前回は、クリーン化活動を成功させ、企業に定着させるためのメソッドを解説しました。今回は、クリーンルームの基礎知識から運用方法までを取り上げます。クリーンルームの清浄度を最大限に保つためには、正しい知識とルールの徹底が不可欠です。
第3回「クリーンルームの定義と正しい運用方法」を解説していきます。
1. クリーンルームとは
1:クリーンルームの定義
クリーンルームとは、空気中のゴミ・汚染物質、差圧、温湿度、気流の分布・形状・速さなどを、一定の範囲に制御するために積極的な措置を取っている部屋のことです(図 1)。クリーンルーム内の清浄度は、外部から空気を取り込み、ろ過すると同時に、内部の汚れた空気の排気を行い、空気を置換もしくは希釈することによって保たれます。屋外の外気から建物内、準クリーンルーム、クリーンルームと、段階を追って清浄度が高くなります。
クリーンルームには、4 つの要件があります。平滑な床・壁(ゴミ・汚染物質などが付着しにくい)、循環空気システム(局所排気装置)とHEPA フィルタの設置、温湿度制御用の空調設備の設置、エアシャワー・パスボックスの設置です。
HEPA フィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、ガラス繊維のろ紙でできた高性能フィルタのことです。JIS B 9927:1999 クリーンルーム用エアフィルタ性能試験方法素材で規格が定められています。パスボックスとは、クリーンルーム内に物品を出し入れするための専用設備です。2 つの更衣室、エアシャワーについては第 2 回のクリーンルーム入室までの流れを参照してください。
2:クリーンルームの清浄度クラス
クリーンルームの清浄度は、クラスで表します。日本では清浄度クラスの規格は、米国連邦規格(Fed.Std.209E)と、ISO14644-1:2015 Cleanrooms and associated controlled environments の 2 つが主に用いられています(表 1)。なお、米国連邦規格では、1ft(約 28.3リットル) 3の体積中の粒子個数を見るのに対し、ISO では 1m3 の体積中の粒子個数を見ています。日本では、米国連邦規格を継続して採用している企業が大半です。
アメリカからクリーンルームやその管理技術が伝わった日本では、1963 年に制定された米国連邦規格を清浄度の規格として採用してきました。その後、1999 年に ISO が国際的な統一規格として制定され、米国連邦規格は 2001 年に廃止されました。米国連邦規格に慣れ親しんできた日本では、ほとんどの企業で 2001 年以降もクリーンルームの清浄クラスを慣例的に同規格で表記、運営しています。今後も当面は、米国連邦規格を継続使用する企業が多いと思われます。
日本独自の規格としては、JIS B 9920:2002 クリーンルームの空気清浄度の評価方法があります。ISO に準拠した規格になっていますが、JIS では ISO の 2015 年改訂に合わせた変更は行われていません。
2. クリーンルームの構造・方式と特徴
クリーンルームの方式には、高い清浄度が要求される場合に適合する垂直層流方式、垂直層流方式ほどの清浄度は要求されない場合に適合する乱流方式、一方の壁全面に取り付けたフィルタから清浄な空気を給気する水平層流方式、混流方式、トンネル方式など、さまざまな方式があります。今回は、この中でも採用頻度の高い垂直層流方式と、乱流方式を解説します(表 2)。
1:垂直層流方式
垂直層流方式のクリーンルームは、大量の給排気を行い、清浄度の高い空気に置換することで清浄度を保ちます。全面がフィルタになった天井から給気された空気は、まっすぐに穴あきの床へと流れ落ち、排気されます。空気の流れを乱さないように生産設備、搬送・除給材用のロボットを設置し、入室人員を最小限にする運用がよく見られます。メリットは高い清浄度の維持、デメリットは空調関係の運転費(ランニングコスト)が高額となる点です。
2:乱流方式
乱流方式のクリーンルームは、垂直層流方式に比べると少ない給排気量で、汚れた空気を少しずつ希釈して清浄度を保ちます。天井の給気口から供給された空気は、室内に滞留している空気とぶつかり、乱流になります。
3. クリーンルームの清浄度を維持する運用方法
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 クリーン化の本質とは
- 第2回 クリーン化成功のポイント
- 第3回 クリーンルームの定義と正しい運用方法
- 第4回 クリーン化活動の推進法
- 第5回 クリーン化の設備診断
- 第6回 クリーン化の事例と安全対策