前回は、国際航空に関するCO2削減検討の歴史を紹介しました。今回は、航空機の燃費改善を取り上げます。航空機が排出するCO2削減の最初の試みは、燃費の改善にありました。ただし、その主な目的は少ない燃料でできるだけ遠くまで飛ぶことにあり、必ずしもCO2削減を意図した訳ではありませんでした。燃料費を削減できれば、航空機の所有者、利用者にとって大きなメリットとなります。特に石油価格が高騰した1970年代以降、その要求は切実なものとなりました。今後は、CO2削減が燃費改善への大きな要因となるでしょう。
第2回「飛行機の燃費はどのように決まるか?」を解説していきます。
1. 「より速く、より高く、より遠く」を目指した航空機開発
航空機の開発は、近代オリンピックの父と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン男爵が提唱した、「より速く、より高く、より遠く」を目標にしてきたといえます。
図1は、1903年のライト兄弟の機体(1903 Flyer:フライヤー)から今日に至る主な航空機の飛行速度の変遷を示しています。飛行速度は急速に増加し、音速の2倍を超えるコンコルドのような旅客機や戦闘機も開発されました。ただし、時速1,000kmという音速に近い速度になると、急速に空気抵抗が増加し、また、衝撃波によるソニックブームという騒音問題も深刻になります。そのため、現在の旅客機は、全て音速以下で飛行しています。
飛行高度に関しては、ジェット機が開発され、成層圏(雲や降水などの天気現象が起こる対流圏より高度が上の領域)までの飛行が可能です。しかし実際には、翼の揚力で機体を浮上できる航空機であっても、極度に空気が薄くなる高度においては飛行が不可能になります。その意味で、「より速く、より高く」という開発目標は、既に達成されたといえます。
もう一つの目標である「より遠く」に関してはどうでしょうか。図2に、各年代で開発された機体の飛行距離を示します。
この図から読み取れるように、飛行距離は現在に至るまで増加し続けています。最近では、イギリスのヒースロー空港から、オーストラリアのシドニー国際空港、またシンガポールのチャンギ空港からアメリカのニューヨークのニューアーク空港まで、ノンストップで飛行できる旅客機が開発されています。その飛行は、17,000km、飛行時間は20時間にも及びます。このような長距離便を選ぶ人がいるかどうかは別として、技術的には、地球の反対側まで無着陸で飛行する旅客機が既に出現しています。ただし、これ以上遠くまで飛ぶことには、あまり意味がないかもしれません。その場合には、反対方向に飛べばよいためです。
2. 飛行距離を決める技術的要素
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 国際航空のCO2削減計画
- 第2回 飛行機の燃費はどのように決まるか?
- 第3回 燃費向上のための技術革新
- 第4回 機体軽量化のための技術革新
- 第5回 サステナブルな航空燃料SAF
- 第6回 技術を補う経済的スキーム、カーボンクレジット