前回は、キャラクタリゼーションの概略を紹介しました。今回は、X 線によるキャラクタリゼーションについて解説します。X 線を用いることで、物質の構造や状態を、原子レベルで知ることができます。
第7回「X線を用いたキャラクタリゼーション法」を解説していきます。
1. 波と粒子―量子論が教える二面性について
X 線は、波長の短い電磁波です。その波長は、約 0.01 ~ 100nm で、分子や原子の大きさが含まれます。一方で、X 線は光子という素粒子であると考えることもできます。これが、量子論で習う光の二面性です。光は波であり、(素)粒子です。そのため、光について話をすると、波としての性質である波長(λnm)と、光子としての性質であるエネルギーE(eV) の間を行ったり来たりすることになります。以下の式は、波長とエネルギーの両方をつなぐ、とても重要な関係式です。
h とνは、それぞれプランク定数(6.626×10 -34 J・s=4.136eV・s)と周波数です。eV はエネルギーの単位で、1V の電位差で電子 1 個がもらうエネルギーを示します。このため、X 線は 10eV ~ 100keV の光子でもあります。
X 線を用いたキャラクタリゼーションでは、X 線を波として考えているか、光子として考えているかを意識することが大事です。中でも、ブラッグの条件(波)と、エネルギー保存則(光子)の 2 つの式は、キャラクタリゼーションを行う場合に知っておくべき基本の式です。これらの式がどのように使われるか、X 線回折法、X 線光電子分光法で、それぞれ見ていきましょう。また、最後に、この 2 つの性質を組み合わせた XAFS(X 線吸収微細構造法)について解説します。
2. X 線回折法
波の性質を利用しているときは、波長が主人公となります。回折現象を利用し、物質の周期構造を調べる手法になります。物質に X 線を入射すると、波は散乱され、さまざまな方向に飛んでいきます。物質に結晶のような周期性があると、以下のブラッグの式で表される方向に強く散乱されます。この強く散乱されることを、回折と呼びます(図 1)。
2dsinθ=λ
ここで、θと d は、それぞれ回折が起こるブラッグ角と格子定数です。回折角から格子間隔、すなわち結晶の規則性が分かります。これが X線回折法です。
さらに詳細に解析を進めると、単結晶の場合には、原子座標が求められます(単結晶 X 線解析法)。単結晶でなくても、粉末微結晶では、リートベルト(Riedveld)法で原子座標を求めることができます。一方で、触媒の多くは金属微粒子です。この場合、PDF(Partial DistributionFunction)法により、結合距離を決めることができます。もう一つ重要な情報として、ピークの幅からシェーラの式を使い、結晶子のサイズや粒子径を推定できます。
3. X 線光電子分光
4. X 線吸収スペクトル(XAS)
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 触媒とは?
- 第2回 身近なところにある触媒
- 第3回 金属錯体触媒
- 第4回 不均一触媒
- 第5回 不均一触媒の反応例
- 第6回 キャラクタリゼーションの基礎
- 第7回 X線を用いたキャラクタリゼーション法
- 第8回 未来の触媒