前回は、有限要素法と有限差分法、境界要素法の特徴と比較を解説しました。今回は、有限要素法を用いたCAE 解析の種類について説明します。ここでは、自由度と有限要素の種類、解析の種類を考察していきます。
第5回「CAE解析の種類」を解説していきます。
1. 自由度の種類
自由度(Degree of Freedom、DOF)とは、要素の節点が動きうる方向のことです。要素の定式化によって要素ごとに定まっています。自由度数(No. of DOF)は、それらをカウントした総数をいいます。
一般に汎用CAE ソフトウェアでは、3 次元空間内に任意の要素を任意の位置に配置できます。そのため、ソリッド要素とシェル要素など、自由度の異なる要素同士を結合させてモデル化した構造物でも解析できる必要があります。そのためには、まず要素を構成する節点の持つ自由度を並進方向3 成分(u e ,v e ,w e ) と回転方向3 成分(θ e x ,θ e y ,θ e z ) に定めます。そして、この自由度を用いて要素座標系[T e ] 上で要素剛性マトリックス[k e ] を計算します。この要素剛性マトリックス[k e ] を、全体座標系(x,y,z) での剛性マトリックス[K] に変換します。これで、全ての要素を全体座標系で扱うことができます。
節点の自由度は、3 次元空間で1 節点6 自由度を仮定しているCAE ソフトウェアが一般的です。2 次元を指定すると、全体座標系x-y 面での設定に限定して処理するANSYS などのソフトウェアもあります。
各節点での重複しない自由度数の総和を全自由度数といい、そこから拘束されている自由度数を差し引いた値を解析自由度数といいます。解析自由度数が解くべき連立方程式の未知数の数になります。例えば、図1 に示す矩形板の引張を考えましょう。2 次元問題とすれば、全自由度数= 節点数4× 節点自由度数2=8 となります。節点1 のx,y 方向と節点4 のx 方向を拘束しているので、解析自由度数=8-3=5となります。
この例を、3 次元空間を仮定するソフトで解析する場合も、必要な解析自由度数は同じです。しかし、z 方向の剛体変位を防止するための拘束が必要になります。また、三角形平板シェル要素の節点自由度は1 節点あたり5 自由度であり、全ての節点が同一平面上にあれば、それらの6 番目の自由度θ z を拘束する必要があります。ソフトウェアによっては、自動的に拘束できるオプションがある場合もあります。
2. 有限要素の種類
要素を形状で分類すれば、線要素、面要素、3 次元ソリッド要素、軸対称ソリッド要素、軸対象シェル要素、明解な形状を持たない機能要素に分けられます。代表的な有限要素の種類を表1に示します。ここで、変位成分(u e ,v e e,w e e,θ e x ,θ e y ,θ e z ) は、それぞれ要素座標系(x e ,y e ,z e ) での並進方向と、それらの軸回りの回転変位です。
前述のように3 次元空間で1 節点当たり6 自由度を仮定しているソフトでは、要素によっては剛性行列の特定の自由度成分が0 となってしまいます。そのため、拘束条件によって剛性マトリックスのそれらの行と列を取り除くことが必要です。例えば、x 軸方向に置かれた1 本のトラス要素の場合、x 軸以外の方向の剛性には0 が入るので、(v,w,θ x ,θ y ,θ z )方向の自由度を拘束することが必要です。
線要素の代表的な要素として、トラス要素とはり要素があり、立体骨組構造などに応用されます。トラス要素は各要素端がピン結合された棒要素で、軸方向の力だけを伝達します。通常は1 節点1 自由度です。Nastran のロッド要素ではトラスに加えて、サンブナンのねじり要素が重ねられており、1 節点2 自由度(u e ,θ e x ) になっています。
はり要素は、トラス要素の軸引張圧縮剛性とねじり剛性に、曲げ剛性を重ね合わせた棒要素です。自由度は1 節点6 自由度で、要素力は3 方向の力(軸力N x とy e ,z e 方向のせん断力F y ,F z )と3 方向のモーメント(軸のねじりモーメントM x とy e ,z e 軸回りのモーメントM y M z )が対応しています。
面要素には、平板シェル要素と曲面シェル要素があります。平板シェル要素は薄板構造や曲面板構造を、1 次要素の三角形・四角形要素によるタイル張りで近似するもので、面内剛性と面外剛性との重ね合わせで定義されます。曲面シェル要素は、これらの構造を中間1 節点の2 次要素である曲面三角形・四角形要素で近似します。そのため形状・変形ともに精度が高くなります。
平板シェル要素では、自由度は1 節点5 自由度(u e ,v e ,w e ,θ e x ,θ e y ) で、要素力は面内方向の合応力(N x ,N y ,N xy ) と面外方向せん断力(F y ,F z ) および合モーメント(M x ,M y ,M xy ) が対応しています。立体板構造で他の板要素と折れ曲がって接続するときには、全体座標系では1 節点6 自由度になります。曲面シェル要素では始めから6 自由度を持ちます。
応力成分は、平板シェル要素では要素座標系で出力されます。しかし、曲面シェル要素では曲面形状に沿った応力座標系で出力されます。そのため、応力リストを読むときには注意が必要です。
3 次元ソリッド要素には、四面体要素と五面体要素、六面体要素があります。Nastran など、内部で要素座標系を定義しているソフトウェアもありますが、一般に応力は基準座標系で出力されます。Nastran の場合、四面体では4 ~ 10 個の節点で、五面体要素では6 ~ 15 個、六面体要素では8 ~ 20 個の節点により構成されています。中間節点は省略可能で、可変節点要素といいます。8 節点の六面体要素では、せん断ひずみ成分の積分に選択的次数低減積分法を用い、精度を高める工夫をしています。
軸対称ソリッド要素には、三角形要素と四角形要素があります。座標系は、対称軸となるZ 軸を縦軸として、半径方向を横軸R と定めます。軸対称シェル要素は、構造が軸対称で、シェル構造である場合に利用できる要素です。全体座標系の取り方は軸対称ソリッド要素の場合と同じです。自由度は1 節点3 自由度(u e ,w e ,θ e ) です。
機能要素とは形状を持たず、特定の機能を実現するための要素です。質量要素、剛体要素、接触要素、ばね要素などがあります。質量要素とは、節点に集中質量を定義する要素です。剛体要素とは、要素と要素を剛体で結合する場合に使用する要素です。内部的には拘束の一種である多点拘束で処理されます。多点拘束とは、ある従属節点の自由度の変位量が、他の独立節点の自由度の変位量の線形結合で表されることを指します。接触要素とは、接触する要素の節点同士がおおよそ分かっているとき、それらの節点間に非線形ばねを定義して、接触現象を実現する要素です。ここでの非線形ばねは、接触前の剛性は≅0 で、接触後は弾性剛性となる特性を持ちます。接触を含む解析は、境界非線形解析ともよばれます。ばね要素は、任意節点の任意自由度間をばね係数で結合する要素です。
3. CAE 解析の種類
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 CAEとは?
- 第2回 有限要素法とは
- 第3回 有限要素法の収束性と誤差
- 第4回 有限要素法と他数値解法との比較
- 第5回 CAE解析の種類
- 第6回 有限要素法のテクニック