前回は、ろう付けの接合に使用する加熱源の種類について説明しました。ろう付けは接合技術です。そのため、接合部形状(継手形状)が接合体全体の性質に強く影響を及ぼします。そこで、今回はろう付けの継手設計の基礎を解説します。
第6回「ろう付けの継手設計」を解説していきます。
第6回もくじ
1. 一般的な継手形状
ろう付けの継手を作るには、綿密な継手設計が必要です。図1にろう付け継手に適用される代表的な継手形状を示しました。これは試験片を真横から見た場合を図示しており、ろう付け時は、図中下方に重力が作用しています。ろう付けでは、接合する部品間に一定の隙間を設定し、溶融ろう材を浸透させる必要があります。また、加熱前に部品を固定する必要もあります。
溶接は、突合せ継手を使用する場合が多いです。一定の隙間を設定し、継手を固定することが難しいので、突合せ継手を用いたろう付けは、あまり多く用いられていません。シングルラップ継手は、ろう付けに多く用いられています。特徴は、部品(材料)の加工が比較的容易であり、ろう材を設置する場所が確保できるということです。スカーフ継手は、シングルラップ継手と比較して、ろう付け面積が広く設定できるという利点があります。
図2は、ろう付け後の典型的なシングルラップろう付け継手の断面図です。この継手の特徴は、重ね代Aを変えられる点です。重ね代を長くすると接合面積(A×W)が増加するため、接合強度は増加します。適切な重ね代を選択すれば、母材を破断せずにろう付けができます。
突合せ継手の場合、接合強度を増加させるためには、母材(部品)断面積の増加や材質変更など大きな変更が必要です。これに対し、ろう付けに用いられるシングルラップ継手の場合、重ね代を大きくすることで接合強度が増加します。一方、重ね代を増やした場合、ろう付け面積(図2、A×W)の増加に伴い、溶融ろう材が浸透する面積が増加します。不適切な条件でろう付けした場合、ろう付け接合部中にボイドなどの接合欠陥が発生する可能性が高くなります。
2. ろう付けの隙間
ろう付け継手を設計し、隙間を設定する場合、昇温時の熱膨張などが起こるため、適切な温度管理が重要です。特に異種金属材料のろう付けでは、両者の熱膨張係数差に十分注意しなければなりません。継手設計の指針として、アメリカ溶接学会(American Welding Society:AWS)が発行するBrazing Handbook 第4版には、表1に示す通り、ろう材の種類ごとに推奨隙間が示されています。
一方、隙間はろう付け体接合強度に強く影響を及ぼします。隙間の減少に伴い接合強度は増加し、ピーク強度を示した後、減少します(図3)。この変化は、溶融ろう材の浸透現象と、ろう付け界面に発生する拘束力によって起こります。
ろう付け体界面垂直方向(図4、y軸方向)に応力σを負荷した場合、応力負荷前の状態から応力負荷時の状態へ変形します。一般的にろう材は母材(部品)より軟らかいので、拡大図に示されたように応力が働きます。この時、ろう材、母材界面が強固に接合されていると、ろう材の横方向(図4、x軸方向)の変形が母材により拘束されるので、ろう材に外側に引っ張られるような力σrが作用し、ろう付け体接合強度が強くなります。このσrは母材幅Dに対し、ろう材厚さtが小さいほど増加するので、隙間の減少に伴い、接合体強度が上昇します。また、隙間が極端に小さくなると溶融ろう材の浸透が困難となり、十分な浸透が得られないので、接合体強度は減少します。
3. ろう付け体の強度評価方法
4. ろう付け体の固定
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ろう付けとは
- 第2回 ろう材の種類とぬれ
- 第3回 ろう付けと冶金
- 第4回 フラックスと雰囲気の役割
- 第5回 加熱源の種類
- 第6回 ろう付けの継手設計
- 第7回 ろう付けの方法とろう付け部の欠陥