鋳造(ちゅうぞう)は、溶かした金属を鋳型に流し込み、冷やして固める加工法です。金属に力を加えなくても、鋳型(いがた)通りの形状に仕上げることができます。大量生産のモノづくりに向いた加工法であり、私たちの身の回りには鋳造によって作られた多くの製品があります。本連載では8回にわたり、技術者に必要な鋳造加工の基礎知識を解説します。第1回では、他の加工法との違いや歴史などから鋳造の特徴を紹介します。
第1回「鋳造加工の特徴と材料」を解説していきます。
1. 鋳造の特徴
金属の加工方法には多くの種類があり、製品の形状や用途により使い分けられます(表1)。
鋳造加工は、融点より高い温度で溶かした金属を、作りたい形と同じ形の空洞部を持つ型に流し込み、冷やして固める加工方法です。この型を鋳型と呼び、砂を固めた砂型、金属を加工した金型、石こうを固めた石こう型などの種類があります。また、鋳造によって作られた製品を、鋳物(いもの)といいます。
金属を成形するという点で、鋳造加工と鍛造加工はよく比較されます。鍛造加工で作られた製品は、塑性変形により素材の鋳造組織が破壊され、メタルフロー(金属粒子が整列した状態)が形成されます。組織が緻密で内部欠陥がなく、鋳物よりも高い強度が得られます。しかし、加工工数が多いため、鋳物と比べてコストが高く、複雑な形状の成形も困難です。一方、鋳造の最大の特徴は、溶融金属を用いるため、形状の自由度が高いことです。複雑な形状の製品でも、容易に成形可能です。また、溶融可能なあらゆる金属に適用でき、型さえ作ることができれば、どんなに大きな鋳物も成形できます。大量生産も特徴の一つです。型の種類によっては、1 つの鋳型で数万個の鋳物の生産が可能です。
鋳造の欠点は、溶融金属が冷えて固まることです。体積が収縮して鋳型内部に空洞ができたり、型に溶融金属を流し込む前に固まったりすると、欠陥品が発生する恐れがあります。そのため、製品に欠陥がないか、品質管理を徹底する必要があります。
2. 鋳物の材料と用途
鋳物に使われる材料には、鋳鉄、鋼、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、ニッケル合金、チタン合金などがあります。表2に、鋳造に使われる材料とその用途例を示します。
3. 身近な鋳物製品
溶かした金属材料を型に流し込む鋳造加工は、複雑な形状の部品も簡単に作ることができます。そのため、機械や建築の部品、日用品、美術工芸品など、私たちの生活の至るところで使われています(図1)。
屋外で使用される代表的な鋳物に、道路のマンホールのふたがあります。これは鋳鉄鋳物です。エスカレーターのステップや信号機はアルミニウム合金鋳物、お寺の仏像や釣り鐘は銅合金鋳物です。家屋にも多くの鋳物が使われています。門扉やフェンスはアルミニウム合金鋳物、水道の蛇口は銅合金鋳物、ドアノブは亜鉛合金鋳物です。
身近な製品でも鋳造加工は用いられています。ノートパソコンやデジタルカメラの筐体はマグネシウム合金鋳物です。フライパン、鉄瓶、すき焼き鍋などは鋳鉄鋳物、ゴルフクラブのヘッドはチタン合金鋳物です。
自動車の部品も鋳造加工で作られています。エンジン部品であるシリンダーヘッド、シリンダーブロック、オイルパンはアルミニウム合金鋳物です。クランクシャフト、カムシャフト、ブレーキは鋳鉄鋳物、タイヤホイールはアルミニウム合金鋳物でできています。
4. 鋳物の歴史
人類が鋳造を始めたのは、紀元前4,000年頃のメソポタミア地方といわれています。溶かした銅を型に流し込んだのが始まりです。紀元前3,000年頃のメソポタミア南部で、シュメール人による人類最古の絵文字が描かれた粘土板が残されています。その中に、鍛冶工や銅を意味する文字が見つかっています。また、チグリス・ユーフラテス川の上流は、銅鉱石の産地であり、シュメール国王たちの墓からは、青銅製の武器や装飾品が出土しています。メソポタミア地方で始まった鋳造は、次第にヨーロッパやアジア各地にも伝えられました。
紀元前2,000年以降には、ふいご(送風装置)が発明されました。エジプトのテーベ遺跡で出土したパピルスには、足踏みふいごで、るつぼ内の銅を溶解し、扉を作る鋳造の様子が描かれています。鉄の鋳造は、紀元前700年頃の中国大陸で始まったとされています。中国大陸では、それに先立つ紀元前2,100~紀元前1,600年頃の遺跡から、土器類とともに青銅器の破片が発見され、銅合金鋳物が作られていたことが分かっています。その後、春秋時代(紀元前770~紀元前475年)に鉄の精錬が始まり、鉄器が使用されました。また、河北省で鎌の鉄鋳型が出土したことから、この頃すでに、鉄の鋳造が行われていたと考えられます。
日本には、紀元前300年頃、南朝鮮から北九州の海岸地帯に、弥生式土器の文化が伝わりました。これとともに、青銅器と鉄器が同時に日本に渡来したと考えられています。日本で鋳造が始まったのは紀元前100~紀元後100年頃といわれ、銅たく、銅鏡、刀剣などが作られました。奈良時代になると、仏像や釣り鐘が盛んに作られ、平安時代の半ばには日本各地に鋳造技術が広がりました。
いかがでしたか? 今回は、鋳造加工の特徴と、身近な鋳物製品、また鋳造の歴史を紹介しました。次回は、鋳造加工の種類を解説します。お楽しみに!
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 鋳造加工の特徴と材料
- 第2回 鋳造加工の種類
- 第3回 鉄系鋳造材料の種類
- 第4回 非鉄系鋳造材料の種類
- 第5回 砂型鋳造とは?
- 第6回 金型鋳造とは?
- 第7回 鋳巣の種類と検査方法
- 第8回 鋳物の設計