今回は、有限要素法について解説します。有限要素法は CAE でよく用いられる解析手法の一つで、解析領域を有限個の単純な形状(要素)に分割し、各要素の方程式を重ね合わせて全体の方程式を解く手法です。深く学びたい方に向けて、線形弾性解析の原理である仮想仕事の原理も取り上げます。
第2回「有限要素法とは 」を解説していきます。
1. 有限要素法とは
有限要素法とは、CAE で用いられる数値解析手法の一つです。解析の対象を細かいメッシュに分解し、有限個の要素に分割して解析を行います(図 1)。Finite Element Analysis の頭文字を取って、FEM とも呼ばれます。
FEM の歴史は比較的新しく、1950 ~ 1960 年代に FEM の各種原理が開発されました。2000 年代に入ると、PC の高性能化・低価格化に伴い、汎用 CAE システムが PC で利用できるようになりました。これにより、設計者は机上で解析ができるようになり、FEM は一気に実用的になりました。現在は 3D CAD と融合した CAE の開発が進み、設計者が 3Dモデルを設計し、自ら解析結果を表示して評価まで容易に行うことができます。設計者向け CAE は、今後もさらに発展するでしょう。
有限要素法を用いた解析の進め方は、要素分割と条件設定、解析、評価の 3 ステップに分けられます(図 2)。前後の工程は、3D CAD システムと連携します。
部品形状は、最近は 3D CAD で作成することが多くなりました。3DCAD と有限要素解析が一体化したソフトの開発も進んでおり、昔と比べて効率が上がっています。部品形状が決まると、要素分割が自動で行われ、解析のための条件(拘束条件や荷重条件、温度条件など)を設定します。そして、解析を行い、解析結果が製品として妥当であるか評価します。解析結果は、設計へフィードバックされ、より高性能・高品質になるように設計が変更されます。
2. 要素と節点
有限要素解析で用いる要素の頂点を節点といい、要素辺上に設ける点を中間節点といいます。中間節点を設けることで形状を正確に表現することができ、要素内の変位の次数も 2 次になるので、解析の精度が上がります。一方、解析にかかる時間は増えます。なお、中間節点のない要素を 1 次要素、中間節点が 1 つある要素を 2 次要素といいます(図 3)。中間節点が 2 個以上の要素は、最近はほとんど用いられません。
要素には、形状の違いにより、バー要素、シェル要素、ソリッド要素の3 種類があります(図 4)。解析対象の構造に適した要素を選択することが重要です。
バー要素はその名の通り、棒状の要素です。曲げモーメント伝達の有無により、トラス要素とはり要素があります。棒やはりなど、棒状の部材や骨組み構造の解析に適した要素です。バー要素を用いる際は、断面性能(断面積や断面 2 次モーメント)の設定が必要です。
シェル要素は平面形状の要素です。プロパティとして板厚を設定することで、部材の板厚分の剛性を持ちます。三角形もしくは四角形の形状をしていて、板状の部材の解析に適しています。シェル要素では、解析領域の中立面を分割して解析します。中立面とは、ある部材が曲げられた時に、縮んだ領域と伸びた領域の境界に存在する、伸縮が起こっていない面のことです。多少の厚みがあるものをシェル要素にして解析する場合には、この中立面を抽出して利用します。シェル要素のメリットは、立体形状のソリッド要素と比べて節点数が少ないため、解析時間を大きく短縮できる点です。デメリットは、3D CAD データを使用する場合、中立面のデータを新しく作らなければならない点です。一般的な 3DCAD のデータは部材表面を表しているため、中立面のデータはないことが多いのです。
ソリッド要素は、立体的な形状の要素です。四面体、五面体、六面体などの形状をしていて、厚みのある部材の解析に適しています。一般的には、四面体と六面体の要素で分割することが多く、五面体のみで解析を行うことはあまりありません。ソリッド要素のメリットは、シェル要素、バー要素と比べて製品形状を正確に表現できるため、高精度な解析が行えます。一方、節点数が多くなるため、解析時間は長くなります。
要素分割をする際、解析精度を高めるための 3 つのチェック項目を紹介します。1 つ目は部材の形状を正確に近似できているか、2 つ目は要素の形状が崩れず正三角形や正方形に近い形になっているか、3 つ目は要素の密度が高いかです。複雑な形状を分割するほど、この 3 つを保ちにくくなります。
3. 仮想仕事の原理
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 CAEとは?
- 第2回 有限要素法とは
- 第3回 有限要素法の収束性と誤差
- 第4回 有限要素法と他数値解法との比較
- 第5回 CAE解析の種類
- 第6回 有限要素法のテクニック