面でも問題です。また劣化した部品の継続使用、摺動(しゅうどう:機械・装置の一部を滑らせながら作動させること)部分の変形放置は、設備の誤作動・停止、さらに品質低下の原因にもなります。清掃時に発見した場合は、すぐに復元しておきましょう。容易に復元できない場合は、清掃困難箇所と同様に、関係部門に相談します。
5:摺動部・振動部対策
摺動部や振動部は、発じんします。特に製品の加工や搬送部での発じんは、品質に影響することもあるので、よく観察します。不具合は即座に改善・対策を行い、常に良い状態を維持しましょう。
ステップ 2 の 2 ~ 5 の工程では、技術や保全、電気関係など、専門知識を持った作業者と、クリーン化活動の推進担当者との協働が必要です。各部間との連携体制を整え、情報の共有化を進めましょう。
・ステップ 3:標準化、定着化
ステップ 3 では、クリーンな状態を維持するため、一連の流れを標準化し、定着化させます。ステップ 3 の工程は、クリーンルーム管理の定着化、清掃ルールの標準化、全員活動の定着化、スパイラルアップの4 つです。それでは各工程の詳細に移りましょう。
1:クリーンルーム管理の定着化
クリーンルームを良い状態で維持・管理していくには、定期的な清浄度の確認、清掃の実施など、やるべきことがたくさんあります。具体的に、4 つの実施内容を説明します。1 つ目は、清浄度を維持・向上させるための基準が明確になっており、全員がそれを把握し、実行することです。2 つ目は、汚染の有無を絶えず管理することです。問題となる汚染が起きたら、その原因を究明し、発じん量を低減させる対策を行います。3つ目は、不良解析の結果から、品質・歩留まりに影響していることが明確になった工程について、特に管理方法を標準化し直し、継続的に実施することです。最後の 4 つ目は、整理整頓の定着です。これらの手を抜き始めると、クリーンルームの清浄度はどんどん低下します。作業者が必要性を理解し、作業を定着化させることが大切です。
2:清掃ルールの標準化
清掃にはどんな道具を使い、どのような手順でどう行うのか、清掃時間や清掃の頻度はどのくらいかなど、清掃ルールを定めましょう。これらは清掃のポイント、コツなどとともに清掃手順書に記載します。誰がやっても安全に、しかも同じ清掃時間で同じ清掃品質が得られるようにしましょう。継続する中で不具合があれば、その都度、清掃手順書の改定を実施し、レベルを上げて行きます。
3:全員活動の定着化
活動の定着には、意識の変革と努力が必要です。クリーン化の推進担当者だけでなく、作業者全員を活動に参加させ、清掃意識を定着化させましょう。
4:スパイラルアップ
3 ステップが終了したら、全工程を見直し、ステップ 1 で作成していた清掃手順書を改訂します。全ての製造現場に適用する共通の清掃手順書は、存在しません。現場で試行錯誤し、自社に合った清掃方法を見つけ、手順書をブラッシュアップしていきます。これを繰り返し、クリーン化活動をより効率的で効果的なものへと磨いていきましょう。
2. ゴミを見つける方法
クリーン化の 3 ステップにおいて、ゴミの内容を分析し、発生源を特定する作業はとても重要です。小さなゴミでも簡単に見つけることができる斜光観察を紹介します(図 3)。
斜光観察とは、ゴミに斜光を当て、長い影を作って目立たせる方法です。斜光を利用すれば、肉眼では見つけにくい小さなゴミ(落下じん)も、簡単に見つけることができます。例えば、直上に太陽がある真昼には、自分の影はほとんどできません。斜光を受ける夕方には、自分の身長より何倍も大きな影ができます。この状況を、人工的に作り出しているのです。この手法をうまく使えば、筆者の経験では 3 ~ 10μm 程度の大きさのゴミまで、見つけることができます。なお半導体、表示体、水晶などの事業では、写真技術を用い、製品を加工する工程があります。この工程では紫外線をカットする必要があるので、黄色いフィルタを付けた懐中電灯を用いるのが一般的です。
また、19 世紀イギリスの物理学者ジョン・チンダルが発見した、チンダル現象も小さなゴミの発見に応用できます。チンダル現象とは、光の通り道に障害物があると、光が白く濁って見える現象です。身近な例では、朝方や夕方など、日光が大気に斜めに当たる時、飛散しているほこりなどが見えやすくなる現象です。これを利用し、空気中のほこり(浮遊じん)を可視化する方法も有効です。
3. ゴミ分析方法のコツ
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 クリーン化の本質とは
- 第2回 クリーン化成功のポイント
- 第3回 クリーンルームの定義と正しい運用方法
- 第4回 クリーン化活動の推進法
- 第5回 クリーン化の設備診断
- 第6回 クリーン化の事例と安全対策