ろう付けでは、溶融ろう材の固相母材(金属材料)に対するぬれが重要です。一方、固相母材の表面には、ろう材のぬれを阻害する酸化皮膜などが存在しています。良好なろう付けを行うためには、この酸化皮膜を除去する必要があります。そこで今回は、母材の酸化皮膜を除去する2 つの方法、フラックスと雰囲気について解説します。
第4回「フラックスと雰囲気の役割」を解説していきます。
1. 固相母材表面の酸化皮膜
固相母材(金属材料)の表面には、さまざまな酸化皮膜が形成されます。ろう付けでは、母材金属の酸化皮膜が溶融ろう材のぬれを阻害するため、取り除く必要があります。
酸化皮膜は、研削など機械的な方法で取り除くことも可能です。しかし清浄な金属表面が酸素を含む大気中に露出すると、すぐに酸化皮膜が形成されてしまいます。もし研削を真空中で行ったとしても、残留ガスに酸素が含まれるので、酸素分圧を十分に低減しない限り、酸化皮膜が形成されます。また、複雑な形状を接合するろう付けの場合、全ての継手で固相母材表面に形成された酸化皮膜を機械的に取り除くことは困難です。従って、機械的に取り除く方法は、ろう付けには不適切です。ろう付けにおける母材表面の酸化皮膜の除去には、フラックスと呼ばれる化学薬品で除去する方法と、ろう付け雰囲気を制御することによって分解除去する方法があります(表1)。それぞれを詳しく解説していきます。
2. フラックスによる酸化皮膜の除去
酸素が含まれる大気中でろう付け体を加熱する場合、接合部の母材表面が酸化し、溶融ろう材のぬれが阻害されます。従って、酸化皮膜除去のためにフラックスが必要となります。フラックスとは、活性温度まで熱することで、金属表面に形成された酸化皮膜を分解除去する化学薬品です。金属表面の酸化皮膜の種類は多様のため、フラックスもさまざまな種類があります(表2)。
フラックスは固体のため、粉末や小片に加工後、水分やアルコールと混合し、ペースト状などにします。ろう付け時、ろう材と同様に接合部へ塗布して使用します。フラックスを塗布する時には、溶融ろう材がぬれ広がる金属表面の酸化皮膜を除去する必要があるので、溶融ろう材がぬれ広がる面を予測する必要があります。
表2 に示す通り、フラックスには性能を発揮する活性温度域があります。
この温度域を、ろう材の溶融温度よりわずかに低い温度に設定することが理想的です。これらの温度に隔たりがあると、せっかくフラックスで酸化皮膜を除去しても、その後の温度上昇に伴い、母材が再酸化する場合があるからです。また、強固な酸化皮膜を分解除去するフラックスは、塩化物、フッ化物、ホウ化物、ホウ酸塩などを主成分とした、比較的強力な化学薬品です。フラックスが接合部に残留した場合、その部分から腐食する可能性があります。このため、ろう付け後に残留したフラックスは、十分に洗浄する必要があります。洗浄に使用した廃液の処理も、適切に実施しましょう。
なお、FB1-A はトーチ・炉内・ディップろう付けに、FB1-D はトーチ・炉内ろう付けに使用します。FB2-A は、一部のマグネシウム合金のディップろう付けに使用します。FB3-A、FB3-C のペースト形態のものは、一般用としてろう付け可能な鉄、非鉄金属およびその合金など、幅広い母材に使用できます。FB3-A の粉末・液体・スラリー形態のものは、鋼、銅、ニッケルおよびその合金に使用できます。FB3-C のスラリー形態は、耐熱性および長時間加熱性が優れています。トーチ・炉内・高周波ろう付けで使用するFB3-D は、活性温度がニッケル合金・超硬合金より高温になっています。トーチろう付け専用のFB3-K は、フラックス中を通過した燃焼ガスにて供給します。FB4-Aは、アルミニウムを含む合金など、強固な酸化物を有する金属類のろう付けに適しています。
フラックスによる酸化皮膜の除去には、適切なフラックスの選定(母材の素材との相性、活性温度など)と、適切な塗布が重要です。正しい知識を身に付け、フラックスを使いこなせるようになりましょう。
3. 雰囲気による酸化皮膜の除去
4. フラックス・雰囲気と加熱源の関係
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ろう付けとは
- 第2回 ろう材の種類とぬれ
- 第3回 ろう付けと冶金
- 第4回 フラックスと雰囲気の役割
- 第5回 加熱源の種類
- 第6回 ろう付けの継手設計
- 第7回 ろう付けの方法とろう付け部の欠陥