製造業におけるクリーン化とは、製造現場のちりやほこりなどの微細なゴミを減らし、製品品質を向上させることです。市場に出てから品質問題が発生すると、回収、補償に膨大な費用がかかり、企業の信用まで失いかねません。本講座では、製造現場の改善手法の一つであるクリーン化活動を、6 回にわたって解説します。初回となる今回は、クリーン化の歴史とクリーン化によるメリットについて学びましょう。
第1回「クリーン化の本質とは」を解説していきます。
第1回もくじ
1. クリーン化の歴史
製造業におけるクリーン化の重要性は、いつ認識されたのでしょうか。それは第二次世界大戦や朝鮮戦争の頃です。米国の軍需産業では電子・精密機器が頻繁に故障し、膨大な費用が国防予算を圧迫していました。実はその原因の多くが、製造時に混入したちりやほこりなどの微細なゴミだったのです。この問題改善のため、品質向上の一環としてクリーン化が意識されるようになりました。
その後、米国で半導体が開発・製造され、やがて日本でも生産が始まりました。日本の半導体製造初期には、開発職も含め全員で清掃に取り組んでいました。一方、当時の米国では、掃除は大卒エンジニアの仕事ではないという認識の下、清掃活動は日本ほど行われていませんでした。日本の大手企業は、組織的に清掃をやり続けたこともあって歩留まりが向上し、先行していた米国の歩留まりに肩を並べ、さらに追い越した時期がありました。日米半導体摩擦(1980 年代)、日米半導体戦争(1986 ~ 93 年)と呼ばれる時代です。
このように、ゴミに起因する製品不良率が企業全体の利益に大きな影響を与える半導体製造業では、クリーン化の技術こそが利益創出の根源であり、企業の競争力となったのです。体質の強い企業は社内でクリーン化技術を磨き、他社には門外不出としていました。最近では、東南アジアの製造業がクリーン化を重視し、技術を日々進化させています。
2. クリーン化のメリット
クリーン化によるメリットは、大きく3 つに分けられます(図1)。製品歩留まりの向上、顧客の信頼度向上、効率的なメンテナンス・予防保全といったメリットを、それぞれ具体的に見ていきましょう。
1:製品歩留まりの向上
クリーン化によるメリットの1 つ目は、製品歩留まりの向上です。クリーン化の歴史でも説明したように、ゴミに起因する製品不良が少なくなることで、歩留まりが改善し、利益が向上します。利益の向上は、企業の競争力の根源となります。製造現場から利益を創出すると考えることは大切なことです。
ある会社の事例を紹介します。その会社では、最終検査工程で良品、不良品の判定をしていました。不良品はあまり出ないので、作業性を考慮して良品用の容器を手前に置き、不良品の発生時に不良品の容器を手前に引きずって出していました。すると、引きずる際の摩擦で、作業台に印刷されていた不良品の不の字が削れてしまったのです。気付いた時には不良品と良品が混じって次工程に流れていて、歩留まりの低下を招きました。容器を引きずると作業台や表示が削れてゴミが出る、容器の底が汚れてしまうといったクリーン化の観点で現場をチェックしていたら、この事象を防ぐことができたでしょう。
2:顧客の信頼度向上
クリーン化活動を継続し、自社製品が客先や市場に出る前に、品質問題の発生、流出を防ぐことが重要です。自社製品を顧客に渡した後に品質問題が発生すると、回収や補償のため多額の費用が必要になります。顧客の信頼を損ね、取引を失うかもしれません。一方で、製品品質を向上させ、顧客が喜べば取引継続の可能性も高まります。また、自分たちが作った製品で喜んでいる人が増えれば、自社の従業員満足度が向上します。品質監査などで自社現場を見た顧客が、現場のクリーン化を評価してくれれば、さらにモチベーションが高まります。
3:効果的なメンテナンス・予防保全
設備や機器の細かいところまで、徹底して掃除することで、結果として設備の細部まで目が行き届くことになります。これにより、不具合を起こしそうな箇所を把握し、メンテナンスや予防保全活動を効率的に進めることができます。その結果、設備を長く使えるようになり、設備費を削減できます。最終的には、製品のコストダウンにつながります。
予防保全活動は、現場作業者にとって仕事が増えるため、敬遠されることがあります。しかし、現場をきれいにしましょう、そのために設備や機器の周りの汚れも落としましょうと声掛けをすることで、活動への抵抗感を低減できます。予防保全活動の習慣化が難しいと考えている現場リーダーは、まずは掃除を習慣化してみることをお勧めします。
3. クリーン化の本質
クリーン化は、モノづくりを支える基盤です。図2 は、製造現場を米作りに例えたイメージ図です。生産技術や生産管理、設計開発の業務だけでも米を作ることはできます。しかし、よりおいしい米を作るには、稲の基盤である土をしっかり作らなければなりません。クリーン化はそのために必要な活動であり、地道な活動を継続することで、現場体質は強化され、企業の競争力が高まります。
いかがでしたか? 今回はクリーン化の歴史と、クリーン化によるメリットをお伝えしました。次回はクリーン化を成功させるためのコツを紹介します。お楽しみに!
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 クリーン化の本質とは
- 第2回 クリーン化成功のポイント
- 第3回 クリーンルームの定義と正しい運用方法
- 第4回 クリーン化活動の推進法
- 第5回 クリーン化の設備診断
- 第6回 クリーン化の事例と安全対策