前回は、段ボール箱の特性を説明しました。段ボールの包装設計は、形式、材質、寸法を決めて終わりではありません。輸送包装として問題がないことを、包装貨物試験などによって検証する必要があります。本連載の最終回は、段ボール包装においてよく行われる包装貨物試験について、JIS の方法を中心に解説します。
第6回「主な包装貨物試験方法」を解説していきます。
1. 圧縮試験
段ボール箱の圧縮試験は、一般に、JIS Z 0212 包装貨物および容器-圧縮試験方法に準じて行います。圧縮試験には、圧縮試験機を用いた方法と、所定時間、静的な積み重ね荷重を加える方法があります。
・圧縮試験機を用いた試験方法
試験機、段ボール箱の圧縮試験の様子、段ボール箱が座屈した状態を、図1、2、3 に示します。また、JIS Z 0212 では、方法A、方法B の2 つの試験方法を規定しています(表1)。いずれも圧縮速度は10±3mmで、供試品の数は、方法A では3 個以上、方法B では5 個以上が望ましいとされています。
方法A では、圧縮試験機で所定荷重を加えた後、直ちに包装貨物を取り外して、内容品の破損などを調べます。方法B では、最大圧縮荷重(N)や圧縮量(mm)を測定します。段ボール箱では、特に空箱の圧縮強さを知ることが重要なので、方法Bを行うことが多くなります。また、静的な荷重を所定時間加える積み重ね荷重試験(後述)を行って、内容品や段ボール箱の状態も調べます。
・初期荷重
圧縮試験では、圧縮量の起点(初期荷重)を定めておくことが必要です。圧縮量とは、圧縮荷重-変位曲線における初期荷重からピークトップ(最大圧縮荷重)までの変位を意味します(図4)。初期荷重は、方法A では、適用荷重の範囲によってそれぞれ決められており(表2)、方法B では、両面段ボール箱と複両面段ボール箱でそれぞれ決められています(表3)。その他については、当事者間で決めるとされています。
・方法A における負荷係数
方法A では、所定の圧縮荷重が必要です。JIS Z 0200 包装貨物-性能試験方法一般通則の圧縮試験のページには、圧縮荷重を求めるために必要な負荷係数が記載されています(表4)。なお、この負荷係数は、保管期間や湿度などによって圧縮強さが変化する段ボールなど紙製包装を対象としています。圧縮荷重は、式1 で求めます。
F=9.8×K×M×n …式1
F:圧縮荷重(N)
K:負荷係数
M:供試品の総質量(kg)
n:流通時の最大積み重ね段数(最下段を含まない最上段までの段数)
負荷係数は、3 つの荷重係数の積です。例えば、保証レベル1 の場合、保管条件は、管理:悪い、期間:6 か月、湿度:90%RH であり、荷重係数はそれぞれ2.0、1.9、1.9 と示されています。そして、それらを掛け合わせた数値(2.0×1.9×1.9=7.2)が負荷係数となります。また、保管条件がある程度想定できる場合、荷重係数の組み合わせを変更して、受け渡し当事者間で負荷係数を決めても構いません。例えば、管理:普通、期間:1 か月、湿度:75%RH を想定しているとすれば、1.5×1.7×1.4≒3.6 が負荷係数となります。負荷係数が分かれば、保管時に最下段の箱が支える荷重にそれを掛けることで、圧縮荷重を求めることができます。
・積み重ね荷重試験(JIS Z 0212の附属書による方法)
包装貨物に、静的な圧縮荷重を所定時間加える圧縮試験方法を、積み重ね荷重試験といいます。所定の静的荷重を加えた後、圧縮量と、内容品や段ボール箱の状態などを確認します。その荷重の変動は、±4%と規定されています。
1:試験時間と温湿度条件
前処置として、23℃、50%RH で調湿します。その後、不均衡な荷重を受けないように供試品を圧縮盤の中央に置き、24 時間負荷します。試験中の温湿度条件については言及されていないので、一般には23℃、50%RH で行います。
2:圧縮量
前述の表2 に示す、初期荷重の加わったところを起点として、圧縮量を測定します。また、パレットのデッキボードなどの影響をみる必要がある場合は、補助盤としてパレットなどを圧縮盤と供試品の間に挿入してもよいとされています。
3:負荷係数
JIS Z 0200に、積み重ね荷重試験における負荷係数が記載されています(表5)。方法A の負荷係数と異なる点は、保管条件における湿度の荷重係数だけです。積み重ね荷重試験における荷重係数は、90%RH:1.9、75%RH:1.4、50%RH:1.0 となっています。方法A と同じく、積み重ね荷重試験における負荷係数も、3 つの荷重係数の積です。保管条件がある程度想定できる場合は、組み合わせを変更して受け渡し当事者間で負荷係数を決めても構いません。
4:JIS 以外の試験方法
段ボール箱では、JIS の試験方法以外に、高湿度条件下で、天面に載せた板の上に錘(おもり)を所定時間載せる方法もよく行います。この場合、負荷係数を1とし、圧縮量、胴膨れ量、座屈の有無などを調べます。胴膨れとは、段ボール箱の長さ面や幅面(パネル面)が、荷重と湿度によって円弧状に変形する現象のことで、座屈とは区別しています。初期荷重を加えたときのパネル面の位置から、試験後に最も膨らんだ位置までの距離を胴膨れ量としています(図5)。圧縮量は、床面から上載板までの距離を箱の四隅で測定し、その各変化量を平均して求めます。通常、内容品を入れた段ボール箱を2~3段積み重ねて行います(図6)。試験条件は、例えば30℃、80%RH、24 時間など、受け渡し当事者間で取り決めます。高湿度条件を得るためには、所定の環境条件に設定できる環境試験室(図7)などを使用します。
2. 衝撃試験
段ボール包装の衝撃試験のうち、落下試験は、一般にJIS Z 0202 包装貨物-落下試験方法を参考にします。落下試験には、自由落下試験方法、片支持りょう落下試験方法、衝撃試験装置による等価落下試験方法があります。人力で荷扱いされる場合は垂直自由落下試験を、また、機械で荷扱いされる場合は片支持りょう落下試験を行います。もともと製品衝撃強さ試験のために開発された衝撃試験装置は、自由落下と等価な落下試験の再現が可能なため、等価落下試験方法として包装貨物落下試験に採り入れられています。
JIS Z 0200 包装貨物-性能試験一般通則の衝撃試験のページには、人力による荷扱いの場合は自由落下試験を、機械による荷扱いの場合は方法A か方法B のいずれかを選択して行うとされています(表6)。JISZ 0205 記載の、方法B における水平衝撃試験方法では、包装貨物に水平速度を与えて、衝突面との衝突によって水平衝撃を加える試験機を使用します。試験機には傾斜面試験機、水平面試験機、振り子試験があります。
・自由落下試験
1:試験方法
自由落下試験機には、昇降できるテーブルが備わっています。そのテーブルに供試品を載せ、任意の落下高さに容易に調整できるようになっています(図8)。テーブルは自由落下速度よりも速く傾くようになっているため、載せたときの姿勢のまま供試品を落下させることができます(図9)。供試品を手で支えることが困難な場合、冶具を使います(図10)。
また、寸法の大きい包装や重量のある包装の場合には、つり下げ式自由落下試験機を使用します(図11)。落下試験後、内容品の破損や配列乱れ、さらに内容品の飛び出しや液漏れなどがないかを調べます(図12、図13)。また、必要に応じて衝撃加速度センサを内容品に取り付け、衝撃値が許容される基準以内に収まるかどうかを調べたりもします。
2:落下高さ
自由落下試験の落下高さは、JIS Z 0200 記載の衝撃試験の区分(表7)と総質量によって決まります(表8)。
3:落下順序と回数
直方体容器におけるJIS Z 0200 の落下順序と回数を、表9 に示します。なお、受け渡し当事者間の協定により、りょうと面の落下試験の一部を省略することができ、また、落下順序も変更できます。ただし、落下箇所は、内容品の最も弱いと見られる角と、それらの接するりょうを選定することが望ましいとされています。
・片支持りょう落下試験
JIS Z 0200 における衝撃試験のうち、機械による荷扱いのページには、方法A として片支持りょう落下試験方法が記載されています。落下高さは、衝撃試験の区分(表7)と総質量によって決まります(表10)。底面と幅面に接するりょう(3-5りょう、または3-6りょう)を15cm の台の上に支持し、反対側のりょうを落下させます(図14)。各りょうにつき2回ずつ、合計4 回落下させます。
・水平衝撃試験
JIS Z 0200 の機械による荷扱いの方法B には、水平衝撃試験方法が記載されています。試験機には、傾斜面試験機、水平面試験機、振り子試験機があります。
1:試験方法
傾斜面試験機(図15)には、垂直に対して10±1 度傾いた衝突面をもつ衝撃板、2 本の滑走レール、滑走車を備えている必要があります。水平面試験機(図16)には、垂直に対して1 度以内の衝突面をもつ衝撃板、水平面に固定された2 本の滑走レールと滑走車を備えている必要があります。また、振り子試験機(図17)には、衝撃板、供試品を搭載する長方形の支持台、支持台を懸垂する鋼製の棒、またはロープを備えている必要があります。これらの試験機によって、所定の衝突速度で各パネル面に1 回、計4 回の水平衝撃を加えます。
2:衝突速度
水平衝撃試験の衝突速度(表11)は、JIS Z 0200の衝撃試験の区分(表7)で決まります。
3:JIS 以外の試験方法
JIS とは別に、衝突速度を順次大きくし、内容品が破損するまで衝撃を加える方法で試験を行うこともあります。傾斜面試験機のように、滑走車を斜面で走行させる装置(図18)では、例えば10cm きざみで次第に滑走距離を長くし、内容品が破損するまで衝撃を加えた後、破損が生じたときの距離や破損数などから耐衝撃性を評価します(図19)。
3. 振動試験
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 段ボール原紙
- 第2回 段ボール・段ボール箱
- 第3回 段ボールの製造工程
- 第4回 段ボール包装設計
- 第5回 段ボール箱の特性
- 第6回 主な包装貨物試験方法