前回は、ろう材の種類とぬれの原理を解説しました。ろう付けでは、母材とろう材の原子同士が、金属結合することによって強固な接合が生まれます。今回はこの仕組みを理解するための土台として、金属材料の特徴や構成、合金、また金属材料の中でも特に使用頻度の高いステンレス鋼について学んでいきましょう。
第3回「ろう付けと冶金」を解説していきます。
1. 金属材料の特徴
世の中にはたくさんの工業材料があり、形態も固相、液相、気相などさまざまです。表1 は、金属・セラミックス・ガラスなど、固相状態で使用する主な工業材料の特徴を、まとめたものです。
他の工業材料と比較した場合、金属材料には多くの特徴があります。熱伝導性・電気伝導性の高さ、外力に対して割れずに変形する材料の粘り強さ、比較的高強度で破壊直前に塑性変形すること、添加元素やミクロ組織制御により材料特性を設計できることなどが挙げられます。これらを生かせば、日常検査で破損の予兆を検出し、破損前の部品交換が可能なため、製造の安全管理や製品の長寿命化にも貢献できます。材料の表面を処理しやすい点も、金属材料の利点です。最近は、生体材料としても注目されています。
一方、金属以外の材料が優れた特性を持つこともあります。セラミックス材料は高硬度や高耐熱性を示し、生体材料にも用いられます。高分子材料や複合材料は軽量であり、炭素材料は軽量高強度材料です。木材は、圧縮荷重に強い耐力を発揮します。
2. 合金の結晶構造
金属材料を工業材料として利用する場合、純金属が用いられる例は少なく、通常は合金を使用します。合金とは、2 種類以上の金属元素を混ぜ合わせた金属材料です。混合比率(一般的には濃度、冶金学では組成と呼ぶ)が諸特性に強く影響を及ぼします。例えば、ゴールドのアクセサリーの多くは、18K(純金は24K)の合金で作製されています。純金属が比較的軟らかく、傷つきやすい性質を持つので、強度を増すためです。合金は無数に存在し、現在も新しい合金が開発され続けています。
金属材料は、規則正しく配列した原子で構成されています。原子直径は1nm 以下なので、直接観察することはできません。ところが、規則正しく配列した原子は、結晶を構成します。結晶は1μm から1mm 程度のサイズであり、光学顕微鏡で1,000 倍程度に拡大すれば、観察も可能です。このように結晶サイズ、形、色などを観察できる状態を、金属材料のミクロ組織と呼びます。ミクロ組織は、金属材料の性質に強く影響を及ぼします。金属材料を理解するには、まずミクロ組織を観察し、規則性などを理解することが必要です。金属材料の結晶は、原子構造が面心立方、体心立方、六方最密などの規則で配列しています(図1)。
3. 組織と状態図
4. ステンレス鋼
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ろう付けとは
- 第2回 ろう材の種類とぬれ
- 第3回 ろう付けと冶金
- 第4回 フラックスと雰囲気の役割
- 第5回 加熱源の種類
- 第6回 ろう付けの継手設計
- 第7回 ろう付けの方法とろう付け部の欠陥